千ヶ峰の鬼(5)
酒の席、相変わらず晴海は雉を相手に剣士の品定めをしていた。
「安藤宗重はどうじゃ。」
「取るに足りません。
あくまで田舎剣客・・田舎では強いかも知れませんが・・・」
「お前とならどうだ。」
それには雉は笑って答えない。それで晴海は安藤宗重の腕を悟った。
京見廻組に志願した奥村左内、国立京ノ介にも話しが及んだ。
奥村左内の強さには雉の折紙がつき、京ノ介に関しては底が知れぬ・・と、雉は言った。
他の者達にも話しは及び、それぞれを雉が論評した。
「お前が敵わぬと言った者達・・もし儂が首を打てと言った際にはどうする。」
「寝首を掻きます。」
「出来るのか。」
「中御門経衡に関しては隙が多く、寝首を掻く事は易く思います。他の者も同じ様なもの・・但し鬼木元治、並木掃部ノ兵衛については容易くはいかないでしょう。」
「その時にはどうする。」
「忍び寄り、まず毒を喰らわせます。
その後に・・・」
晴海はにやりと笑う雉の顔にぶるっと怖気を振るい、話題を変えた。
「ところで他にも腕の立つ兵法者はいるのか。」
雉はその問いに頷いた。
何処に居る・・・晴海が畳み掛ける。
あちこちに・・・雉は言葉を濁した。
「まあ良い・・これから向かう播磨にも居るか。」
「います・・但し、今は鬼退治の事で頭がいっぱいでしょう。」
「鬼退治・・・」
「播磨の山奥・・丹波、但馬、との三国境辺りに黄鬼が居ります。
それを如何に退治するかと・・・」
「行ってみようぞ。」
「ですが、黄鬼というのは妖術を使うと言われており、その上、近くには山姥も住んでいるとか。」
妖術、山姥・・・晴海は考え込んだ。
そうだ・・・晴海は手を打った。
「巴を呼べ。
あの者なら妖術に対抗できる。
巴を呼ぶのじゃ。」
「暫く時間が掛かりますぞ。」
「構わん。
お前自ら行くのじゃ。」
「それでは貴方様の護衛が・・・」
「その間はあの二人を呼ぶ。
先に彼奴等に声を掛けろ。
その後に京に向かえ。」
兵衛と紅蓮坊が晴海の部屋にやって来た。
「雉が居ない間、儂を護れ。
その間の当座の資金じゃ。」
晴海は小さな金袋を二人に投げた。
その時には既に、雉は京に向かって走っていた。




