境源三成益(さかいげんぞうなります)(3)
多加村の粗末な寺院に晴海達は着いた。
これか・・・晴海は溜息を漏らした。
後ほど参ります・・そう声を掛けて源三は巴達と共にその場を後にした。
「あの童ですか・・・」
大きな農家の納屋に入るとすぐに、源三は子犬と遊ぶかえでに眼をやった。
その言葉に巴は警戒の色を表した。
「あなた方が命を懸けて護ろうという娘は・・・」
それには関わらず源三は続ける。
「鬼の力を削ぐというのは。」
兵衛も己も刀に手を掛け、紅蓮坊は座ったままどんと金棒を地に突いた。
「ご心配なく・・私はあの子をどうこうしようとは思ってはいない。」
源三の言葉は晴海に対した時よりもずっと柔らかだった。
「ただ育てて欲しい。」
源三は庭先で子犬と戯れるかえでと遼河に優しい眼をやった。
「多分、あの子達が鬼からこの世を護るよになろう。
あの子等が力をつけるまで・・」
巴達の警戒とは裏腹に、源三は頭を下げ、そして続ける。
「私の弟子に槇野信繁という者が居ます。 私の小太刀の技に精通し、太刀も使えます。
それより何より頭が切れる・・私の知識全てを憶え、それに精通しています。
その者を晴海和尚の目に掛からぬようにして、後日、京に送ります。
その者に武芸塾や学問所を開かせ・・・」
源三はぽんと手を打った。
その音に誘われ、一人の男の子がその場に現れた。
「小平次と言います。
この子も一緒につけます故、京にて宜しくお願いいたします。」
呼ばれた童も一緒に頭を下げた。
「歳は九つ、あれに居られる遼河殿、かえで殿の良き友ともなりましょう。」
そう言って源三は小平次と言う少年に顎をしゃくり、彼は庭に飛び出した。
「晴海和尚の下には私が参ります。
委細は今夜として・・・」
源三は静かにその場を立った。




