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襲撃(3)

 そんな騒動の中に巴達は京に帰り着いた。

 かえでを見た鬼達の目の色が変わり、その眼が彼女に集中し、何やら言葉を交わした。

 「かえでを護るよ。」

 巴が紅蓮坊に促した。

 遼河も含めて三人で三角形を組み、その真ん中にかえでを置いた。

 「遼河は二本の剣で戦うんだよ・・相手が多いからね。」

 群がってくる餓鬼や子鬼の数は多い。

 巴は辺りを見廻した。

 自分達以外に人影はない。

 「仕方がない・・紅蓮、やるよ。」

 巴の薙刀が炎を放ち、紅蓮坊は首からさげた大鉄数珠を手に取った。

 餓鬼や小鬼共は巴の刃の炎に灼かれ、紅蓮坊が造った土の亀裂に呑み込まれていった。

 「回るよ。」

 巴の指示で三人はかえでを中心に円を描いた。

 巴と紅蓮坊は一気に数匹の餓鬼や子鬼を斃していく。特に紅蓮坊の力は凄まじく、時には十数匹を土の下に呑み込んだ。その二人が逃したものを遼河が二本の剣で斬り裂く。

 おおい、大丈夫か・・・遠くから人の声が聞こえる。

 「巴、()めるぞ。」

 割れ鐘のような声を発し、紅蓮坊は数珠を首に戻した。

 駆けつけてきたのは京見廻組の面々・・突然鬼達が自分達の前を去ったため、それを追いかけてきていた。

 松明は・・・その内の一人が言った。

 薄暗くなり始めていた中で巴の薙刀が放つ炎が目についたのだろう。

 「鬼に奪われた。」

 巴はとっさに言いつくろった。

 「餓鬼と小鬼をやってくれ。」

 間を開けずに紅蓮坊が言う。

 「邪鬼と赤鬼は私達が斃します。」

 巴も声を合わせた。

 「我等の中にも邪鬼を斃せる者も居る。」

 餓鬼と子鬼を屠りながら、隊員の一人が叫ぶ。

 その男が邪鬼の長い角に貫かれた。

 その邪鬼を後ろの男が斬る。

 「纏まって戦え・・それに何人かでこの子を護ってくれ。」

 「遼河はかえでから離れるんじゃないよ。」

 紅蓮坊と巴はそれぞれ声を上げ、鬼の中に斬り込んでいった。

 ぐしゃっと嫌な音がして、京見廻組の隊員一人が鬼の金棒に叩き潰された。

 その金棒が紅蓮坊にも伸びてきた。

 赤鬼か・・・紅蓮坊は怒鳴り、自分の六尺棒を地面に突き立て赤鬼が振る金棒を握った。

 「あんた力比べでもする気かい。」

 巴は呆れたように言った。

 そのつもりだ・・・紅蓮坊はうおーっと雄叫びを上げ、金棒の端を握る赤鬼を空中に抱え上げ、そのまま地面に叩きつけた。

 どうだとばかりにふんぞり返る紅蓮坊に緑鬼の薙刀が迫った。

 それを横から巴の薙刀が払った。

 「浮かれるのもいい加減にしなさいよ。」

 巴は緑鬼を相手しながら叫んだ。

 「この金棒が欲しかったんだよ。」

 紅蓮坊は奪った金棒で地面に横たわる赤鬼を叩き潰した。

 「お前もその鬼の薙刀を奪ったが良いぞ。

 何しろお前の薙刀も代えがきかん。」

 紅蓮坊は笑い声を上げ、鬼の金棒で他の鬼達の相手をしだした。

 その言葉に巴も納得を示し、緑鬼の相手をした。

 遼河は紅蓮坊の声にかえでを見た。

 かえでは剣と一緒に木刀を持っていた。

 ご神木の木刀であれば・・・遼河は考え、二本の剣を鞘に収め、かえでが捧げ持つ木刀を手にした。

 京見廻組の一人が胴を刺股にからめ取られ中空高く投げ上げられ、落ちた所に刺股の石突きが突き落とされた。

 その鬼の全身は青い。

 青鬼・・・遼河は緊張と共に身構えた。

 青鬼は憤怒の形相に口だけが笑っている。

 「りょうがならだいじょうぶ。」

 後ろから聞こえるかえでの声に勇気を振り起こした。

 木刀を構える。

 果たしてこれで・・・遼河は足下から震えが上ってくるのを感じた。

 「だいじょうぶよ。」

 瞬時、後ろを振り向いた遼河の眼にかえでの笑顔が映った。

 青鬼が持つ刺股が遼河の胴を狙う。

 刺股の内側には鉄の棘が付いている。それで胴を絡め取られればそれだけで傷を負う。しかもそのすぐ根元には鉄が巻かれそこにも金属の棘がある。そこで殴られただけでも深手を負うはずだ。

 間合いは鬼の得物の方が長い。

 遼河は草鞋(わらじ)の上の指を使い、じりじりと間合いを詰めた。

 青鬼はそれを待っては呉れず、刺股を伸ばしてきた。

 遼河はそれを躱し、あるいは木刀で受け流した。

 その間にまた間合いが開く。

 どうすれば・・遼河は焦った。

 「りょうが、あのときとおなじよ。」

 後ろからかえでの声が聞こえる。

 あの時と・・

 遼河は大きく左に飛んだ。

 それを刺股が追いかける。

 遅い・・遼河はそう思った。

 地面についた左足を軸に右に飛ぶ。

 その目の前に青鬼の左胴が伸びきっていた。

 渾身の力でそこに木刀を叩きつける。

 青鬼が悶絶し膝をつく。

 その頭上に飛び上がったままの勢いで遼河の木刀が振り落とされた。

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