第4話 戦国時代で拠点を
女神様と少し話した後、俺は戦国時代の日本のどこかに女神様によって送還された。
到着してすぐに周りを確認するが、暗闇で何も見えない。
まずは、ここがどこなのかを知る必要があるな。
というわけで、支援魔法『夜目』を発動する。
「……こうして周りの物が見えるということは、魔法が使えている証拠だな」
魔法使用後、周りの様子が昼間と同じように見え始める。
……どうやらここは、神社の境内のようだ。
だが、その場で見回しただけで鳥居はボロボロで今にも倒れそうだし、本殿にいたっては屋根が落ちてしまっている。
ここを拠点にするにしても、建て直しが必要だな。
とりあえず、他の場所も見ておくか……。
「ん?これは本殿ではなく拝殿か?」
屋根が落ちている建物が本殿かと思ったが、少し歩くと奥にもう一つ建物を確認した。だが、こっちの建物も屋根が落ちている。
それとよく見れば、雨曝しになっていたと思われる御神体らしき銅鏡が傷だらけでだった。
「一体何があってどれだけの年月、ここは放置されていたんだ?」
境内の様子を確かめていると、かなり手を入れないといけないことが分かった。
そこで俺は一から建て直してしまおうと考え、拠点にするべく神社の全体を考えることにした。
暗闇の中、考えること十分。
だいたいの拠点として使う神社の姿が見えてきたところで、まずはクリエイトゴーレムの土魔法を使ってゴーレムを十体創造する。
核となる魔石は、アイテムボックスに死蔵していたものを使用する。
「……そういえば、この魔石は最後に立ち寄った町で手に入れたものだったな」
勇者パーティーに、荷物持ちとしてこき使われていた時、俺が休息をとれるのは町に寄った時だけだったな。
そして、その休息を利用して、冒険者ギルドで魔法や錬金術を習ったんだったな。
町によるたびに冒険者ギルドを利用していたが、最後に寄った町では魔石を換金できなかった。
魔物が町を襲っていて、それどころじゃなくなったからな。
だから、この魔石はアイテムボックスにしまったままだった……。
俺はしみじみと魔石を見ながら、あの町のことを思い出してしまった。
……まあ、勇者パーティーのおかげで被害は最小限だったんだ。うん、今は後にしよう。
それから、拠点としての神社を造るにあたって女神様からもらった『宮大工』スキルをゴーレムに付与し、屋根の落ちた本殿や拝殿の建て直しを任せる。
早速、建て直しを始める宮大工ゴーレム十体だが、すぐに建て直しが終わるわけでもないので今のうちに境内の外の様子を見てくることにした。
十段ある石階段を降りると、ボロボロになっている鳥居が立っている。
ちょっと押せば倒れそうな鳥居の外には、土むき出しの簡素な道らしきものが森の中へ続いているみたいだ。
どうやら、この神社は本当に忘れられた存在になっているようだ。
「誰も来ないようなら、ここを俺の拠点として使わせてもらう」
俺はこの神社を拠点にすることを決めると、石階段に座り女神様にもらったタブレットをアイテムボックスから取り出す。
そして、ここが日本のどこなのか。いつ頃なのかを調べた。
少しだけ女神様に聞いた使い方を思い出しながらタブレットを操作する。
「……えっと、確かこうしてこうすれば……出た。
ここは、日本の中国地方の山の中のようだな……。
そして今は……1560年というと、確か桶狭間の戦いがあった年だったか?
……でも11月の10日だから、桶狭間はもう終わっているか。時刻は午前1時30分……」
その時、境内から何かを叩く音が複数聞こえてきた。
おそらく建て直しが始まったのだろうが、時間も時間なので少し怖くなってきた。
「……戻るか」
俺は立ち上がり、石階段を上って境内へ戻っていく。
当分は、空間魔法で入れるようになった箱庭で生活していこう。
拠点にする神社の建て直しが終わるまでは、女神様のお願いも引き受けられないし何も出来ないからな……。
▽ ▽ ▽
次の日、俺は箱庭から出ると改めて境内を確認して回る。
現在、ゴーレム十体によって建て直し作業中の本殿と拝殿。さらに、鳥居や社務所などいろいろ建てておかないといけない建物もある。
そのため、ゴーレム十体は休むことなく働き詰めだ……。
「これが、ここの神社の御神体で間違いないか」
本殿や拝殿の中にあったものすべてが並べられていた場所に、傷だらけの銅鏡が置いてある。俺はその銅鏡を手に取ると、隅々まで確認する。
どうやら、かなり昔に作られた物らしく施されていた模様に特徴があった。
建て直しが終われば、再びこの銅鏡をご神体に新しい神社として生まれ変わる。
そのためには、この銅鏡を何とかしないといけないんだが……。
「……錬金術で、何とか修復できないかな?」
ついでに、神々しさも欲しいからアイテムボックス内にあるミスリル鉱石も使ってみよう。そう考えると、俺はさっそく行動に移す。
そして、錬金術を使い銅鏡を修復。さらに、ミスリル鉱石でコーティングすると神々しさが倍増してしまった。
……やってしまった感が強いが、御神体としては十分だろう。
俺は、御神体を再び並べられていた場所に戻すと境内の見回りに戻り、この神社唯一の鳥居の場所まで行き石階段を降りる。
すると、道の先に森があるのだがそのさらに先が見えていた。
森に入っていく道の先には、どうやら村があるようだ。
どんな村かは気になるが、今は村の人間と接触するわけにはいかない。建て直しの音が村に響かないようにと、神社に入ってこないように魔法で結界を張っておこう。
俺は石階段を降り切った場所で、結界魔法を使った。
すると、神社の周りと森の一部を覆うように霧が発生し結界が完成。
これで当分は、誰も入ってくることはないだろう……。
俺はどこか満足げに、石階段を上り境内へ戻っていく。
だが、この行為が周辺の村でちょっとした騒ぎになってしまうのだった……。
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