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第35話 海賊の拠点




瀬戸内海で海賊といえば、村上水軍が有名どころということだろうか。

だが、村上水軍も毛利水軍の一部でしかないのだが今、俺が追跡している海賊はどこにも属していないようだ。


淡路島の南側からさらに南へと船は進んでいた。

このままいけば、瀬戸内海ではなく太平洋へ出てしまう。


「……どうなっているんだ?」


船の大きさは、かなり大きくこの時代なら南蛮船と呼ばれてもおかしくない大きさなのだが、乗り込んでいる者たちは南蛮人ではなくどう見ても日本人ばかり。

しかも甲板の上には、攫ってきた女性たちが五人ほど座らされている。


(このまま進んで、どこまで行く気だ?)



何事もなく、一時間ほど進み湊に到着した。

しかも、この湊は隠された場所にあり停泊した大きな南蛮船を隠せるほどの大きな倉庫が建てられそこに隠せるほどだ。


「まずは、食い物を降ろせ!

佐吉!女は後回しだ!!」

「へ、へいっ!親方!」

「村にいる家族が飢えてしまうだろうが!

さっさと、運び出せ!」

「「「へいっ!!」」」


船の甲板に出てきた髭面の男が、この海賊をまとめている親方だろう。

声を荒げて、下っ端連中に指示を出している。


船長の恰好はしてないが、見た目の人相は親分といった感じだ。


「さて、お前たちはもう俺たちの村の人間だ。

前の村のことはあきらめて、俺たちの村に早く慣れることだ」


そう言うと、親方は船を降りて行く。

親方が船を降りると、さっき佐吉と呼ばれた男が攫われた女たちに近づき声をかけた。


「おら、お前らも船を降りろ。

それから、お前たちの相手が決まるまでしばらく牢に入ってもらうからな」

「ろ、牢に……ですか?」


「心配すんな、村に男は多い。

すぐに、お前らの夫になる男は決まるだろうよ」

「そ、そんな……」

「おらっ!泣いてねぇで、諦めな」


佐吉はそう怒鳴ると、女たちを無理やり立たせて船を降りていった。

どうやら、ここは攫われてきた女たちを無理やり妻にして住まわせている村なんだと理解した。

ならば、俺はどうするか……。


まずは、このまま認識疎外と光学迷彩の魔法がかかったままで村を調べてみる。

それに、なぜあんな船を持っているのかも気になるしな。



連行される女たちの後を付いて行くと、遊女屋のような建物に入っていった。

あの格子状の仕切りがあり、道から中の遊女を選べるあの建物だ。


どうやら、ここに女たちを入れて村の男たちに選ばせようとする場所らしい。

女たちを中に押し込むと、村中に聞こえるように鐘を鳴らす。

そして、しばらくすれば男たちが集まってきた。


佐吉という男の言う通りならば、集まってきたのは村の独身の男たちということだ。だが、ここで選ばれて連れて行かせるわけにはいかない。

そこで俺は、霧魔法を使い女たちが確認できないように建物を丸ごと蔽ってしまう。


「お、おい!何も見えねぇぞ!」

「なんだこりゃ!」

「こんな濃い霧なんて、初めてだ!」


牢の奥に震えるように集まっていた女たちを、濃い霧が隠す。

そして、初めての現象に集まってきた男たち十人ほどが右往左往と狼狽していた。

さらに、佐吉たち海賊の男たち三人もお手上げの状態だ。


「し、仕方ねぇ、見合いは後日霧が晴れてからだ!

今日は、もう解散だ!」

「な、なんだよ……」

「せっかく、嫁が貰えると楽しみにしてたのに……」


霧を抜け、村へとおとなしく帰っていく男たち。

佐吉たちも、何も見えねぇと手探りで牢の鍵を確認して村へ帰っていった。


建物に女たち以外誰もいなくなったことを確認し、俺は魔法で牢の鍵を開ける。


解錠アンロック


ガチャリと大きな音をたてて、鍵が開いた。

鍵を外し、牢の中に入ると認識疎外と光学迷彩の魔法を解除する。


「!だ、誰ですか?!」

「しっ!誰もいないからと、声を出さないように」


そう言うと、女たちは自分たちの口を手で覆う。


「いいですか?あなたたちを助けに来ました。

これから、ここを出ます」


俺がそう告げると、女性たちはコクコクと頷いて了承を示す。

この後、女性たちを立ち上がらせると俺は『箱庭』への扉を出現させ中へ入るように促した。


「こ、この中へ、ですか?」

「そうです、一旦この中へ入ってください。

みなさんを連れて、湊へ行き船に乗るには目立ちすぎますので……」

「わ、分かりました……」


もしかしたら、物の怪の類に騙されているのかもしれないがここよりましと、女性たちは扉を開け中へと入っていく。

五人全員が中へ入ったことを確認すると、扉を閉めて消す。


そして、俺は自身に再び『認識疎外』と『光学迷彩』の魔法を掛けると霧に包まれたままの建物を出ていく。

これで、攫われた女性たちは取り戻した。


あとは、この村の謎について探るだけと俺は誰にも気づかれることなく村へと立ち入り調べ始めた……。




村をあちこちウロウロしていると、大きな村というよりも狭い場所に詰め込まれた村というような印象を受ける。

周りは山に囲まれ、この村だけ存在してないような感じだ。


さらに、トンネルなどはなく険しい山を登って隣村に行く感じか。

開けた場所は、海に面した場所のみ。


(ここは、落ち武者が逃れてきた隠れ里みたいな感じだな……)


それにしては、南蛮船は似つかわしくないよな……。







今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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