美女が野獣
天之御中主神:古事記で、最初に生まれたとされる。万物の根源を示すとされ、宇宙の起源とも伝えられる。
神格:不明(一説に最高神、始源神、究極神)
神社:天之御中主神社(妙見神社)、彌久賀神社、他50社ほどある。
私は、一先ず立ち上がりお尻についた枯れ葉を落とす。
「ここはどんな世界なの?天之が呼んだんだから詳しく教えてよ」
そう尋ねた時どこからから女性の叫び声が聞こえた。
キャー
なになにと、焦って天之の服を掴む。しかし、空を切る。
もしかしたら、魔獣とかが居て誰か襲われてるとかかな。
そしたらすぐ死ぬじゃん。一先ず天之に守ってもらお。
スカッ
そうだ。触れないんだった。こいつの存在から聞いておくべきだった。名前聞いて油断した。
此奴、よく見たら平安装束来てるぞ!神じゃないなら幽霊か!
「助ける?」
と上から声がかかるが異世界飛ばされてすぐにただの高校生み出来ることはない。
もしかしたら、転んだ時の叫び声だったりという可能性はある。
だけど、迂闊にうごいてバットエンドも嫌だ。ここは、天之に頼るしかない。
「正直、私は何もできない。天之は出来ることあるの?」
「神社でも言ったが性質変化しか今の余は出来ない」
ドヤ顔で天之は言う。
その顔にイラッとしたので股間に向けてパンチ食らわせるが空気を切る。
「喰らえ、チンパンチ。うわっ」
勢いつけたおかげで転んでしまった。
また忘れてた。くそぉ。
「性質変化って、例えば硬い土を脆くしたり泥にしたりするの?」
「いや、男にしたり女にしたり両性有具や無性にしたりだ」
「はぁ?」
男にしたり女にしたり…。
「それ性質変化じゃなくて性転換だよ。クソ変態やろう。それじゃ天之の性別って男じゃないの?」
「別に転換だけじゃないから。余に性別はない。作ろと思えば作れるが。なので野郎でもないぞ。」
そこ重要なんだ。確かに独神って性別なかったよな。
だからって異世界でそれが異能力ってなるかよ!ならねぇよ!チートとか出来ないのか。
転んだ姿勢からorzの姿勢になる。
くそ、何が異世界じゃ。これじゃ性転換手術担当の医者にしかなれない。
いや、セクシュアリティで悩んでいる人たちを助けられるのでは…
なんて考えてると
「一先ず行くぞ。一応、助けられる算段はないこともないが其方にかかっている。」
「はぁ、いや無理だから。私なにもできないよ。聞けよ。おい」
天之が走り出した。
ここで置いていかれても私は詰む。
心底嫌だと思いつつ私も走る。
「いいか。其方が左手に着けているものを使う。」
そう言われて左手首を見ると全く見覚えのない勾玉のついたブレスレットを身につけていた。
「それに向かい祈をささげろ。そしたら。余の出番だ」
「祈ってなに?」
「祈とは、余を呼び起こす言葉。思い出せ。其方は知っているはずだ?」
「わかんないよ。ぶっつけ本番とか一番やったらダメなことだよ。ってか急にとまらないで」
天之は人差し指を口元にあてシーとしてくる。ので私も足を止め黙る。すると、女性の声と複数の男性の声が聞こえてきた。
「ホムラ様!お逃げください。早く」
「すみません」
「おい、逃がさねぇよ」
私は、バクバクする心臓を抑え陰から見てみる。
そこには、何処かの民族衣装のような服を着た金髪の少女が剣を持った数人の人達に守られながら逃げようとしていたが山賊と思わしき5人組に囲まれてしまっていた。
「さぁ、お嬢ちゃん以外はさっさ終わらせるか」
山賊の中でも少し身綺麗な奴が手首に着いていた金の太いブレスレットを
空に投げる。そして、叫んだ。
「大地に這いずりし者が天を視る。灯せ、ククルカン」
すると、金の太いブレスレットから光が漏れて巨大な翼の生えた蛇が現れた。
「信仰者(ヴィリ―バー)か、皆のものお嬢様が逃げるまで何としても守れ」
「あぁ、私の命もここまでですのね」
女性や護衛がなにか言っているが私には聞こえなかった。
なんだあれ。やっぱ魔獣がいるんだ。バレれば私も死ぬ。
動け、私の足。
「紬。祈を言うんだ。早く」
そう言われるが巨大な蛇を見てから私は腰を抜かしてしまった。
「護衛を薙ぎ払え、ククルカン」
「ギシャァァァ」
咆哮と共に巨大の尻尾で護衛を薙ぎ払う。護衛は、ボーリングのピンのように飛ぶ。
「グハァ」
グシャ
投げ飛ばされた護衛の一人が私の近くに飛んでくる。地面に当たった衝撃で血が当たに飛ぶ光景を目のあたりにしてしまい声が出た。そして、尻餅をついた。
「ウワァァぁ」
「誰だ!」
声でバレてしまった。低い声だった。恥ずかしいなんて思う暇もない。
子分たちがこちらに近寄ってくる。
祈、祈、と思うがなにも分からない。
天之助けてよ。
ガサ
「ヒュー、こりゃまた身綺麗な嬢ちゃんだ」
「親分、売りに出せばいい金になるぜ」
「なら、殺さず捕まえておけ」
ヒャッヒャヒャと気持ち悪い声を親分があげると叫声するように子分abcdeもあげた。
汚いカエルの合唱が鳴り響く。
「勇ましい方よ!助けなさい!助けたら貴方の好きなだけお金を差し上げるわ!」
とお嬢様と思わし金髪テイルの女性は声をあげる。
いやいや、私も絶対絶命だよ。貴方なんて助ける暇もないし、このまま死んだら天之御中主神を恨んでやる。
天之御中主神よ、助けろ。
もう終わりだと思ったとき、脳裏に言葉が浮かぶ。不思議と私は、違和感もなくとっさに紡ぐ。
「天地開闢し時姿現す。創造せし、天之御中主神」
すると、勾玉が割れて光が溢れ出す。私は、目を閉じる。
「なんだ、こいつも信仰者か!」
光が小さくなり目を開けると目の前に刀剣○舞の三日月○近のような衣装をきたアシンメトリーの髪形をした黒髪の男が現れた。
「よくやった」
そう言ったのは目の前男、天之御中主神だった。そして頭を撫でた。
触れている…
「早くたすけてよ」
と涙目ながら言った。
「先にあの蛇を片付けるか」
そういうと天之は、自分の5倍くらいの大蛇の背中まで瞬時に行き羽をつかみ千切った。
「ククルカン!その男を片付けろ・・・・はぁ?」
ギシャァァァと言いながら大蛇は光ながら消えていった。
その光景に山賊たちは怯む。
やっと助かった。こんな所でバットエンドにならなくてよかった。と思ったのもつかの間親分が叫ぶ。
「おい、お前ら信仰者を狙え」
「ヘイ」
山賊は、私をターゲットとした。
うそでしょ!
私は、身体を動かそうと捩るが動けない。
天之が離れたところから唱える。
「性別転換(男⇒女)」
途端盗賊たちの股間が輝きシューと音がなった。
盗賊たちは何が起こったのかと混乱している。
「俺様の大事なイチモツがー」
「親分、剣が重たくて持てないっす!」
「親分、俺の胸めっちゃ巨乳っすよ!」
「おい、プリーポ。女姿のお前も好きだ」
「兄貴の女姿、濡れます。それにお尻も疼いてるので兄貴ので慰めてください」
えっ、なに。男が女に?はっ?
こんな方法だったなんてかっこ悪い。
抑えきれず声をだしてしまった。
「もっとカッコいい異世界転移がよかった」
「ついでに性別転換(女男)」
「はあ?」
すると、私の身体と何処からか音が鳴り出した。
「おい、待てなんで私の身体をかえるの!」
とお天之御中主神に向かって叫ぶ。天之は素知らぬ顔で言う。
「我が身とて過つことありて」
おい、かっこよく言ってるけど「俺も間違えることあるわー」だよな。コブラツイストかけたろか!それにさっきまでは現代語だったろ!
突如低温ボイスが響いた。
「よくもやってくれましたわね、メス豚ども。支配者が居なくて女性なら怖くありませんわ。私、武術なら心得がありましてよ。男性には劣りますが私が男性なら引けを取らなくてよ。私の部下の御礼をさせてもらいますわ」
えっ、何このイケボ
声のする方を見ると金髪お嬢様が指をポキポキ鳴らす金髪女装ゴリラになっていた。
金髪女装ゴリラは、盗賊たちをタコ殴りにし出した。
「素手が剣に勝てると思うなよ!」
「止めてください。次から手を出しません。」
「女の顔殴るなんてサイテー」
「最ぶってください。私は卑しいメス豚です。」
最初は、戦おうとしていた盗賊たちだが剣を振るうほどの力がなかったようでどんどんおかしくなっていっていた。
ふと気づく私もマッチョゴリラに、なってるのかな
身体をみると胸が無くなってはいたがマッチョにはなっていなかった。
男性体でも貧相な体だな
「其方は、珍コ生やしただけでホルモンは弄っておらぬ」
「心を読むな!」
と近づいてきた天之にいう。そして、手を差し伸べてくる天之に助けられ立ち上がる。
これはなんたる失態。と思っていたら金髪女装ゴリラに声をかけられた。
彼女の報復は終わったらしい。
「この度は、助けて頂きありがとうございました。私の名前は、扇ホムラ《オオギホムラ》と申します。珍しい支配者を従えていらっしゃいますのね。もし、差し支えなければお名前をお伺いしても?」
私は、すぐに立ち上がり天之の後ろに隠れる。
ぶっちゃけ手の甲は血まみれで顔や身体に返り血がついている。いかに女性の服をきて女性の仕草をしても恐怖を感じる。
「えっと、私は、御池紬です。この人は、天之御中主神です。」
天之を壁にしながら答える。
「御池さまですね?貴方の腕を見込んでお願いが御座います。この森を抜けたところの街「キキョウ」に私の屋敷があります。そちらまで護衛をお願いしたいのです。勿論謝礼は弾みます。」
「やります!」
即答していた。
いや、だって謝礼弾むって言われたしこの世界のこと知りたいし、
お嬢様っぽいから恩を売りたい。今は、マッチョだけど
「ありがとうございます。夜は危ないので彼らの遺品を回収したらすぐに出発したいとおもいます。」
そう言うと彼女、いや彼は盗賊から荷物を護衛の遺体から身元がわかるものを回収していた。私は、一先ず天之に身体を戻すようにそくすと案外簡単に了承してくれた。
「天之、戻してよ」
「ふむ、残念だ。」
と天之が寅の印を結び唱えると同じように音をたて私の身体と扇ホムラ(オオギホムラ)の身体は戻った。
ホムラも残念そうに肩を落としていた。
せっかくの美貌が野獣になるのになんでショックを受けるんだろ。
そして、天之御中主神は、いつの間にか最初あったときのような質素な和服になっていた。
「なんで服がもとに戻ってるの?」
(ふむ、顕現が解けた。見てみろ其方の左手にも勾玉が戻っているだろう)
そういわれ手首を確認すると戻っていた。
「さっきのは具現化してて今が霊体中なわけか。その状態だと他の人にもみえるの?」
(いや、見えないし聞こえない。疲れたから寝る。何かあれば呼べ。)
そう言うと私の目の前からも消える。
ふーん
わたしは、右手で勾玉を撫でた。
そして、全てが終わった扇ホムラ(オオギホムラ)は、私に方角を示すと歩き出す。足は、微かに震えていたが私も追いかけるようにこの場を、後にした。
ちなみに盗賊は裸で木にくくりつけられ性別は戻さなかったらしい。