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第13話 保護依頼の子供たち




「……ここは、どこだ?」


凛さんたちが桜花神社に来た次の日、『箱庭』の人型ゴーレムから念話で少年たちの目が覚めたと連絡を受け、俺は『箱庭』の家に来ていた。

そして、少年たちが寝ていた部屋に入るとさっきの少年からの質問だ。


水分補給をはじめとした治療をして、一日寝たことで少しは体力を戻したらしい。


「ここは、俺の家だよ」

「あなたの?……この敷いてある布は何だ?」

「それは、南蛮の寝具『ベッド』というものだ。

南蛮人は、そのベッドで寝起きする」


少年は、ベッドから降りると興味深そうに今まで自分が寝ていたベッドを押したり触ったりする。

そして、部屋の中を見回して確認し妹たちのことを聞いてきた。


「俺の妹たちはどうなった?どこにいる?」

「君の妹たちは、隣の部屋で寝ているよ。

君同様、かなり危ない状態だったけど何とか助けることができた」

「そうか……」


そう言うと、少年は立ち上がり俺に向き直ると一礼する。


「俺と妹たちを助けてくれて、忝い。

俺の名は、義綱。

姉小路頼綱のご落胤らしいが、母が亡くなっているので詳しくはよく分からん」

「……俺は、石川拓海といいます。

桜花神社で、宮司をしています」


……姉小路頼綱って、どこかで聞いたことあるな。

詳しく思い出せないが、戦国時代にいた有名人の一人だっけ?

確か、飛騨に関係していたような……。


まあいいか。


「義綱の妹二人も、そのご落胤なのか?」

「いや、美代も千佳も母が同じだけで父は違うぞ」


「妹さんの名前は、美代と千佳というのか」

「そういえば、言ってなかったな。すまん。

美代と千佳、本人から名乗るのが礼儀だと思ってな……」


なるほど。

しかし、義綱君のしゃべり方はどこかの武将のようだな。


「義綱は、これからどうする?

その姉小路頼綱という人の所に行くのか?」

「……いや、母が亡くなってご落胤かも怪しいからな。

美代と千佳と、一緒に暮らせていければいいと思っている」


そういえば、ご落胤って父親が認知していない子供だったな。

ご落胤のほとんどが、歴史の表舞台に出ることなく死んでいったとか。


「それなら、俺の桜花神社で働かないか?」

「それは有り難いが、いいのか?」

「ああ、妹二人も一緒に面倒を見ることもできる。

他にも預かっている人もいるし、今さら三人増えたところで変わらないさ」


そう言うと、義綱君は俺に一礼してお礼を言ってくる。


「忝い、石川殿」

「拓海でいいよ、義綱」

「ああ、拓海殿」


そう言うと、二人で笑い合った。

しかし、女神様が助けるように指示した義綱君だけど、成長次第では歴史に影響が出るような気がするな……。

この時代、どの武将の下で戦うかにもよる所があるけど……。



この後、義綱君と一緒に妹たちのいる隣の部屋へ移動する。

ただ、義綱君は足元が覚束ずふらふらしながら歩いていた。まだ寝ていてもいいのだが、義綱君がどうしても妹二人の無事を確かめたかったようだ。


扉を開け、部屋の中に入ると大きなベッドの上に二人の女の子が寝ている。

この子たちが、義綱君の妹の美代と千佳だ。

水分補給に回復魔法で何とか生きながらえているが、まだまだ体力は戻っていないし外見もガリガリにやせ細っている。


目が覚めたら、おかゆか雑炊で食事をとって体力気力を回復させないと。

義綱君もそうだが、体力も筋力も落ちているのだ。


これからゆっくり、体力を回復させてリハビリをしっかりしないと……。




▽   ▽    ▽




『箱庭』で生活すること二週間。

ある程度、三人の体力が戻って歩けるようになったところで生活の場を桜花神社に移動することにした。


京の都へ行った時と同じように、俺は桜花神社から出かける。

行先は、隣村とでも誤魔化しておくが一応同居人が増えることはみんなに知らせておいた。同じ年の男の子が増えるとして、さえとせんが少し緊張していたが凛さんがなだめていた。


凛さんのおかげで、さえとせんもだいぶ心を開いてくれたし神社の生活も楽しんでいるようだ。

俺の前でも、笑顔が増えてきたようだしな。



そして、『箱庭』に移動し義綱君たちを迎えに来た。


「拓海殿、準備はできている。

早速、出発しよう」


義綱君の言葉に、側にいる美代と千佳も頷いて出発を促してくる。

早く桜花神社に行き、みんなに会いたいみたいだ。

義綱君たちには、生活する桜花神社には誰がいるかは伝えてある。


だから、義綱君より美代と千佳が早く会いたがっているようだ。


「みんな、まだまだ体力が戻ってないからゆっくり歩くんだよ?」

「分かっている、美代も千佳も大丈夫だよな?」

「大丈夫です、兄さま」

「大丈夫です、兄上」


「ということだ。拓海殿、案内してくれ」


三人とも、新しい同居人というより家族が増えることがうれしいのかもな。

母親はすでに亡くなり、父親は認知していない義綱君。

美代と千佳の父親は、母親や子供たちを捨てて都を出ていったらしい。


今頃どこで何をしているのかは気にしていないようだ。


俺は『箱庭』から出るための扉を出現させ、みんなでその中へ入っていく。

桜花神社に続く森の道に出るとゆっくりとだがすぐに歩きだし、義綱君たちはすぐに見えてきた神社の朱色の鳥居に驚き、その奥の拝殿などの建物にさらに驚いた。


どうやら、こんなに立派な神社とは思ってなかったようだ。


この神社で、新しい生活が始まる。

みんながどんな風に成長していくかは分からないが、たくましく生きてほしいな……。







今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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