飯盛山の鬼退治(4)
晴海と教貫は相前後して義政の二間続きの書院に入った。義政は奥の部屋に座っている。
「仔細はどうであった。」
「先程お聞き及びのごとく、青鬼を討ち取った者は、紛れもなく鬼木正治。
彼の者は、単独で鬼の巣窟に入り、青鬼を討ち取った由にございます。」
まず晴海が口火を切った。
「俗に言う悪鬼と言うものはいなかったようですが邪鬼を率いた赤鬼が出たそうです。」
負けじと教貫が聞き取った状況を話す。
「ほう、その鬼というのは強いのか。」
鬼に対する知識のない教貫はそこで口を閉じらざるを得なかった。
「鬼と申しますのは・・」
晴海が得意げに話し出す。
「一番小さなものを餓鬼と申します。これは人間でいえば十歳未満の子供と同じ位の身体しか持ちませぬ。
餓鬼とは元々仏道における餓鬼道に住まう・・・」
「仏道の講釈など聞いておらん。」
義政は晴海の話しを止めた。しめたと教貫は思ったが、彼には鬼に対する知識は全くない。しかし、聞き取った事実を披露する。
「最初に現れたのがその餓鬼だそうです。
次が小鬼・・人間の子供程の背丈があったそうです。」
「子供・・・晴海は先程餓鬼が十歳未満の子供と言い、お前もまた小鬼を人の子と同じ程と言う。
どちらが本当じゃ。」
この質問に教貫は黙った。
「餓鬼は大きくとも三尺三寸程度の体躯で痩せさらばえ腹だけがぽっこりと飛び出しております。
小鬼は逆にふっくらと肥え、四尺程の体躯を持っております。」
「角はあるのか。」
「両者とも角と言えるようなものはございません。
餓鬼には全く角はなく、小鬼は頭頂部が三カ所程がたがたと隆起しているだけでございます。」
「それで鬼と言えるのか。」
「紛れもなく鬼でございます。
餓鬼は常に腹を空かし、人を囓ります。
ですが、それを吐き出し、喰った物が血肉になることはございません。
故にいつも腹を空かしております。
方や、小鬼は仏道の天罰を受け・・・」
「また仏道か・・もう良い。
兵部ノ丞それからどうなった。」
それまで脇に置かれていた教貫はここぞとばかりに話し始めた。
「餓鬼、小鬼は何とか斃せるものの、次に現れた邪鬼には、京見廻組の者達は殆どが苦戦したと聞きました。
これを相手に死人、怪我人が多数出たそうでございます。」
「晴海、邪鬼とはどんなものだ。」
義政は和尚を見た。
「邪鬼と申しますのは人と同じ位の身体を持ち、額から鋭い一本角を生やしておりまする。
身体は痩せさらばえ・・まあ、餓鬼が大きくなったという所でしょうか。
仏・・・」
ここで晴海は話を止めた。
「もう良い・・お前は下がれ。
後の話は兵部ノ丞に聞く。」
その後、教貫は面白可笑しく、聞き取った鬼退治の話を披露した。
その話は夜遅くまで続き、教貫は酒と膳部の饗応までを賜った。
「お前の話では、安藤宗重を除き、青鬼、赤鬼を斬ったのは全て晴海の推挙した者のようじゃな。
あの坊主も、あれで一端の力は持つようじゃ。
今後、諸国を行脚させ、鬼を伐つ者を集めさせよ。」
義政の言葉で幕引きとなり、教貫は平伏した。




