腕比べ(2)
晴海和尚が書院に入って来た。
「おお・・和尚、待って居ったぞ。」
義政は彼にも上機嫌で声を掛けた。
「そちが組んだ御庭廻組・・余は満足して居る。」
和尚は頭を下げたが、彼はそれでも喜ばしい顔はせず、すっと教貫の顔を見た。
「そこで相談だが・・・」
と義政の声が続いた。
「ここに居る斉藤蔵人・・お主はこの者に鬼を伐つ力があると言った。」
その言葉に晴海は肯いた。
「そこで余は考えた。
余の身近で余を鬼から衛る隊を造る。
そこに己の配下、国立清右衛門を組み入れ、斉藤蔵人の配下とする。」
それは・・晴海は言いかけた。
「一番隊の中からは宝蔵院の坊と桂金吾を召し出す。
国立清右衛門であれば、この中に入っても気遅れすることなくやれるであろう。」
それは既に義政の中では決定事項であり、晴海も逆らえなかった。
晴海は落胆の色を隠せなかった。
隊を三つに分け、自身は将軍の側近くに座る・・そうすれば教貫の専横を抑えきれる・・・そう考えていた。
だが、それも儚いものとなった。
国立清右衛門、その一人を引き抜かれただけで彼の経略は瓦解した。
(おのれ、教貫・・)
城から下がりながら、晴海は唇を噛んだ。