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腕比べ(5)

    ×  ×  ×  ×


 御庭廻組、二番隊ではそのような争いは起きていなかった。

 巴は静かに旅の道を歩き、紅蓮坊は珍しげに辺りを見廻し、晴海和尚の側には捨て二郎がいた。

 「捨て二郎・・」

 晴海は隣を歩く農民風の男に声を掛けた。

 「その名はお止めください。」

 捨て二郎は我が名を呼ばれたことに異を唱えた。

 「私は甲賀の庄出です。

 甲賀の庄は忍びの産地・・そこで私は(きじ)と呼ばれています。」

 捨て二郎は突然、ケーンと雉の声色をまねした。

 「これからは仲間内では“雉”と呼んでくだされ。」

 「本名は。」

 晴海が尋ねた。

 「本名・・・

 さて・・・」

 雉は首を捻った。

 「甲賀の庄では誰も本名を名乗りません。

 それは自身の姿を隠し、闇に紛れるため・・私も親から貰った名は忘れてしまいました。」

 雉は自嘲気味にそう言った。

 「もう宜しいのではございませんか。

 それ以上の詮索は無用かと。」

 並木掃部ノ兵衛義貞が横からその会話を止めた。

 「そう言う貴方は何と呼べばよいのですか。」

 巴が口を挟んだ。

 「兵衛で結構です。」

 「俺は紅蓮坊だ。」

 「そのままじゃない。」

 東北の修験僧紅蓮坊の声に、巴は溜息に近い声を漏らした。

 そういう一行は奈良、大和を目指していた。


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