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女神さまの願いを引き受けたおじさん  作者: 光晴さん


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第32話 十年の歳月



1578年四月中旬、桜花神社。


京の都で、蓮杖が暗殺されてから十年の歳月が経過した。

女神様の指示通りに子供たちを保護し、さらに蓮杖にさらわれていたい人たちも保護した俺は、その全員を桜花神社で面倒を見ることにした。


ただ、十年という歳月は人を子供から大人にする。



村長から預かっていた、さえとせんの姉妹はせんが十五になった時に祖父の村長が持ってきた見合いを受け備前の村にいる農家の長男の家に嫁いでいった。

今は、二人とも子供をもうけ暮らしている。


幸せかどうかは分からないが、さえもせんも元気とのことだ。



京の都で保護した義綱君と、美代と千佳の三兄妹は、義綱君が宇喜多直家の家臣になったため備前へ住居を移していった。

これは、さえとせんが備前の農家へ嫁いだことが影響していて姉弟同然に過ごしていたため心配していたようだ。


そして、さえとせんの嫁いだ村近くの戦に参加して、宇喜多家の家臣の一人に誘われ正式に武士となった。

その後、いろいろな戦を経験しているそうだ。


また妹たちの美代や千佳は、義綱君が宇喜多直家の家臣の娘と結婚するとその家臣からの紹介された家の嫡男や次男と結婚することになった。



凛さんと琴の親子は、今も元気に桜花神社で暮らしている。

凛さんは、神社の孤児院で子供たちの世話をしながら暮らしているし、村の男たちからの求婚を断っていた。


もしやと俺と結婚か?と申し込むが、見事断られ恥ずかしい思いをしたのはいい思い出だ。


また、娘の琴は今、二十歳となりこの時代では行き遅れとなるらしい。

この歳までいくつも見合いをするものの、いい相手はいなかったらしく、近頃は俺との結婚を画策している。



蓮杖の公家屋敷に捕らわれていたユリさんと、さな子とより子の三人は今も桜花神社で生活している。

京の都にある実家には見切りをつけて、桜花神社に来ていた。


まあ、お金で蓮杖に売られたようなものだし信じられなくなったのだろう。

それに、桜花神社での食生活も離れられなくなった原因の一つだ。

今までの貧乏公家の食生活は、今の美味しいものが食べられる生活を捨ててまで戻りたい物ではないようだ。


三人とも、今の生活以上のものは考えられないと桜花神社で暮らしている。


結婚は、義綱君の紹介で何度かしたものの成立はしなかった。

今よりも悪くなる食生活が、気に入らなかったらしい。義綱君も、最後は俺が貰ってあげてはどうかと話を持ち込むほどだった。



蓮杖に人身御供として連れてこられた、七殿と冬殿もこの桜花神社で子供たちと一緒に生活している。

七殿と冬殿は、子供たちが成長し今は亡き夫の無念を晴らしてくれることを望んでいた。


そのため、子供たちの成長だけを願って教育をしている。

武士に必要な教養や体力など、親として出来るだけのことをしている。

また将来は、義綱君の元へ仕官させ立派な武士として成長してほしいようだ。


京の都から神社に来て十年。

七殿と冬殿の子供たちは、十一歳となり立派な武士となるべく成長していた……。


七殿と冬殿は、再婚は考えていないそうだ。

子供たちが立派に育ち、武士として父親の無念を晴らせたら考えてもいいとか。



商人によって蓮杖の屋敷へ連れてこられた、連と菊は親族を頼って京の都に残った。

その後、どこかの武家へと嫁入りしたらしい。


幸せに暮らしているかは分からないが、元気でいてほしいものだ……。




▽   ▽    ▽




「タァーー!!」

「ヤァーー!!」


ここ『箱庭』の中にある広場で、武者型ゴーレムを相手に木刀を使って剣術の稽古をしている男の子が二人。

七殿と冬殿の子、宗太郎と新太郎だ。


どちらも十一歳となっていた。


「ハァ、ハァ、ハァ、ぜ、全然入らない……」

「宗太郎、足がふらついているぞ」

「新太郎も、お、同じじゃないか」


目の前の武者型ゴーレムは、正中に竹刀を構えて微動だにしない。

武者ゴーレムの竹刀は、宗太郎と新太郎がケガをしないために俺が作ったものだが、竹刀の軽さが武者ゴーレムのスピードを上げる要因となっていた。


何度も何度も打たれ、二人ともフラフラだ。


――――ピィー!


俺が笛を吹くと、稽古が終わる。


「それまで、剣術の稽古終わり!

体を休めて、しっかり足とか揉んでおくんだぞ?」

「「は、は~い」」


宗太郎と新太郎はその場にしゃがみ込むと、息も絶え絶えに返事をして休憩する。

武者ゴーレムも構えを解き、休憩場所のログハウス横の倉庫に戻っていった。


「ぐ、宮司様、最近あのゴーレム、強くなってない?」

「そうそう、俺たち二人がかりで一つも入れることができないなんておかしいよ」


新太郎の言っている入れるとは、木刀で武者ゴーレムを切るように叩くことだ。

宗太郎も新太郎も、この稽古を始めて一度も武者ゴーレムに入れたことがない。だから、何とか入れようとむきになっていた。


「おかしいな、義綱君は何度か入れていたけどな……」

「義綱さんと俺たちを、一緒に考えないでよ」

「あの人、たまに稽古をしてくれるけど強すぎるんだよな……」


今や、宇喜多家の家臣の一人となった義綱君はたまにこの桜花神社に顔を見せに来てくれる。

そのときに、宗太郎と新太郎の稽古をお願いしたのだがかなりの差があるようだ。


七殿と冬殿は、この二人を立派な武士に育てようと教養などを教えているけど稽古のし過ぎで、よく船をこいでいるとか。

大丈夫かな?この二人の将来は……。







今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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