飯盛山の鬼退治(5)
御庭廻組一番隊の詰め所には、褒美の酒肴が運び込まれ、車座になって鬼退治の話しに興じていた。唯一人、鬼木元治だけはその席から遠ざかってはいたが・・・
「鬼木、その方もこちらに来ないか。」
村田善六が呼びかける。
「私はこちらで結構。」
元治は一人手酌で酒を飲み、その返事は素っ気なかった。
褒美の刀を見せてくれよ・・大井彦正が赤ら顔でからむように言う。
「下賜の刀・・そうそう人前に見せる物ではない。」
元治は備前長船の一刀を抱え込むようにして、酒を飲み続けている。
「多寡が青鬼一匹、それしきの手柄でつけあがるなよ。」
酔いが回った彦正の声が荒くなる。
「赤鬼に最初に剣をつけたのは俺だ。
それがあればこそ・・・」
「そして弾き飛ばされたってか。」
菊池主水の介が横から痛い所を突く。
「そして最初に逃げたってか。」
相良市之丞の声もそれに続く。
「足をやられた・・仕方がないだろう。」
「どっちの足だ。」
善六が尋ねた。
「左だ。」
「立ってみろ。」
その声は鋭く、彦正は仕方なくその場に立ち上がった。
善六はその右足を軽く払おうとした。
それを躱し、彦正は左足一本で立った。
「本当に痛めたのか。」
善六が猜疑の目で見る。
「・・・・」
彦正は答えきれない。
「席を外す。」
善六はすっくと立ち上がり詰め所を出て行った。




