千ヶ峰の鬼(3)
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その頃、巴は京の街中を奔走していた。
まず、三人で住む家・・それから遼河とかえでの着物・・・着物についてはすぐに手筈が済んだ。
遼河には黒の筒袴と道着それに羽織、かえでには着物を二着、注文した。
かえでは木綿ではあるが新しい反物にきゃっきゃと喜んだ。
それに比し、遼河は、
こんなにして貰って宜しいのでしょうか・・と恐縮した。
まだまだだよ・・・巴は言い、二人を連れて鎧屋に入った。
「この子に合う革鎧を造ってくれ。」
巴は遼河の背を押した。
鎧屋はすぐに採寸を始めた。
「武士の鎧は要らぬ。
この子の身体に合う革服を造ってくれ。」
鎧屋は首を傾げた。
「革服の下には木綿の道服を着せる。
その上に着る革服だ。
袖は要らぬ。胴と脚を護る。
よく鞣した革で身体に合った胴丸を造ってくれ・・出来れば動きを阻害せぬようにしてくれれば有り難い。」
巴の注文は細に入り微に入っていた。
それに・・・巴はもう一つ注文していた。
「暫く日時を・・・」
鎧屋は困惑の表情と共に深く頭を下げた。
そこを出て、巴は二人を違う呉服屋に連れて行った。
何を・・・遼河は不思議に思った。
「頭巾か覆面はありますか。
男の子用と女の子用です。」
何故そんなものが・・・巴の注文に遼河は首を傾げた。
「帰るよ。」
注文を済ませた巴は、すぐにそれまで泊まっていた宿屋に向かった。
宿屋に着くと巴は荷物を纏めだした。
「どこにいくの。」
かえでが尋ねた。
「何時までもここに居るわけにもいかない。
不自由だが私の間借り先に移る。」
荷物を纏め終えた巴は宿の主人に金を払い、京の郊外へと足を向けた。
「おねえちゃん・・それおもくない。」
二本の薙刀を肩に担ぎ足取りが重い巴にかえでが声を掛けた。
「重いよ・・二本も担いでいるからね。」
巴はかえでに優しく笑いかけた。
「そうじゃないの・・・おにのものだからおもいの・・・」
鬼の物だから・・・巴は自分の薙刀を、荷物を持って歩く遼河に渡し、緑鬼から奪った薙刀一本だけを肩に掛けた。
さっきより重い・・何故・・・
「おにさんのちからよ。
わたしがなくしてあげる。」
そう言うとかえでは懐から金の薬師如来像を取り出し、巴に近づいた。
かえでがその像で薙刀を撫でると一気にその重さが解消された。
これは・・・巴は絶句した。
「あのおおきなおじちゃんのもいっしょよ。」
かえではそう続けた。
急ぐよ・・・巴は遼河から自分の薙刀と幾ばくかの荷物を受け取ると足を速めた。
それから半刻足らずで大きな農家の前に着いた。
「ここが私が住んでいる所だよ。
ここの屋根裏に私が借りている部屋がある。
遼河、あなたはここに残って・・
二日後にあなたとかえでの着物が出来上がるからそれを受け取りに行くのよ。
それ以外は余り遠出はしない事・・いいわね。」
巴はすぐに自分の馬にかえでを乗せ上げた。
「五日もあれば戻ります。
鎧屋と頭巾はそれから行きます。
何か変があれば、屋根を切り開いて逃げなさい。」
言い捨てて巴は馬を走らせた。




