千ヶ峰の鬼(6)
× × × ×
京に戻った巴はすぐに自身の住み処に帰った。
そこには遼河がかえでと二人分の着物を持って待っていた。
出来たんだね・・巴はにこっと笑った。
「かえでのが紅いのと薄桃色の着物。
おれのが・・これです。」
遼河は着物を拡げて見せた。
着てみなさい・・巴は二人に促した。
かえでは薄桃色の着物を選んだ。
「それは夏物よ・・紅いのを着なさい。」
巴はかえでの着物を着せ替えた。
対する遼河のは筒袴もその上の道着、そして羽織も真っ黒。
「なぜ、おれのはこの色なんだ。」
遼河は二着とも黒い自分の着物を見て言った。
「あなたは影よ・・影からかえでを護る。
だから、黒なのよ。」
遼河は巴の声に納得した。
「それに対してかえでは光り・・だから・・・」
巴の声をかき消すようにかえでがはしゃぎまわり、くるっと回って見せた。
「かえではいつも胸元に啓寿尼様に頂いた小狐丸を持っておくのよ。」
それにかえでは肯いた。
「後は頭巾と鎧ね
一緒に行きましょう。」
巴はまた粗末な衣服に着替えた二人を引き連れて京の街に出た。
まず訪れたのは呉服屋・・二人の頭巾を見せて貰った。
それは注文通りであった
かえでのは頭からすっぽりと被る事が出来、取り外せる眼より下を覆う布がついていた。
「何故このような・・・」
そこまで言って呉服屋はかえでの頬に気付いた。
「もう一つは。」
巴はかまわず催促した。
そちらの童の物ですね・・・呉服屋の主人は揉み手をした。
遼河の頭巾・・と言うより覆面は、これも真っ黒であった。
その覆面を被ると遼河の全身は真っ黒になる。
最後に巴は鎧屋に寄った。
「出来ましたか。」
巴はその店の主人に屈託無く笑いかけた。
「その少年の分は出来ました・・それに別注文の分も・・・
ですがこんな物誰が着るのです。」
「私の知り合いだよ。
で、重さは。」
巴は主人が差し出した物を抱え上げた。
「少し重いんじゃないかい・・二貫と頼んでいたはずだが。」
「どれだけ細い鎖を繋いでもそれより軽い物ではご希望に応えられませんでした。
それでお許しを・・・」
主人は丁寧に頭を下げた。
まあ仕方ないか・・巴は鎧屋の主人に金を払い、ここまで牽いてきた荷車にそれを乗せた。
間借りをしている農家には雉が待っていた。
何事・・と、巴は警戒した。
「晴海様がお呼びです。」
雉は本題だけを告げ、巴は後ろの二人を見た。
「二人も連れて行くぞ。」
「結構です・・晴海様には暫く時間が掛かると言っておきました。」
「行き先は。」
「播磨国、多加村・・・その前に加古川の宿で落ち合う予定です。」
「牛の足です・・かなり掛かります。」
「晴海様にはその旨伝えておきます。
それでは、明日早朝にお迎えに参ります。」




