表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/106

夜叉の棲む山(3)

 遼河、遼河・・・

 遼河は翌朝早くに自分の名を呼ぶ声に起こされた。

 ぼやっと眼を開ける前に巴の顔があった。

 「用を足しにいく・・付き合ってくれ。」

 用を足しにいく・・・かえでの股の間はおむつを替えてやる時に見た事がある・・だが、大人の女は・・・

 遼河は股間が熱くなっていくのを感じた。

 木陰からしゃーっという小水の音が聞こえる。

 遼河の股間に血が(たぎ)った。

 だがその後に臭ってきた異臭にそれも萎えた。

 木々の向こうでは紅蓮坊が用を足しているのか、派手な音が聞こえている。

 あんたは・・衣服を直した巴が遼河に声を掛けた。

 「おれはかえでの面倒を見てからするよ。」

 遼河は、はにかみながら答えた。

 「穴を掘ってからするんだよ。

 後は土を被せるのよ。」

 さすがに恥ずかしかったのか、巴はツンとしてその場を去った。


 全員が晴海の前に揃った。

 「さて行くぞ。」

 かえでの足下には置いてきたはずの子犬、げんたが纏わり付いていた。

 その場から千ヶ峰を目指した。

 何をして居る・・・またも晴海の苛立たしげな声が聞こえた。

 すぐに参ります・・・巴がその声に応える。

 「その女童・・連れて行く気か。」

 「こんな所に置いていけるか。」

 すぐに紅蓮坊が反発した。

 「疲れたら今までどおり俺が負ぶう・・それで良いだろう。」

 紅蓮坊は大きな声でそう言った。


 野営地から一刻ほど山を登った。

 紅蓮坊は最初からかえでを背にしていた。

 そのかえでの眼が僅かに崩れた。

 鬼だ・・・その目を見た巴が言った。

 「山姥(やまんば)の土地に入った。」

 源三が警戒を促した。

 地面がもこっと盛り上がる。

 木の裏に影が見える。

 「餓鬼と邪鬼・・数は多いがたいしたものではない。」

 先頭を行く源三が小太刀を抜き、他の者もそれに倣い各々が自身の武器に手を掛けた。

 「雉、頼んだぞ。」

 紅蓮坊は背中のかえでを地に降ろし、晴海を護る雉の近くに置いた。

 「かえではりょうがに・・・」

 「遼河なら大丈夫だ。

 ここにいろ。」

 紅蓮坊も前方に駆けていった。

 「兵衛、こっちに来い。」

 晴海は身の安全だけを心配した。

 「心配要らないよ。

 かえでを護って。」

 巴は道着の懐に手を差し込んだ。


 ぐっぐっぐっ、喰われに来たか・・・老婆の(しやが)れた声が木々に谺する。

 「どこにいる山姥。」

 源三が大声を上げる。

 「さーてね、あんた等の相手はこいつ等で充分だよ。」

 赤鬼と青鬼が三匹ずつ現れた。

 「餓鬼と邪鬼は私が相手をする。」

 巴は懐から呪符を取り出し宙に投げた。

 呪符が人の姿に変わっていく。

 「陰陽(おんみよう)の術・・・」

 それを目にして源三が驚きの声を上げる。

 「すぐに行く、それまで頼む。」

 六匹の鬼を目の前にして、巴はあらぬ方に駆けた。

 紅蓮坊はそれを歯牙にも掛けず、六尺杖は地に突き立て、鬼から奪った金棒を頭上でぐるんぐるんと回した。

 「遼河、やるぞ。」

 そして、少年に声を掛けた。

 「首を斬るか、頭を潰すか・・・」

 それは聞いた・・源三の声を途中で止め、紅蓮坊は早くも赤鬼の頭を叩き割っていた。

 遼河の動きは素速かった。

 青鬼の攻撃を尽く躱し、木刀でその足を打ち、跪いた鬼の頭を木刀で潰した。

 「強いですなあ。」

 源三はもう一本の小太刀を抜いた。

 その身体に青鬼が刺股を走らせる。

 源三はその柄を交叉させた小太刀で受け、そのまま刃を走らせて青鬼の腕を斬り、そのまま喚く首を斬り落とした。


 兵衛は晴海の元に行くと、

 「薬師如来様の力を借りたら駄目だよ。」

 そっとかえでに耳打ちをし、辺りにいる邪鬼を斬り斃していった。

 雉はいつものように晴海だけを護っている。

 かえでを護っているのは子犬のげんただけだった。なぜかそのげんたの吠え声に邪鬼が怖じ気づき、かえでに近づくものはなかった。

 兵衛はそれに気付き、少し離れた所まで邪鬼を斬りに動いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ