御所の鬼(2)
歩みを進める三人の前に山は深くなり、山塞のような物が見えた。
あれかな・・・紅蓮坊は巴と小太郎に顎をしゃくった。
巴の目には、草葺きの屋根だけが見え、小太郎には廻りの草に遮られ、それは見えなかった。
「七、八人は居るかも知れんな。」
「見てくる。」
紅蓮坊の声に小太郎がすぐに反応し、紅蓮坊はそれに頷いた。
「子供だけをやるのか。」
巴は色めき立った。
「あいつなら大丈夫だ。」
それに紅蓮坊は自信と信頼を見せて応えた。
半刻ほどで小太郎は二人の元に帰ってきた
「十六人居た。」
「そんなにか・・・」
巴は休慶を除き、十五人もの人を斬る事をためらった。
「門の中に家は三つあった。
一番手前に七人、次の家に五人、一番奥の家にも四人居た。」
「お前はどうやって・・・」
巴は感心したように、呆れたように、小太郎を見た。
「木から木・・そこから屋根に飛び移る。
それだけだ。」
「音がして、見つかるだろう。」
「音は立てない。
それにおれは小さいから、暗くなってきたこの時間、見られても猿にしか見えないよ。」
小太郎は得意げに鼻の下を擦った。
「それにしても・・・」
「待てくれよ・・まだ話しは終わっちゃいない。」
小太郎は巴の言葉を止めた。
「前の家の七人は確かに人に見えた。だけど次の家の者達は頭に瘤があった。」
「人鬼だな。」
紅蓮坊が横から口を挟んだ。
「そうそう、男達の外にそれぞれの家に女達もいた。
何が面白いのか、男達は女達を半裸にして踊らせていたよ。」
その言葉に紅蓮坊が卑猥な想像をしていないかと、巴は大男を見たが、彼は唾棄でもしたそうな表情をしていた。
「女達は近くの村から掠われてきたのだろう。
すぐにでも助けねば。」
「まだ一番奥の家の話しが済んでないよ。」
立ち上がる紅蓮坊を小太郎が制止した。
「どんな様子だった。」
「女が三人いた・・どれも綺麗だが怖そうな女だった。」
「怖そう・・」
「ああ、おれには人間には見えなかった。」
「坊主はどうしていた。」
「一番綺麗で、一番怖そうな女と一緒に居た。外の女は・・」
「もうよい。」
紅蓮坊は嫌悪の表情を浮かべた。
「ところで、坊主の頭はどうしていた。」
「綺麗に剃ってあった。」
「まだ完全には堕ちては居ないようだな。」
「それより女の事だが・・・」
巴が言葉を被せた。
「女の人鬼と、外の二人は緑鬼かも知れないな。
鬼八匹に、荒くれ者が七人か・・・
当初考えていたより、難しいかも知れません。」
「おれが一人で乗り込み騒ぎを起こす。そうすれば、次の家から何匹かの鬼が駆けつけてくるはずだ。その隙にお前達二人はその家に忍び込め。」
「あんた独りで大丈夫か。」
「なあに、人共はこの金棒で軽く殴って脅かせば済む。
鬼共が来たと言っても二、三匹だろう・・こいつ等は倒す。」
「金棒で殴るって・・優しく撫でる程度にしなさいよ。あんたの力じゃあ、それでも大怪我を負わせるよ。」
巴は笑いながら小太郎と共に紅蓮坊と別れた。




