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鬼猫又

 飯盛山での鬼退治が始まる前、巴達は木造村に入っていた。

 「渡部の猫がまた騒いでいまっせ。」

 通りすがりの見窄らしい農民が小声で言った。

 巴は振り向き、その農民の後を追おうとしたが、もうその姿はなかった。

 雉の手の者か・・・紅蓮坊が小声で言った。

 だろうね・・・巴はそうとだけ答えた。

 「だがどうする・・ここと渡部。行ったり来たりになるぞ。」

 「あんた一人で渡部に行ってくれ。こっちは私と遼河で何とかする。」

 よし・・紅蓮坊はそこから渡部村に引き返した。

 「今日は泣いていないね。」

 怖がらせぬよう巴は遼河に手をひかれたかえでの頭を撫でた。

 その後に、

 「あれ・・・」

 かえでが何人かの女の集まりを指さした。

 「ねこちゃん。」

 「解るのか。」

 巴がそっと訊いた。

 うん・・と、かえでは小さく頷いた。

 「でもあれはふつうのねこちゃん。

 だまされているの。」

 「尾は二つには分かれていないのか。」

 それにもかえでは頷いた。

 (欺されている・・つまり操られている。)

 巴はそう考えた。

 「かえで、尾っぽが二つの猫はどこにいる。」

 今度は遼河が尋ねた。

 かえでは五カ所を指を差した。

 「でも動いてるよ。

 人だけどほんとうは猫ちゃんなの。」

 それを聞いて巴は懐から呪符を取り出した。

 「そんなものいらないよ。

 わたしがだしてあげる。」

 「出せるのか・・」

 巴が驚きの目を向けた。

 「ねこちゃん、ねこちゃんってよんだら、でてくるから。」

 かえでは自分から進んで一人の女の前に立ち、「ねこちゃん」と呼んだ。

 するとその女の中から、猫又がはじき出された。

 逃げようとする猫又を、巴の薙刀が横に払った。

 それから次々とかえでが呼び出す猫又を巴と遼河が斬り伏せた。

 「炎はでないか・・・」

 「いまはいらないから。」

 巴はかえでを振り向いた。

 「ひがなくても、わるいねこちゃんだったらたおせるから。」

 「あれもお前の力か。」

 「ううん、みんなのちから・・わたしはおしえただけ。」

 「遼河・・この子は・・・」

 「木部村にいた叔母さんの子供だ。

 赤子の時に叔父さんが行方知れずとになって、家を頼ってきた。

 それだけだ。」

 「なにか特殊な家系とかは。」

 「知らない・・でも・・・」

 「でも・・」

 「言いたくない。」

 それからは巴が何を訊いても、遼河は口を開かなかった。

 「木部村か・・・何かあるのかも知れん。」

 巴は立ち上がった。

 「ここにいたがいいよ。

 おっきいおじさん・・かえってくるよ。」

 かえでがそれを止めた。

 その言葉通り、一刻ほどで紅蓮坊が戻ってきた。

 「あっちはただの猫だ。

 あれなら村人だけでも大丈夫だ。

 急いで戻ってきた。」

 巴は不思議そうにかえでを見た。

 「何かあったのか。」

 紅蓮坊が尋ねる。

 「もう、木部村に行っていいかい。」

 巴はそれには答えず、かえでに訊いた。

 「いいよ・・・でも・・・」

 「どうしたんだい。」

 「こわい・・あそこには、おにがいるの。」

 「じゃあ、遼河とここで待っている・・・」

 「こわいけど・・いく。」

 かえでは何時ものように遼河の剣を抱きしめたまま立ち上がった。


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