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新たな仲間達(3)

 その夜、遼河とかえでも含め、兵衛達五人は飯屋に集まっていた。

 「巴・・お前どう思う、あの男の事・・・」

 「年の頃は四十程度かな・・田舎から来た割りには言葉も・・・」

 「そんな事を訊いているんじゃねぇ。

 信用できるかどうかって事だ。」

 「そんな事は解らん。

 兵衛殿、頃合いを見て源三様に尋ねてみてくれ。」

 兵衛は酒の入った杯を口に運びながら頷いた。

 「その源三というのもよく解らん。

 何しろかえでを預けるんだ。

 素性の知れない者に・・・」

 「じゃあどうしろと言うんだ。

 今のままだと私と遼河が呼ばれた時、かえでは農家の屋根裏で独りになる。

 それを誰が守るのだ。」

 「それは・・・

 だがな。」

 「まあまあ・・その辺で・・・」

 兵衛が口を挟んだ。

 「とにかく、拙者が源三殿に質してみる。

 それまでは今まで通り・・・」

 「探したぞ、くそ坊主。」

 少年の声がその会話に割り込み、紅蓮坊が振り向いた。

 かえではそれまで動かし続けていた箸を止めた。

 「おお、やっと来たか小僧。

 何処で油を売っていた。」

 「油を売っていただぁ・・自分だけさっさと行きやがって、荷物は俺に持たせてな・・その上油を売って・・・」

 「誰だこの小童(こわつぱ)は・・」

 巴が二人の会話に割って入った。

 「小太郎・・俺の従者だ。」

 「従者だと・・おれはお前に仕えたつもりはない。」

 「では何と言えばいいんだ。」

 「うーん・・・」

 そこで小太郎は答えに詰まった。

 「それで、何しに来たんだい。」

 巴が優しく尋ねた。

 「何しにも何も、こいつは俺に殆どの荷物を持たせやがって、自分だけとっとと行きやがった。

 仕方がないから牛を雇いここまで荷物を届けに来たんだ。」

 「待て待て・・飯を食わせてやるから、そういきり立つな。」

 紅蓮坊はそう言って膳をもう一人前頼んだ。

 「ところで、その荷物というのは・・・」

 巴が声を掛ける。

 「外に置いてある。」

 小太郎は出された膳に貪り着きながら言った。

 「すぐに取ってこい。

 盗まれるぞ。」

 紅蓮坊は眼を(いか)らせて見せた。

 ちぇっ・・・舌打ちを漏らして、小太郎は飯屋の外に駆け出した。

 「随分・・威勢の良い小僧だが・・・」

 「奥羽からここに来る間に拾った。

 相模の風間村(かざまむら)の出だそうだ。

 風間(かさま)の小太郎・・俺はそう呼んでいる。」

 「カザマじゃねぇ。」

 小太郎は大荷物を引き摺りながら店の中に入ってきた。

 「フウマだ。」

 「読み方を変えたのか。」

 「そうだ。その方が強そうだろう。」

 小太郎は重そうな風呂敷包みを引き摺りながら、息を切らしている。

 「それだけの荷物を持たせて・・よく・・・」

 巴は呆れたようにその大荷物を見た。

 それは・・・兵衛は大風呂敷から飛び出た刀の(つか)に目を留めた。

 「俺の太刀だ。」

 言いながら紅蓮坊はその太刀を荷物の塊から引き抜いた。

 長い・・誰もが度肝を抜かれた。

 「刃渡り四尺三寸、全長五尺三寸七分ある。」

 「あんた、それをどう使うつもりだ。」

 「腰に佩く。」

 「そんなに長いものをですか。」

 紅蓮坊は大太刀の太刀紐を器用に使い、その大太刀を腰に吊り下げ、自慢げに胸を反らした。。

 「それにこんな大荷物を童に持たせて・・」

 巴は再び呆れた顔をした。

 「それにしても、この荷物を盗みもせず、よく京まで持ってきたものだ。

 売れば結構な金になったろうに・・・」

 兵衛も別の意味で呆れた顔をした。

 「盗む・・売る・・・

 これはみんなこのくそ坊主のものだ。それを何故盗らなければならないんだ。」

 「全部じゃないだろう。お前の物もある。」

 「だがお前が呉れた物だ。お前が赦さなければ売れない。」

 「あなた、どうやってここまで来たの。」

 「あんまり重いから、牛を借りたとさっき言ったろう。」

 「そうじゃなくて、ここまで来る費用とか・・」

 「金は渡していた。」

 横から紅蓮坊が言う。

 「それもお前の金だろう。おれが使って良いものじゃないだろう。」

 「使ってよかったんだぞ。」

 「それならそうと先に言っておけ。

 おれは・・・」

 小太郎は僅かに涙ぐんだ。

 どうした・・その背に紅蓮坊は大きな手を回した。

 それに小太郎はわっと泣き出した。

 よし、よし・・・かえでがその頭を優しく撫でた。

 「約束だからお前の荷物をここまで持って来た。

 お前も約束を守れよ。」

 しゃくり上げ、途切れ途切れながら小太郎は言った。

 「ああ、やる。」

 紅蓮坊は壁に立てかけてあった法輪の着いた六尺杖を手に取り小太郎に渡した。

 お、重い・・小太郎はそれを取り落としそうになった。

 「まだお前には使いこなせないだろう。」

 紅蓮坊は諭すように言う。

 「俺がこれを楽に使っているから、お前も使えると思ったんだろうが、そうは甘くないぞ。」

 「使えるようにする・

 その時は・・・」

 「その時・・それはもうお前のものだ。

 それを使って訓練しろ。

 但し、簡単には抜くなよ。」

 うん・・と、鼻を擦って小太郎は大きく頷いた。


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