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襲撃(6)

    ×  ×  ×  ×


 巴達の前には次から次へと鬼達が集まっていた・・それは巴達と言うより、かえで達と言うべきであった。

 鬼達は言い合わせたようにかえでを狙った。

 その前に立ち塞がったのが巴、紅蓮坊、遼河・・それに京見廻組の隊員だった。

 それまで鬼に苦戦していた京見廻組の隊員達は易々と鬼を斃していった。

 鬼の技量は稚拙、だが、彼等は呪詛に護られ、一般の者の剣を受け付けない。

 だがここではそれが違った。易々と鬼が斬れる。

 京見廻隊の面々は狂喜した。それまでは鬼に対し技量では優るものの、その身体に対し剣が役に立たなかった。しかしここでは・・・

 先の鬼退治で辛酸をなめた大井彦正はここに居た。

 飯盛山の鬼退治で逃げ回ったと断じられた彦正は、御庭廻組を解任され京見廻隊に配属されていた。

 自分の剣が通じる・・彦正は有頂天になった。それは他の隊員も同じだった。

 かえでの懐から金色の光りが溢れ出ている。その光りの範囲内では誰の剣も鬼を斬ることが出来た。しかし、死力を尽くして戦う者達にその実感はない。唯々鬼を倒せることに狂喜した。

 鬼が退く・・それを隊員が追いかける・・そこで聞こえたのは京見廻組の隊員の声ばかりだった。

 馬鹿な・・・さっきまで鬼を斃していた自身の剣が急に通用しなくなった。

 彦正は他の隊員を捨て、後ろに下がった。

 するとまた鬼を斃せた。

 「どう言うことだ。」

 紅蓮坊は巴の顔を見た。

 「光が見える。」

 巴がかえでを振り向き、紅蓮坊に尋ねた。

 ああ・・・と紅蓮坊が頷く。

 「あの中で戦えば光りの加護がある。だから遼河も青鬼を木刀で倒した。」

 「待てよ・・だとすると・・・・」

 紅蓮坊が鬼の金棒で鬼を斃しながらいった。

 「金色(こんじき)の藥師像か・・・」

 紅蓮坊は大きく頷き、

 それを亡くした啓寿尼は・・・と唸った。

 紅蓮・・巴が叫んだ。

 ここを頼む・・・紅蓮坊は大きな声を上げ、そこらに駆け回っている馬に飛び乗った。

 紅蓮坊は自身の巨体を支えて走る馬にしゃにむに鞭打った。


 啓寿庵を前に馬の脚が折れた。

 紅蓮坊はそれに脚を取られることもなく地上に降り立った。

 啓寿尼様・・・紅蓮坊は大声を上げた。

 それに応える声はなかった。

 啓寿庵はぼろぼろに崩れ去っている。

 紅蓮坊はその中を歩き回った。

 血痕・・・紅蓮坊は紅い痕跡に眼をやった。

 彼はその跡を辿った。

 点々と続くその痕跡の向こうに一人の女僧が倒れていた。

 紅蓮坊はその身体を掻き抱いた。

 その身体は冷たい。

 紅蓮坊は辺りに眼をやった。

 血文字・・・

 その文字は“又”・・と書かれていた。


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