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女神さまの願いを引き受けたおじさん  作者: 光晴さん


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第20話 ユメのお仕事




1566年一月下旬。


三村家親が、再び美作国へ侵攻してきた。

そのため、再び村に戦に参加する兵を出すように要請が来る。その要請に桜花神社で成人した義綱君が参加を表明した。


もちろん、俺を始め凛さんや妹の美代や千佳も反対する。

だが、義綱君の意志は固く、俺たちに黙ってでも行くといってきた。

何が義綱君を動かしているのかは分からないが、強い意志は感じる。


囲炉裏を囲んで、俺たちは話し合いをする。


「兄さま、どうしても行かれるのですか?」

「美代、俺も元服しもう大人だ。

これを機に、初陣を経験しておきたいんだ。いい加減、俺自身これからどう生きていくのか考えたいのだ」


武士の血が流れる義綱君だ、このままこの桜花神社で暮らしていくとはならないんだろう。この戦を経験してどこかの家中に、とか考えているのかな?

まあ、俺のお勧めは尾張の織田家なのだが……。


「義綱さん、意志は固いのですね?」

「凛殿、自分の意志を曲げるつもりはありません」

「……そうですか。

宮司様、私は義綱さんのやりたいようにさせていいと思います」


凛さんが、義綱君の戦への参加に賛成した。

義綱君の意志の固さを認めたみたいだ。


「凛さん……」

「……」


義綱君の妹の美代と千佳は納得いかない顔をしているが、凛さんが認めたことで何も言えなくなってしまった。

俺か凛さんが認めれば、他のみんなは従うしかない。


「そうだな、義綱も元服してもう大人だ。

自分の道は自分で決めれるだろう。ただし、生きて帰ってくること。どんな傷を負っても治すことはできる。死んでしまっては、何にもならないからな……」


「分かりました!」


まあ、今回の戦は二月上旬には終わる。

三村家親が、宇喜多直家の命を受けた者たちによって暗殺されて終わりだ。問題はその後だな。義綱君はどんな道を選ぶのか……。




次の日、義綱君は村の男たちと一緒に出発した。

俺たちは、みんなで鳥居の所まで見送り一つのお守りを渡してやる。


「宮司様、このお守りは?」

「これは、俺が作ったお守りです。

肌身離さず身に着けてください。必ず、義綱を守ってくれるはずです」


義綱君は半信半疑の表情だったが、妹の美代と千佳が俺にお礼を言っていた。

義綱君は信じてくれなくても、妹たちは俺のことを信じているようだ。


事実、この俺が作ったお守りは本当に義綱君を守ってくれる。

何せ、付与魔法を施しているのだ。しかも、魔素がないこの世界でも魔法が発動するように魔石を入れている。


魔石内の魔素は、一週間ほど持つから大丈夫だろう。




▽   ▽    ▽




歩き巫女のユメさんは、去年の暮れまでうちの神社にいた。

俺の秘密を知ったからなのか、他にも何かあるのかもといろいろ調べていたようだったけど……。


「ユメ姉さん、今頃はどこにいるのかな?」


義綱君が出発して無事帰ってくるように考えていると、去年いなくなったユメさんのことを思い出したようだ。


「そういえばさえさんは、ユメさんにいろいろ教えてもらってたわね」

「ユメ姉さんの教え方が、分かりやすかったから……」


凛さんが、ユメさんとさえがいろいろ話をしているところを見かけたようだ。

そんなに後輩巫女として、まじめに教えてもらっていたとは……。


でも、歩き巫女と神社にいる巫女はちょっと役割が違う気がするが……。

それに、歩き巫女はくノ一だという説も聞いたことがあったな。

ユメさんの正体については気になるが、まあ、大丈夫だろう……。




▽   ▽    ▽




ある城の一室で、歩き巫女のユメが土下座をして頭を下げていた。

そこへ、一人の武士が静かに部屋に入りユメの前に座った。


「御屋形様、御久し振りにございます」

「うむ、久しいな。

で、何か有益な情報を持ってきたとか?」


この武士、せっかちなのか歩き巫女を下に見ているのかすぐに本題に入る。

そのことに夢は毎回のことと、気にせず情報を告げる。


ユメの持ってきた情報は、畿内における国人たちの動きに戦の状況。

さらに、依頼のあった有望な人物たちの動きだ。

特に、尾張の信長の動きが気になっているのか細かく聞いてくる。


五年前、今川を退けてからは注目していたようだ。


「……なるほど、よく分かった。

では、これが報酬だ。また何かあれば知らせてくれ」

「ハハッ!」


土下座して頭を下げるユメの前に、お金の入った布巾着を置くと武士は立ち上がりすぐに部屋を出ていった。

ユメは、誰もいなくなったことが分かると頭を上げ布巾着の中身を確認する。


「歩き巫女の特権ね。

各地の情報を知らせるだけで、こうしてお金になるんだから」

(でも、宮司様の情報はうかつにしゃべれないわ。

最悪、宮司様だけでなくあの神社の関係者から私自身の命も危ないし……)


ユメは布巾着を懐にしまうと立ち上がり、城を出ていくために歩き出した。


「次は、また尾張に向かってみようかしら。

町でいろいろ聞いた話だと、今一番動きがあるみたいだし……」


歩き巫女は、各地の情報を収集しながらその情報を売り歩いてもいるらしい。

ユメは、その情報集の売買を主にしていたようだ。


そして、次の情報収集場所は尾張に……。







今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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