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第8話 まずはご飯を食べよう




新しく一緒に暮らすようになった、さえとせん。

さえが十歳で、せんが八歳らしいが見た目はそれより幼く見える。

しかも、栄養がぜんぜん足りていないのか疲れやすいようだ。


あの村からこの神社まで、必死に歩いてきたのだろう。

膝が笑っているかのように、時々がくがくしている……。


また、着ている服も履いている草履もボロボロで、とてもじゃないが大事に育てられたとは思えない。

……でも、この時代の農家はこんなものなのかな?


とりあえず、当面は社務所で寝泊まりをすることになる。

今、孤児院になる建物は建築中なのだ。

社務所の後ろを予定しているが、この子たちにゴーレムを見せるわけにもいかないので『箱庭』の中で完成させて空間魔法で移動させることにした。



「二人とも、お腹空いてないか?」

「……す、空いてます」

「……」


さえは、恥ずかしそうに答えてくれたが、妹のせんは俯いて黙ったままだ。

姉のさえが何か言うように促すが、黙ったままイヤイヤをしてさえの左腕にしがみついて俺から隠れようとする。


「あ、あの、妹は人見知りだから……」

「大丈夫だよ、怒ったりしないから、ね。

とにかく、さえとせんの寝泊まりする家に案内しよう。そこで食事だ」


俺はそう言うと、さえとせんの前を歩いて社務所に案内する。

二人は、俺の後ろをゆっくりと歩いてきた。




社務所の戸を引いて開けると、中へ入るように促す。

さえとせんが中へ入ってから、俺が入り引き戸を閉める。

そして、土間で草履を脱がせ板間に上がるように促した。


「囲炉裏の側に座って、温まりながら待っていてくれ」

「は、はい……」

「……」


だが、なかなか板間に上がろうとしない。

高さは二十センチも無いから、上がれないってことはないと思うけどどうしたのかな?


「あ、あの、汚れてしまうので、足を洗ってもいいですか?」


意を決して、さえが俺に言ってくる。

そういえば、草履がボロボロだったな。このまま上がって汚すのを躊躇したのか。


「そうだね、分かった。今、桶と布を持ってくるよ」

「す、すみません……」

「謝る必要はないよ。それよりも、汚さないように考えてくれてありがとう」

「い、いえ……」


さえは、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

その会話をさえと手をつないだままのせんが、黙ったまま見ていた。



それから桶に水を入れ布を用意してさえに渡すと、まず妹の足を拭いた後自分の足を拭いて板間に上がり囲炉裏の側で暖まりだす。

今は秋から冬になる季節だから、囲炉裏の火は消せれないんだよな。


一応、火事には気をつけてはいるけどね……。


さえとせんが囲炉裏で火にあたっているのを確認して、俺は囲炉裏に吊るす鍋で雑炊を作ることにした。

この時代に米を使った雑炊はどうかなと思うが、お腹に優しくて温まるものといったら雑炊が良いだろうと安易に考えたのだ。


鍋でお湯を沸かし、作り置きしてアイテムボックスの中に入れておいた出汁を入れてかき混ぜ、生米を入れてぐつぐつと炊き、程よい柔らかさになったら溶き卵を入れてざっとかき混ぜる。

三十分ほどでできる、本当に簡単な料理だ。

雑炊のできた鍋を囲炉裏に吊るし、三人で分けて食べる。


木のお椀にそれぞれ取り分けてやり、木のスプーンをつけて手渡す。

さえとせんは、恐る恐る受け取り雑炊のいい香りに我慢の限界みたいだ。


「二人とも、食べていいんだよ?」

「は、はい!」

「うん!」


勢いよく食べようとする二人を、俺は注意した。


「あ、熱いから気をつけて」

「……ふぅー、ふぅー」

「……ふぅー、ふぅー」


さえは、俺の注意に反応し冷ますように息を吹きかける。

せんは、そんな姉の行動を見てまねして冷まそうと息を吹きかける。

俺は、そんな二人の様子を見てほっこりしてしまった。


二人とも十分に冷ますと、雑炊を一口食べる。


「……美味しい!」

「うん!」


簡単な料理だけど、こんな物でも美味しいと言って食べてくれるとは今までどんな食生活だったんだと心配になってくる。


俺はもとの世界では、料理人だった。

料理することが好きで進んだ道だったが、働いていた店が閉店するまではずっと料理のことばかり考えていたからな。


俺の今までの料理知識を生かして、この二人に美味しい料理を味あわせてやりたいな……。

俺は、黙々と雑炊を食べるさえとせんを眺めながらそう思っていた。



お腹いっぱいになったところで、俺は二人をお風呂へ入れてやった。

もちろん一緒に入るわけではない、お風呂の使い方や洗い方などを教えるためだ。

しかし、二人を洗っていると気づいてしまう。


さえとせんの体にある、無数のあざや傷。

虐待されていたのかと思えるものばかりで、二人が大変な生活をしてきたことが分かって俺はいたたまれなかった。


湯船にゆっくりとつかり、今までの疲れを癒したらお風呂から出る。

そして体をよく拭き、新しい服に着替えるのだ。

女神様の、お願いのために用意していた下着や服が役に立つ。


「わぁ……」

「……」


さえとせんは、袖を通した新しい服に驚いていた。

それは、神社で働く巫女が着る服なのだが二人にはわからなかったようだ。

もちろん、普段着る服も用意してあるが、今はここでの生活を説明しないとな。


「これは、この神社で仕事をするときに着る服だよ。

普段は、こっちに用意した服を着るといい。

それと、これは大事なことだからしっかりと覚えておいて」


そう言うと、さえとせんは服にいっていた意識を俺の話に向ける。

これは重要なこととして、俺はトイレの場所と使い方を説明した。


この時代、排せつはその辺でだったと俺の知識にあったからな。

トイレのことは、重要なこととして教えておかないと……。







今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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