表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神さまの願いを引き受けたおじさん  作者: 光晴さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/38

第25話 狙われた訳と対処




1568年十一月上旬、『箱庭』にあるログハウスの寝室で最初に目を覚ましたのは牢の中にいた女性だった。

そして今、その女性が俺の目の前で土下座していた。


「私は、このお二方の乳母をしておりますユリと申します。

この度は助けてくださり、ありがとうございます」


目を覚ましたユリさんに、俺があの公家屋敷から助け出したことを話すと起き上がりベッドの上で土下座して感謝されたのだ。

今だ、女神様の保護指示のあった女の子二人は寝ていたがユリさんが何故あの公家屋敷にいたのか話してくれた。


「ここにいるお二方は、四条家から分家した御当主様のお子様でございました」


ユリさんの話では、昨年の初めに女の子たち二人の両親が相次いで亡くなり乳母であるユリさんの実家が引き取ることになったそうだ。

ユリさんの実家も、地下人とはいえ公家の家なので預かるだけではあるが何事もなく暮らしていた。


ところが、今年に入ってからユリさんたちをさらった蓮杖という公家に目をつけられた。ユリさんの実家も、初めは断っていたそうだが嫌がらせが始まりつい最近にいたってはユリさんを盗賊の仕業に見立ててさらってきた。


さらわれた後、ユリさんはずっとあの牢屋に入れられたままだったそうでそこで、蓮杖本人からユリさんの実家が女の子二人をはした金で売り渡したと聞かされたという。


蓮杖の屋敷に連れてこられた女の子二人は、最後まで抵抗していたそうだが牢の中のユリさんを確認させられおとなしく言うことを聞くようになったらしい。


「で、下の女の子は九条家の公家に、上の女の子は若狭の国人に渡されそうになったと……」

「はい……」


猿轡と縄でくくられていた理由を聞くと、ユリさんに会わされた時にはすでにくくられていたとのことなので連れてくるときに抵抗されたからだろう。


「……もしかして、女の子たちの両親が亡くなったのは……」

「いえ、御当主様はご病気でお亡くなりになりました。

毒を盛られたとかは、聞いておりません。

奥方様は、心労がたたったと聞いております」


ということは、女の子二人が孤児になったのは偶然でそのことを利用しようとしたのが蓮杖という男ってことか。

いや、親族はいるから孤児じゃないか?


でも、その親族も引き取らなかったみたいだし孤児みたいなものかな……。


「そういえば、ユリさんの子供は?」

「え?」

「いや、ユリさんはあの子たちの乳母なのでしょ?

乳母ってことは……」


「私の子供は、本家の御当主様の指示で本家の養女となりました。

ゆくゆくは、どこかつながりを持ちたい家に嫁がされることになるでしょう……」


……この時代の女性は、本当に子どもを産むだけの存在といっていいな。

俺には、ここから女性の地位向上ができるのか甚だ疑問でしかない。



「ハッ!」


ユリさんと話をしていると、隣のベッドで寝ていた上の女の子が起きた。

どうやら、怖い夢を見ていたようで起きるとすぐに周りをキョロキョロと見渡している。そして、ユリさんを見つけ安堵した表情を見せた。


「よ、良かった……」

「さな様、お目覚めになられましたか?」

「ええ、恐ろしい夢を見ていた気がするけど。

でも、ユリが無事でよかった……」


お互いを思いやりながら無事を確認し合う。

さらに、隣でいまだ寝ている妹を見つけ、再び安堵した表情を見せた。


「より子も、無事なようね。

ところでユリ、そちらの方は?」

「はい、こちらは私たちをあの屋敷から救い出してくれた拓海様です。

拓海様、こちらが長女のさな様です」


さなさんも、ベッドの上に正座すると頭を軽く下げ挨拶をしてくれた。


「さな子と申します。

この度は、私たちを助けていただきありがとうございます」

「初めまして、拓海です。

桜花神社の宮司をしています」


「まあ、宮司様でしたか」


どこかふんわりした会話が続き、ユリさんから今の状況説明を終えると考えこむ。

これからどうするのか考えているのかな?


「ユリさんは、これからどうしますか?

俺としては、桜花神社で少し時間をすごす方がいいと思うのですが」

「それはなぜ……」


「ユリさんの実家は、お金でさなさんたちを売り渡したことになっています。

このまま帰れば、蓮杖に連れ戻されるだけですよ」

「そうですね……」


どんな手を使ったにせよ、さな子さんたちは蓮杖の手に渡った状態なのだ。

このまま帰れば、連れ戻されて終わり。

そして、蓮杖の計画通りにさな子さんたちが望まぬ将来を迎える。


それよりも、このまま桜花神社に姿を隠した方が見つかり難いと思われる。

何せ、京の都と美作の国はかなり離れているからな。

普通、わずか一日で移動できるとは考えないだろう。



「……蓮杖を何とかできれば、追われる心配はないのですが」

「そうよねユリ、あの男さえいなくなれば……」


そう言いながら、二人して俺を見るのはどういう意味があるのだろうか?

もしかして、俺に蓮杖を始末しろと?


「もしかして俺に、蓮杖をどうにかしろと?」

「「……」」


さな子さんとユリさんは、そろって頷く。

この時代の人の考え方は、俺には理解できないな。

でも、蓮杖が生きている限りこの三人は狙われると思うし……。


「……分かりました、何とかしてみます。

ただし、殺すかどうかは俺の好きにさせてもらいますがよろしいですか?」

「構いません。私たちが狙われなくなればいいのです。

拓海様、よろしくお願いします」


そうさな子さんが言うと、ユリさんと一緒に頭を下げてお願いされる。







今回も読んでくれてありがとうございます。

話の中に出てきた公家関連の話は架空の物です。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ