新たな仲間達(5)
「おい紅蓮・・」
「巴の家からの還り道、兵衛は傍らの大男に声を掛けた。
何だ・・と、紅蓮坊は小太郎を背にしたまま兵衛を見た。
「やっぱり家が居るなぁ・・・」
兵衛は思案深げに紅蓮坊を見た。
「信用するしかないようだな。」
何を・・紅蓮坊は兵衛の言葉の真意を測りかねた。
「源三殿と信繁殿の事だ。」
それでも紅蓮坊は首を捻った。
「あの二人を信用し、私の家を貸す。」
私の家・・紅蓮坊は素っ頓狂な声を上げた。
「拙者は代々続く家を持っている。」
「借家じゃなかったのか。」
「今住んでいるのは官舎だ。
だが、山科に実家がある。」
山科か・・・紅蓮坊が呟く。
「山を越えなければならん。
長く帰っていないから家の修理も必要だろう。
だが、広い庭がある。
雑草は生え放題だろうが、小さな道場を建てる広さはある。
それに部屋も多く、学問所にもなる。
そこに道場は自力で建てさせ、賃料も貰い、
槇野繁信殿をそこに住まわせる。」
「だが京の街中からは遠いぞ。」
「だからこそ好都合なのだ・・賃料まで取れば、我等との関係性が薄れて見える。
そこに遼河とかえでを預け、その費用は遼河に賄わせる。」
「子供だけにか。」
「大きな声はよせ・・雉の目と耳が怖い。」
兵衛は小さな声で言って、目配せをした。
うん・・紅蓮坊はそれに納得の顔で素直に頷いた。
「だが遼河は御庭廻組の一員、その仕事はどうする。」
「幸い我等は諸国廻りを任されている。
一番隊とは違って、常時花の御所に詰めている必要はない。
呼ばれた時にだけ出仕する。
そう考えれば、少々遠くに住んでいても問題はない。」
うん、うんと紅蓮坊が頷く。
「それに御坊の事だが・・・」
俺の事か・・・紅蓮坊は初めて御坊などと呼ばれて戸惑った。
「そうだ。
お主、今どこに住んでいる。」
「壬生だ。
壬生の破れ寺。」
「そこは引き払って貰う。」
「どう言うことだ。」
「山科でかえでの身に何かがあった時、壬生では余りに遠い。
そこでだ山科の近くに越して欲しい。」
だが・・・紅蓮坊が言い淀む。
「山中に寺がある。
そこには老住職夫婦と一人の寺男が住んでいる。
その寺が屈強な者を欲してはいるが、いかんせん財力がなく、しかも誰彼となく雇えば、その者の素性も定かではなくなる。
そこに御坊が行けば、喜んで迎えられると思うが・・どうだ。」
「お前の言っている事は解った。
だが何故、屈強な者などを求めている。」
「近くに清閑寺という豪壮な寺がある。
その山寺は当初そこの分院として造られたが、清閑寺の財宝を狙う人、それに鬼が近くに住み着き、誰もそこの住職とはなりたがらなかった。そこで今の住職が無理矢理送り込まれた。
山賊・・それに鬼・・御坊には打って付けだろう。
そこに小太郎と二人で住む。」
どうだというように兵衛は紅蓮坊を見、
ああ・・と紅蓮坊は頷いた。
「巴は・・」
その後にすぐに言った。
「巴殿は今のままで宜しいでしょう。
鬼を伐つ者が農家の屋根裏とは想像もつかず、鬼の目を欺けます。」
その言葉にも紅蓮坊は納得した。
「最後にもう一つ、大事な話があります。」
最後に・・・紅蓮坊はその言葉にひっかっかった。
「幸い拙者はあなた方より遥かに、晴海様の信頼を得ております。
これ以降は私はあなた方とは距離を置こうと思っております。」
「どう言うことだ・・俺達より、金をくれる晴海の方が良くなったか。」
紅蓮坊の眼が気色立った。
「そうではありません。
あなた方は二人は、晴海様の意に反する事が多く、晴海様はそれを苦々しく思っています。
そんな中、私があなた方の一派と見られれば、得られる情報も得られなくなります。
ですからあなた方とは距離を置きます。
ですが、勿論、考えはあなた方と同じ・・鬼に対する絶大な力を持つかえでを守り、いつかは来る鬼との決戦に備えます。
私には今闘っている鬼達が最終の敵だとは思えません・・必ず、もっと大きな力を持つ鬼が居ると思っています。
それがなんだかは解りませんが・・・」
「解った・・だが連絡はどうやって取る。」
「私の実家に遼河とかえでを住まわせれば、実家に帰るという口実を得ます。
それに、槇野繁信殿の元には烏を使う小平次がいます。あの童は源三殿とも連絡が取れると・・・
それにあなたの下にはあなたの相棒、小太郎・・それを連絡役に使いましょう。」
紅蓮坊は大きく頷いた。
「多分これからは頻繁にはあなたがとは会えなくなります。
鬼を伐つ者を助ける力を持つかえでを・・・頼みます。」
兵衛は深々と頭を下げた。




