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第26話 腹が減っては何とやら




「では、蓮杖をどうにかする前に食事にしましょうか」


俺がそう言うと、誰かのお腹が鳴る。

誰のお腹が鳴ったかは追求しなかったが、顔が赤かったのはユリさんだった。



俺はログハウスのキッチンに移動すると、冷蔵魔導庫の中を確認して何を作るか考える。外の時期では、温かいものがいいのだが『箱庭』内は四季がなく一定の気温だ。

だから、年中農作物が収穫できるし野生動物も放してあるので肉も調達できる。


現在、冷蔵魔導庫の中には大体の物がそろってあった。


「ゴーレムたちのおかげで、いろいろな野菜や肉がそろうから助かるな」


俺は、鶏肉を手に取ると親子丼を作ることにした。

戦国時代の人は、鶏肉とか卵は食べないらしいけど俺が美味しそうに食べれば我慢できずに食べるだろう。

そう予想し、作り始めた。


まずは、鶏肉を皮付きのまま一口大に切っていく。

まな板の上で、鶏肉を切っていく俺。


「レストランで、働いていた時代を思い出すな……。

そういえば、前の異世界でも自炊していろんな丼を作っていたな」


次に、出汁や調味料を手鍋に入れて煮ていく。

そこへ、鶏肉を入れてひと煮たち。


ログハウスのキッチンのコンロは魔道具でできているため、火加減が調整できるのだ。

桜花神社は、竈で料理しているから火加減が難しいんだよな。


「……ここで、切った玉ねぎを入れてしんなりするまで煮るっと」


煮ている間に、器にご飯のよそって準備しておく。

ここで溶き卵を、手鍋の中に回すように入れて火を止める。


「あとは、これを器のご飯の上に乗せて……完成!」


これを人数分作れば、夕食の完成だ。

テーブルの上に、親子丼を用意しているとさよ子さんたちが匂いに釣れられてキッチンに入ってくる。


「……美味しそうな匂いです」

「うん、美味しそう」


さよ子さんが、美味しそうな匂いに頬を緩ませながら入ってくるとそのすぐ後に今まで寝ていた女の子が姿を見せた。

さよ子さんの妹で、確か名前は……。


「ユリさん、あの子は……」

「さよ子様の妹君で、より子様です。

今年で十歳に、なられます」


さよ子さんの妹の名前は、より子というのか。

ならばこの子が、九条家に出されるはずだった少女か……。


さよ子さんとより子さんは、テーブルの上に用意された親子丼を見ながらどうしていいのか分からないようだ。

椅子に座るということが、分からないのかな?


俺は、椅子を引いてやる。


「この椅子に座って、食事にしましょう。

さあ、ユリさんも椅子に座ってください?」


俺が座るように促し、別の椅子に座るとそれを見てみんな椅子に座った。

そして、目の前にある親子丼へ集中する。


「では、いただきましょう」

「「「はい!」」」


それぞれ箸を使って、親子丼を食べていく。

……そういえば、食事の挨拶としての『いただきます』は昭和の時代から広く慣習化されたらしいな。

だから、この時代に『いただきます』はなかったんだな……。


「美味しい~!」

「本当に美味しいですけど、これ何のお肉なんでしょうか?」

「ユリ、何のお肉だろうと美味しいものに変わりはないでしょう」

「そうですね、さよ子様」


何の肉かを気にすることなく、二人ともよく食べるな……。

美味しいは正義ってところか。

さて、俺も食べよう。


(いただきます)


小声でいただきますの挨拶をして、親子丼を食べ始める。

この時代に、いただきますの挨拶がないなら流行らせる必要はないな。


「うん、美味しい。

自分で作っておいてなんだが、本当に美味しいな」

「拓海様は、料理が上手なのですね」


俺が、自分の料理をほめるとさよ子さんもほめてくれた。

嬉しいが、明日はまた京の都に戻らなければならない。

また、箒型飛行魔道具で飛んで戻らないと思うと少しうんざりするが、蓮杖をどうにかすると約束したからな。




▽   ▽    ▽




次の日、俺は『箱庭』から外に出ると箒型飛行魔道具に跨り再び京の都へ向けて飛び立った。もちろん、認識疎外と光学迷彩の魔法をかけることも忘れてはいない。


美作の国から京の都まで飛んでいると、播磨の国で兵が歩いている姿を見かける。それも軍隊規模での移動だ。

どこかと、戦でもあるのだろうか?


気にはなるが、桜花神社に危険が及ばないのなら放置だな。

気にせず、京の都へ向かって飛んで行く。



一時間ちょっと経って、京の都の上空に到着。

俺はすぐに、目的の蓮杖がいるはずの屋敷へ向かって飛ぶ。

たくさんの公家屋敷の中に、昨日忍び込んだ蓮杖の公家屋敷を発見した。


(あれだ)


少し高度を落とし、公家屋敷に近づくと怒鳴り声が聞こえてきた。

何やら、蓮杖本人が叫んでいるようだ。


「どうなっておるのじゃっ!

早く消えたあの子供たちを探すのじゃっ!!」

「は、はい!!」


蓮杖は、家臣と思われる人たちに当たり散らしている。

そこへ、商人のあの男が蓮杖に声をかけた。


「蓮杖様、こうなっては別の物を用意いたしましょうか?」

「別のもの?

九条殿は、幼い女子を所望じゃ。それ以外は受け取らぬぞ?!」

「分かっております。この私にお任せください」


商人の男は、頭を下げてお願いしている。

小型ゴーレム蜘蛛型を、使っていないから商人の顔は見えないが絶対ニヤリと笑っているだろうな……。







今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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