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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編・中編集(ジャンルいろいろ)

捕らえた戦隊ヒロインを洗脳する計画

「改造企画」の参加作品です。


「いや……放して!」


 両手を鎖で縛られ壁に貼りつけにされた若い女性。

 ふんわりとした栗色の長い髪に、胸元がのぞいた白いワンピース。

 機動戦隊バトルレンジャーの尼崎隊員である。


 尼崎は現役の女子大学生で、学業に励みながら機動戦隊のピンクとして戦っている。不覚にも敵の罠に落ちた彼女はこうして悪の組織のアジトに囚われてしまったのである。


「くくく……気分はどうだ?」


 悪の組織の幹部、ソー・タラノーラン。

 たらこ色のボブショート。

 露出度の高いタイトな服装の妖艶な女。


 鞭をビシバシさせて(実際に叩くわけではない)尼崎の方へ近づいて行く。


「くっ……殺しなさい!」

「殊勝だな。

 だが、安心しろ。

 殺したりはしない。

 貴様を洗脳してレッドを倒す計画だ」


 ソーが指パッチンすると鎖が勝手に外れる。

 解放された尼崎は冷たい床に座り込み、ソーの顔を見上げる。


 無表情で見下ろすソーの冷たい顔が目に映った。


「そんな……私を洗脳⁉

 まさか、頭を電動のこぎりで開いて、

 脳にチップを埋め込む気じゃ……」

「そんな痛いことはしない」

「じゃぁドリルで穴をあけてナノマシンを……」

「それもしない」

「目や鼻から寄生虫を入れるつもり⁉」

「しない」

「脳みそを他人のものと交換とか⁉」

「発想がいちいち怖いな⁉」


 尼崎の言葉にドン引きするソー。


「いいか、よく聞け。

 洗脳と言っても別に何か変なことをするつもりはない。

 洗脳したという建前で、お前にレッドを倒してもらう」

「つまり、私の意思でレッドを?」

「そう言うことだ」


 ソーはにやりと口元を釣り上げる。


「ふんっ、そんなことするはずないでしょ」

「これを見ても同じことが言えるかな?」


 ソーは懐から取り出した数枚の写真を目の前に放った。


「これは……!」


 写真を見て驚愕する尼崎。

 そこにはレッドの中の人の工藤と、ブルーの枝村が映っていたのだ。

 二人は仲良さげに腕を組んで歩いている。


 レッドの工藤は尼崎と同い年。

 有名大学に通う彼は、運動系のサークルに所属。

 爽やかな汗が似合う好青年である。


 枝村は現役の女子高生。

 陸上部に所属する彼女はとても明るく、チームのムードメーカーである。


 他の写真には、カフェで仲良くお茶をする様子や、二人で一緒にボートに乗る姿が写されていた。誰がどう見ても仲の良いカップルである。


「おいおい、何を驚いている。

 貴様は二人が恋愛関係にあることを、

 すでに知っていたと思うのだがなぁ」

「しっ……知らないっ!」

「嘘をつくな、嘘を」


 そう言ってもう一枚写真を差し出すソー。


 そこに写っていたのは、サングラスをして頭にスカーフを巻き、変装して二人を監視する尼崎の姿だった。


「これは貴様だな?」

「ちっ……ちがっ……」

「ごまかしたって無駄だぞ。

 調べはついているんだ。

 正直に白状した方が身のためだ。

 貴様はこいつが好きだったんだろう?」


 そう言って工藤と枝村が写る写真をひらひらとさせるソー。

 尼崎は観念したように頷いた。


「くくく……素直な奴だ。

 私は貴様に取引を持ち掛けるつもりでここへ連れていたのだ」

「取引?」

「そうだ、洗脳されたふりをして、貴様の思い人を襲え。

 ただし……別に相手を傷つける必要はない。

 恋敵の目の前で思い人を奪ってやるのさ」

「そんなことをして……なんの意味が?」


 尼崎の疑問にソーは笑いながら答える。


「ククク、貴様らの協力体制が崩れれば、

 我々も動きやすくなる。

 今週、貴様を洗脳してもどうせ来週には解かれている。

 強い意志とかいうご都合展開でな」

「はぁ……」


 何を言っているのか意味が分からない。


「それで、やるのか? やらないのか?」

「少し考える時間を……」

「ダメだ、尺の都合で今すぐ返事が欲しい」

「そうですか、なら仕方がないですね。

 分かりました。やります」


 尺の都合と言っただけで素直に同意する尼崎。

 魔法の言葉である。


「よろしい、ならば改造だ。

 貴様を最高の姿にミラクルチェンジしてやろう」


 そう言ってソーは指パッチンをする。






 その後、なんやかんやあってレッドの工藤とブルーの枝村が捕らえられる。

 二人の元へ洗脳された(という建前)尼崎が現れた。


「尼崎……その格好は⁉」

「尼崎先輩⁉」


 尼崎の姿を目にして驚愕する二人。

 ただでさえぴちぴちの戦闘服を露出度高めにミラクルチェンジしたドスケベ仕様の姿。

 二人が驚くのも無理はない。


(ううっ……恥ずかしいよぉ)


 洗脳されている(建前)ので身体を隠すことはできない。

 尼崎は平静さを保つのに必死。


「ククク……尼崎は未知の技術で洗脳させてもらった!

 これから貴様にあんなことや、こんなことや、

 放送できそうもない恥ずかしいことを沢山してやる。

 覚悟しろ!

 クククククク! クークックック!」


 勝利を確信したソーは変な笑い声をあげる。


「さぁ、尼崎。

 貴様の思うがままに、やつを凌辱しろ!」

「……はい」


 ソーが命じると、尼崎はゆっくりと歩き始めた。

 そして……。


「えっ?」

「えっ?」

「えっ? わたし?」


 なぜか枝村の方へ歩いて行く尼崎。

 そして……。


「んむっ……! んんっ!」

 

 突然の口づけに目を見開く枝村。


 最初は顔を反らしたりして抵抗しようと試みる枝村だったが、次第に尼崎のことを受け入れ素直にキスに応じるようになった。


 工藤もソーもあっけに取られてその様子を見守る。


「せっ……先輩……私……」

「枝村さん……」


 唇を離して見つめ合う二人。



 がっちゃーん。



 なぜか鎖が解けて枝村が解放される。

 どうやら二人が愛し合う姿をもっと見たい戦闘員が、勝手に解放ボタンを押したらしい。


 拘束を解かれた枝村は自分から尼崎の首に手をまわして唇を重ねた。

 口づけを交わすうちに攻守が逆転。

 枝村の方が攻めに回る。


「先輩……先輩!

 私ずっと先輩のことが……」

「えっ……枝村さん……待って!」


 尼崎を壁に追い詰めてさらに口づけを迫る枝村。

 もはや彼女たちを止めることはできないだろう。


「……いい」


 工藤がつぶやいた。


「え? 何言ってんの?」

「俺、二人がずっとくっつけばいいのにって思ってたんだ。

 ずっと枝村から相談にのってたんだけど、

 まさか尼崎の方も枝村を好きだったなんて……」

「なっ……」


 どうやら工藤は枝村の恋愛相談に乗っていただけのようだ。



 どーん!



 ここで扉が開かれる。

 ブラックとグリーンの二人が助けに来たのだ。

 ちなみに二人とも男である。


「助けに来た……え?」

「うそ……まじ?」


 熱い口づけを交わす二人を見て、助けに来た二人も固まる。


「どういうことだ、説明してくれ!」

「じつはかくかくしかじか」

「「マジかよ⁉ 最高かよ⁉」」


 工藤の説明にすんなり納得する二人。

 そして……。


「実は俺……お前のことが好きだったんだよ!」

「実は俺も……」


 互いに告白し合うブラックとグリーン。

 二人はかぶっていたヘルメットを外して口づけを交わす。

 二人ともビックリするほどイケメンです。


「なぁ……まさかお前、私を好きとか言ったりしないだろうな?」


 不安そうにソーが工藤に尋ねる。


「まさか、俺もホモだし」

「よかった、実は私もレズなんだよね」


 口調が変わるソー。


「そうか……それとは別に告白したいことがある」

「なに?」

「俺、実は怪人にあこがれてたんだ」

「え? まじ⁉」

「ああ、気づいたら怪人じゃなくてヒーローになってた。

 笑えるだろ?」

「笑わないよ、私も本当はヒーローになりたかったんだ」

「本当かよ⁉」


 二人の間には不思議な友情が芽生えた。


「俺たち、友達になれそうだな」

「この後、飲みに行く?」

「いいな……理想の怪人観やヒーロー談義をしようぜ」

「朝まで退屈しなそうだね」


 そう言って見つめ合って笑う二人。


 こうして、ここにいる全員が見事に自分の好きな気持ちを告白し合い、全員が幸せになることができたのでした。

 めでたし、めでたし。






 あまりにカオスな展開に視聴者は絶句。

 放送は延期になり、次週は総集編が放送されました。


 自分の「好き」を爆発させてしまったがために番組の脚本担当を降ろされましたが、私は元気です。


 改造されたのは脚本でした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで気持ちよく脚本を変えられれば、脚本家としたら成功ですね。
[良い点] 「いいね」を思わず連打し、消してしまった。 [一言] 「いいね」入れなおしました。
[良い点] 探しましょう。これを許してくれるスポンサーを探すのです! そして、時間帯を深夜にして、放送版にはモザイク入れて、盤にしたらモザイクなしバージョンを売るのです! よし!売れる! [気になる…
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