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剣豪公家(5)

 現れたのは少年とまだ幼い少女・・・二人はきょときょとと周りの大人を見渡した。

 「またこんな農民ずれか・・・」

 教貫は晴海を厳しい目で見た。

 「拙僧ではない。」

 晴海は言い訳じみた眼を教貫に向けた。

 「遼河の腕は確かだよ。」

 巴が確たる声を上げ、紅蓮坊も大きく頷いた。

 それに続き、戦いの場に居合わせた京見廻組の者達も次々に声を上げた。

 「まあ良かろう。

 だがその女童は何だ。」

 巴は答えに詰まった。

 「遼河の知る辺だ。

 叔母さんの子だと言っていたな・・・」

 紅蓮坊は遼河を見た。

 「本当の叔母さんではないけど・・・」

 遼河は小さな声を上げた。

 「だが家族同然に育った。

 それにお前以外、この子には身寄りはない・・そうだったよな。」

 紅蓮坊は優しく尋ね、それに遼河は頷いた。

 「と言うことです。

 この童の面倒は巴と二人で見ます。

 ですが、遼河は我等の仲間にして頂きたい。」

 だが・・・今度は晴海が声を上げた。

 「だが・・・・」

 紅蓮坊はその声に目を向けた。

 「その女童が居ては戦いに支障があるはず。」

 いいえ・・・紅蓮坊に替わり、今度は巴が言葉を発した。

 「ここまでもかえでは私達と一緒に居ました。

 戦えないとは言え、戦いの場は経験しています。

 そして、この子を守りながら戦う術は遼河を含め私達三人は知っています。

 何の支障にもなりません。」

 巴はきっぱりと言った。

 「そのくらいで宜しいではおじゃらぬかの・・・」

 横から経衡が声を掛けた。

 「力のある者は召し抱える。

 それでどうじゃの。

 それにこの女童・・・」

 経衡は桟敷から下りてきた。

 そしてそのままかえでの元に向かった。

 「可愛い顔をしている・・・頬の傷は珠に瑕という所でおじゃるかな。」

 経衡はかえでの顎に指を掛けクンとその顔を持ち上げた。

 遼河は経衡の手を(はた)き、その前に立ち塞がった。

 ほーっほほほほほ・・・経衡は大きな笑い声を上げた。

 「元気の良い男の(おのこ)ではある。」

 経衡はその脚を桟敷に上した。

 「先ほども言ったが、力のある者は召し抱える。

 そして、その親族も養えるように俸給を与える。」

 教貫はそう宣言した。

 その言葉に遼河はきょとんとしていた。

 「あんたに金が与えられるって事だよ。」

 その耳に巴が諭すように言った。

 「おれに金を・・・」

 遼河が驚いて声を洩らし、それに巴が頷いた。

 「但し、その額は他の隊員の五分の一とする。

 まだ子供だからな。」

 五分の一・・・巴はその声に反発の顔色を示したが声には出せなかった。

 自分達が金十その五分の一となると年間に金二・・それではかえでと二人生活していくのがやっと・・・

 巴は紅蓮坊に目配せをした。

 紅蓮坊はそれに気付き頷いた。

 金一で良い・・・巴はひそと言った。

 「二でも良いぞ。」

 紅蓮坊はすぐに自分の思いを口にした。

 「後に困る。」

 巴はそれを否定した。

 「彼奴は・・・」

 紅蓮坊は近くにいる兵衛に眼をやった。

 その眼に応え、兵衛もすぐに首を縦に振った。

 雉は・・・

 しかし彼は紅蓮坊の眼には気付かなかった。

 巴は上座に座る晴海に眼をやった。

 その反応は晴海も承知していたはず・・・しかし晴海は巴の目からその眼を逸らした。

 やっぱりな・・・巴は紅蓮坊の肘を(つつ)いた。

 「その童の名は何という。」

 巴達の反応には気付かず、教貫は声を上げた。

 「渡辺遼河でござる。」

 すぐに晴海が答えた。

 「その方の配下とせよ。」

 それでこの話しにはけりがつき、それからも教貫は順次報告を聞いた。


 教貫は御庭廻隊の活躍はその眼でも見ていた。

 近衛隊の国立清右衛門はこの場に駆けつけていたし、近衛隊では残った宝蔵院の坊胤嗣や桂金吾の活躍を斉藤蔵人に聞いた。

 「そろそろ麻呂の話しでも良いかの。」

 中御門経衡(なかみかどつねひら)が声を掛けた。

 正三位中納言、中御門明豊の息子となれば、その位は自身より遥かに上。教貫はその声に従うしかなかった。

 「室町館は護っても、内裏を護る者が居ない。

 麻呂がその隊を造ろう・・その手伝いをして貰う。

 兵は僧兵団が居る。今のところ十四人・・それを二つに分ける。

 一隊は麻呂が見る。

 もう一隊は奥村左内・・・お前が見よ。」

 これが条件か、それであの剣が我が物になるのであれば・・・左内は納得した。

 「名は御庭廻組で宜しかろう。

 その方がそなたの力が及ぶ。

 但し、実権は麻呂が握らせて貰う。

 そして俸給は幕府から・・・

 まあ、御庭廻組、護皇(ごこう)隊ではどうかの。」

 経衡は大きな笑い声を上げた。

 教貫はそれに肯くしかなかった。

 「そうと決まれば将軍に会いに行こうではおじゃらぬか。

 ここの沙汰はまた後日として。」

 経衡は先にたって渡り廊下を歩き始めた。

 一度解散・・・そう声を残して教貫はその後を追い、晴海もそれに従った。


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