クエスト
クエスト
「おはようございます。菅原班長」
ギルドに入ると凌士は真っ先に議論が白熱している酒場のいっかくに挨拶をした。
「凌士、俺のことは隊長と呼べっていつも言ってんだろ!」
「それで隊長、馬は決まったんですか?」
「まだだ、竹内のバカが無駄に粘りやがる」
「誰がバカだ!お前んとこに四頭もいらんだろうが。一頭で十分だ!」
「何だと!お前んとこに六頭もいらんだろが!三頭で十分だ!三頭で!」
「何だと!こっちは『ドロップ』じゃねえんだよ!『ドロップ』じゃ!」
「全部回収する必要がないだろうが、いるところだけ回収すればいいだろうが」
「勿体無いだろうが、『黒毛』だぞ」
「なん、だと!」
「前の班がダンジョン内で数頭確認している。こんなチャンス逃がせるかよ」
「だからって六頭は多すぎる、四頭だ」
「いいや。せめて五頭だ。こっちはCランクが2パーティー同行するからな」
「うううあああ、分かったよ。こっちが2でそっちが5でいいよ。くそが!」
そうこうしているうちに、話がまとまったらしい。話題に上がっていた馬は普通の乗馬用の馬ではなく、『ばんえい馬』の様な巨大な馬の事だ。ガソリン車等の車両が使えないので馬の頭数によって実入りが変わるので皆必死なのである。
『黒毛』についても説明しておくと、低級ダンジョンに現れる『大型の牛』のことであり、低層には稀にしか現れない最高級黒毛和牛の事だ。今回は幸運にも見つかったのが数頭まとまっていて『ドロップ』ダンジョンではなく、『実体』ダンジョン内だったからだ。
ダンジョンについて説明すると大きく分けて二種類ある。
モンスターを倒すと死体が消失し、アイテムが残る『ドロップ』ダンジョン
倒したモンスターが一定期間ダンジョンに吸収されない、または吸収しない『実体』ダンジョンがある。
今回『黒毛』が見つかったのが吸収されないダンジョン内。希少な『黒毛』が余すところなく入手出来るとあれば譲歩も否めないだろう。
「隊長、話終わりました?もうみんな集まってますよ」
「なに!もうそんな時間か」
ガタッ!と音を立てて立ち上がる菅原。慌てて時計を見ると集合時間をとうに過ぎていた。周りを見回すと竹内以外の隊長達の姿はなくクエストに出発したあとだった。菅原もすぐにパーティーメンバーに声をかけるとクエスト出発の準備を始めた。人員、装備品の確認に馬と荷馬車の確認。そして、パーティー内の班分け。今回のパーティー人数は30人、6人一組で5班。
低ランククエスト『収穫』は、主にG~Dランク冒険者の受ける比較的安全なクエストでありながら、都市の生命線の様なクエストだ。多人数で受けさせることで安全にダンジョンになれさせ、冒険者としての立ち回り方等の冒険者に必要な知識をつけさせる事が目的の様なクエストだ。そして引率役としてCランク以上の冒険者をつけることで高ランク冒険者には護衛任務の側面もある。
「菅原隊長、出発準備が整いました」
「おう、では第6小隊。管理ダンジョン7号に向かい出発!」