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俺の人権は雫の物?らしい

気付くのが遅くて申し訳ありません。

修正しました。



「ううむ、何故だ」


 おはよう、今日の小野大志だ。

 今朝は五時に目覚めるという珍しい起床となっている。

 気分が良いので、このまま早めの独り登校をしてやろうかとベッドから起き上がろうとしたのだが、未だに俺はここから出られない。

 その理由こそ、むしろ俺が起きた理由でもある。

 手首にまとわり付く違和感…………。


「いつの間にこんな物が」


 俺の両手足に手枷が嵌められていた。

 鎖がベッドに繋がれていて、今も大の字で寝ている。

 この状態から動けないのでニ度寝、三度寝くらいはしてるのだが状況が変わることはない。

 そろそろトイレに行きたい。

 もうすぐ七時、雫が起こしに来る時間だが…………。


「おはよう大志」


 来た。

 扉を開けるや涼し気な顔で俺を見つめながら、ベッドのサイドテーブルへとトレイに載せた朝食を置く。

 え、何これ?


「雫、動けないんだけどコレ誰の仕業?」


「問題ある?」


「無いけど」


「なら大人しくしてて」


 雫は語らない。

 誰だ…………ベッドに俺を縛り付けたヤツは!?

 この家には雫か俺しか入れないハズなのだ。雫がこれを見ても動揺せず、あえてそのままにしているのは普段から言う事を聞かない俺への制裁の積もりで放置しているのだろう。

 マズイな。

 犯人と雫が同調してしまっている。


「雫、トイレ行きたい」


「分かった」


 雫が懐から鍵を取り出す。

 え、なんで??

 そのまま俺の手枷と足枷についた鍵穴にそれを挿し込むと、かちりと音が鳴る。

 なるほど――マスターキーとかいうやつだな?

 雫の事だから、あらゆる手枷足枷に通用する鍵を所持していてもおかしくない。いつでも救い出せるから落ち着き払った態度だったのだ。

 我が幼馴染ながら凄まじいぜ。


「ありがと雫!」


「早く済ませてくれば?」


 解き放たれた俺は即座にトイレに直行した。

 言う通り、急いで用を足して部屋へと戻る。


 雫がぽんぽんとベッドの上を叩くのでそこに戻ると、雫によって右手、左手、右足、左足の順に外されていた枷がまた嵌められた。

 ………………………………………??


「ほら、早く食べて」


「おう、分かった?」


 雫がスプーンで掬った朝食をあ~んしてくれる。

 俺はありがたく食べるのだが、イマイチ状況が解らない。

 ん?

 雫、なぜ俺はまた縛られているんだ?


「雫、俺は何で縛られてんだ?」


「私を怒らせたからじゃない?」


「雫を?」


 雫を怒らせたら何故縛られるのだろう。

 まさか、雫を怒らせた事でファンクラブの怒りを間接的に買ってしまい、夜の内に拘束されたのかもしれない。

 そして、鍵は彼女に委ねられた。

 我ながら名推理だな。


 しかし、雫が怒るって何だ?


 昨日はそんなにお馬鹿な事もしていない。

 何故だろうか、どうしてだろう。

 俺は昨日の記憶を思い返すことにした。






 夕方に雫が帰宅するまで俺はゲームに没頭していた。

 テストへの危機感が忘れられる気分転換になって丁度良かったからだ。


「大志、今日からコレ没収」


「おあ!?」


 ゲームの電源を切られて俺は悲鳴を上げた。

 まだセーブしてないのに!

 後少しでラスボスだったのに、また最初からやり直す事になってしまった。俺は一度もセーブせずにボスまで一気呵成?で挑むのが趣味なので、積み上げた努力か一気に消え去った気分だ。


 俺は思わず雫を睨む。

 すると雫が微笑んだので、取り敢えず許すことにした。


「ここからテスト期間まで詰めるから」


「毎度すまないな」


「そう思ってるなら、何かお返しして欲しいところだけど」


「え、報酬を求めるのか。雫も案外冷たいんだなゲプァッ!!?」


 何故か思い切り殴られた。


「お返しと言われても、雫は何が欲しいかわからないし」


 雫は意外とファッション好きなので、よく一人で買い物もいっている。

 俺が服をプレゼントするにしても、正直言ってファッションについては流行に乗れていない。因みに俺が服を購入する時は、何故か雫が同伴して何回も試着を重ねながら彼女に感想を求めて購入に至る。

 曰く『私が良しと言うまで買うな』。

 俺のファッションセンスが駄目とかで、雫の審美眼にいつも頼っている。

 独力じゃ、プレゼントは無理だ。


 ならば料理…………雫の方が上手いしな。

 ゲーム…………はそも興味が無いだろう。

 ううむ。


「雫は何が欲しいんだよ」


 もう思考がメンド臭いので直接聞いた。

 すると、雫は暫く考え込む。

 やはり、本人も報酬と言いながらそこまでの願望は無いらしい。


 少ししてから、雫は俺に体の正面を向けた。

 やや照れくさそうに、顔だけは背けつつ両腕を広げる。



「ハグ、して」



 少し小さな声で願いを口にする。

 ふむ、動物園のことでハグの味をしめたらしい。ハグの味って何だ、甘いのか?

 俺は要望に答えるべく、雫と抱擁を交わす。

 柔らかい。

 いい匂い。

 温かい。

 何か色んな物に包まれて脳内がプラムタルト崩壊してきた。あれ、何か違うような気がするが、そんな感じだ。

 ぐりぐりと、雫が俺の体に身を擦り寄せる。


「どう?」


「ん…………満足」


 ぱっと離れると、雫は無表情だ。

 そうか、勉強を教えるのにハグで返すのが礼儀か。

 そうなると……………。


「じゃあ、花ちゃんにもハグしないとな」


「は?」


「ん?ああ、雫が忙しいからいい機会だし花ちゃんにも勉強教えて貰うことにしたんだ。明日、ショッピングモールの地下のフードコートで一緒にやるつもりだぜ」


 それから雫が忙しいので、花ちゃんにも協力を要請している話をしたら、何故か勉強を教えてくれなかった。

 夜も口を利いてくれず、そのまま就寝となった。






 さて、ここまで思い返したが。


「ううむ、思い当たる節が無い」


 俺には全く非が無いし、雫が怒る理由もない。

 しかし、それにしたってこの拘束はあんまりじゃないか。

 これでは俺に人権が無い。


「雫、これって人権シンガイじゃねえの?」


「安心しなさい。アンタの人権は私が握ってるから」


「あ、そう」


 俺の人権は雫の物?らしい。

 ならば安心だ。


「今日は学校に行ったら直帰することを約束したら解放してあげる」


「花ちゃんとの約束は?」


「私のパンと花実さん、どちらを取る?」


「パン」


「私が帰ったら用意するから、約束して」


「了解!」


 直帰すればパンを作って貰えるってわけか、楽勝!

 花ちゃんには悪いがパンが優先だ!





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― 新着の感想 ―
[良い点] 誤爆されてますよ
[一言] 前回と同じです!!
[気になる点] なぜ同じ内容の話をあげたのですか?
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