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女神さまの願いを引き受けたおじさん  作者: 光晴さん


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第34話 淡路国の海賊




1578年十一月下旬、鳴門海峡上空。


「う~ん、すごいな……」


今俺は、眼下に見える鳴門の大渦を見ている。

平成の時代で見る鳴門の大渦と、戦国の時代で見る鳴門の大渦はどこか違うように見えてしまう。



「……おっと、いつまでも眺めている場合ではないな」


一瞬、何しにこんなところまで来たのか忘れるところだった。

今回は、淡路国の南の端で子供を救出するという女神様からの指示があったのだ。でも、淡路国の南の端といっても範囲は広い。


『気配遮断』と『光学迷彩』の魔法を使い、箒型飛行魔道具で空から探しているが子供が捨てられているといった場所は発見できていなかった。


(女神様の指示では、二日後と書かれていたから一日でここまで来て探しているけど、やっぱり明日まで待たないといけないのか?)


目を皿のようにして探しているが、やはり何も見つからない。

指定された日時の通りに、明日までどこかで待つか……。

そう思い、俺はどこか休める場所を求めることにして、先ほどから見えている漁村にお世話になることに。とはいえ、『気配遮断』や『光学迷彩』は解かずに、勝手に休ませてもらうのだが。



俺は漁村の入り口に降り立つと、男の人が村中を走り回りながら、何やら叫んでいた。

何を叫んでるんだ……?


「海賊だー!!逃げろー!!」


(海賊?もしかして、どこかの水軍か?)


そんなことを考えながら男の走って来た方向へ歩いていると、見えてきた浜辺に何艘もの船がたどり着く。

その船は、手漕ぎボートほどの大きさだが、乗っていたのは海賊らしき男たちが五・六人。


浜に乗り上げるやいなや、男たちは船から降りてきた。


「食い物が最優先だ!次に女だ!行け!!」

「「「「おおぉ―――!!!」」」」


そして、次々と船が浜辺に乗り上げ、そこから下船した海賊たちが走り出す。

刀を抜き、槍を構え、村に向かって走り出した。


(……もしかして、こいつらが原因で子供救出の指示があったのか?)


俺は、土魔法で海賊たちを攻撃しようと構えるが、すぐに思いとどまる。

ここで、俺が魔法で海賊たちを退治してしまうと女神様の指示はどうなってしまうのだろうか?


子供を保護する必要もなくなり、指示自体がなくなるのでは?

何より、歴史改ざんになってしまうのでは……。


俺が迷っていると、最初の村人が海賊に襲われる。

海賊に奪われまいと、家にある食料を守ろうとして切られたようだ。

そして、次々と襲われ始める村人たち。


(………そ、そうだ、村の人に支援魔法を!)


俺は、支援魔法の『防御力増大』を村人全員に掛ける。

これで、刀で切られたとしても死ぬことはないだろう。そして、後で治癒魔法を掛けて村人たちを助ければ……。


そう考え、支援魔法を掛けながら切られた村人には治癒魔法を施していく。

幸い、即死した者はいなかったため治癒魔法で命を取り留めていく。


「キャーっ!」

「おらっ、こっち来い!」


俺が村人に支援魔法を掛けまくっていると、海賊は食料を奪いつくしたのか村の女を攫いはじめた。

攫われていく女性の中に、赤子を抱えた女性がいた。


(あの人か)


「こ、子供がいるんです!私がいなくなると……」

「黙れ!いいから、こっちに来い!」

「こ、子供は、連れて行かねぇでくれ!」

「黙れ!!」


海賊は、縋りつく若い男を持っていた刀で切ると血飛沫をあげて若い男は倒れた。


「あ、ああ……」

「ふぎゃーー!」

「うるせぇ!子供を放せ!邪魔だ!!」


そう言うと、海賊は女性の抱えていた赤子を奪うと切った男に投げつける。

ますます泣き叫ぶ赤子、手を伸ばし泣き叫ぶ女性。


「うるせぇぞ!!この…」

「ひぎゃっ!」


海賊の男は、連れていこうとした女性を持っていた刀で切りつけると逃げるように船に戻っていく。

切られた女性は、痛みを我慢しながら、ふらつきつつも赤子の元へ歩く。


俺はすぐに近寄り、切られた男と投げられた赤子、そして切り付けられた女性の全員に治癒魔法を掛けた。


「坊や……」


女性は淡い光に包まれながら、自分の赤子のいる場所まで歩くとその手に抱きしめ安心したのかそのまま気を失った。

俺は、若い男と女性にあった刀傷を治癒魔法ですぐに治す。


また、赤子にも一応治癒魔法を掛けると再び泣き始めるが側に母親がいることが分かると泣き止み眠りについた。


(女神様の指示にあった、保護する子供がこの赤子なら急いで保護に向かえとはこのことだったのか……)


親子三人で倒れて眠る人たちをそのままに立ち上がり、襲われた村を見れば支援魔法が効いたのか死亡者はいなかった。

だが、死亡者はいなかったが攫われた女性たちは何人かいる。


それに、海賊に食料を奪われこれからこの村はどうなるのか分からない。

所々では、家が燃えているところもある。

黒い煙が立ち昇り、海を見れば遠くに海賊の乗ってきた船が確認できた。


俺は、霧魔法で霧を発生させ『箱庭』への扉を開き、人型ゴーレムを呼んで倒れている親子三人を保護した。

そして、扉を消し箒型飛行魔道具に跨ると海賊の船を空から追いかけた……。







今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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