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女神さまの願いを引き受けたおじさん  作者: 光晴さん


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第12話 拠点到着




「凛さん、凛さん」

「……ん、…ぅんん……」


凛さんの頬を、ペチペチと軽くたたいて起こす。

しかし、なかなか起きない。


「……」


なかなか起きない凛さんに困っていると、先に起きた琴が俺の袖を何度か引いてくる。私に任せて、と満面の笑顔でお願いしていた。

ここは、娘に任せるべきか……。


「じゃあ、お願いするね」

「うん!」


俺は琴に任せて立ち上がると、琴は母親の凛さんに近づき頬を引っ張り出した。

むに~と、顔がいい塩梅に変形する。

そして、元に戻したり伸ばしたりを繰り返しだした。


「♪」


何だか楽しそうだが、凛さんは大丈夫なのだろうか?

悪夢にうなされる様に、少し苦しみだし……。


「…………琴、痛いよ?」

「おじさん、お母さん起きた!」


凛さんが起きたのはいいのだが、おじさん呼ばわりは……。

でも、琴の笑顔を見ているとまぁいいかとなるのは不思議な感覚だ。


「凛さん、目的地に到着しますよ」

「え?もう、ですか?

……すみません、私寝ていたみたいで」

「いえ、大丈夫です。それより、目的地の神社はあそこですよ」


そう言って、俺は拠点にしている『桜花神社』を指さす。

ここは村から森に入る入り口付近なので、周りはたくさんの木々に囲まれているが二メートルほどの横幅の道がまっすぐ奥に続き、神社の朱色の鳥居が見えていた。


「桜花神社というのですね。石川様は、いつから宮司を?」

「拓海でいいですよ、宮司は二十日ほど前からですかね。

とりあえず、行きましょうか?」


凛さんと琴は、手をつないで俺の後に続いて歩きだす。

だんだんと『桜花神社』の建物が見えてくると、凛さんと琴の驚いた声が聞こえてきた。


「………わあぁ」

「………すごい」



桜花神社の鳥居の前にたどり着くと、辺りは夕方になっていた。

十段ほどの石階段の上に、二人の女の子が立っている。


「お帰りなさい、拓海さん」

「おかえりなさい」


さえとせんだ。

巫女服に身を包み、俺が帰宅するのを待っていてくれたようだ。

それに、さえが俺のことを名前で呼んでくれた。これはうれしいな。


「ただいま、さえ。せん。

それと、こちらは今日からこの神社で暮らすことになる凛さんとその娘の琴だ」

「初めまして、凛と娘の琴です」


凛さんは頭を下げて挨拶をする。琴も同じように頭を下げた。

それを見て、さえとせんも挨拶をする。


「姉のさえです。こっちは妹のせんです」

「せん、です」

「さえ、せん、凛さんと琴をお風呂に入れてあげてくれ。

着替えは用意しておくから。

それと、夕食も俺が用意しておくから四人でゆっくり入ってきていいぞ」


そう言うと、さえとせんは凛さんと琴をお風呂場に案内していく。

凛さんと琴は、少し躊躇していたが俺が促すとさえとせんについていった。


さて、『箱庭』に凛さんと琴に合うサイズの服を取りに行くついでに、今夜の夕食の食材も一緒に持ってこないと。

今日の夕食は、何にしようかな……。




▽   ▽    ▽




社務所の土間にある竈で、料理をする。

豪華な夕食にしたいが、凛さんと琴は今まであまり食べてないようなので、今日は消化のいい物にしようか。


そうなると、雑炊に汁物をつけての夕食とするかな。

早速、持ってきた野菜を洗って皮をむき切っていく。雑炊を作る鍋には、前と同じ材料にわかめと椎茸を入れることにした。


『箱庭』には、小さいながら海もあるのでわかめも生えている。

さらに、山の中には椎茸ももちろん生えている。それに、俺の『箱庭』には魔素が食材にも入っているため育ちが良いのだ。


こっちの人たちが、魔素入りの食材で作った料理を食べてどう影響があるのか分からない。ただ、死ぬことはないだろう。

俺も、魔素の無い地球から魔素のある世界に行って食事をして無事なのだし……。


あと汁物は、みそ汁でいいかな。

ただ、日本では地方によってみそ汁の具が変わるとか聞いたことがある。

今いる地方、美作の地の味噌汁でなければならないということはないと思うので、いつも作っていた一般的な味噌汁を作る。


前の世界は、大豆そっくりな食材があったため味噌や醤油が作れたのだ。

もちろん、豆腐も作ったりしている。



後は煮込むだけというところで、凛さんたちの着替えを脱衣所に届けに行く。


社務所に併設されたお風呂には、脱衣所が付いている。

今いるこの戦国時代、お湯に入るお風呂は珍しいとどこかの本で読んだことがある。

俺自身、歴史の点数は良くなかったがいろいろ本は読んでいるのでちょっとした知識はあったのだ。


脱衣所の戸を引くと、そこには全裸の凛さんがちょうどお風呂から出てくるところだった。……もしかして、これがラッキースケベとかいうものか。



「!!た、拓海さんっ!!」

「ご、ごめんなさい!着替えを!」


俺は、脱衣所の入り口に置くとすぐに戸を閉めた。

お風呂場の戸は、ガラス戸ではないのでいつ出てくるか分からない。

そのため、こんなことになったのだろう。


とりあえず、凛さんはやせすぎな感じだった。色気も何もない。

……これは、ラッキースケベといえるのだろうか?


たぶんそのあたりは、この神社で暮らしていけば、健康的になると思う。

さえやせん、凛さんと琴はこのままでいいとして『箱庭』にいる三人の子供たちは、折を見て神社で預かるということにしておこう。


ある程度食欲が戻れば、生きていく気力も生まれ一緒に暮らすこともできるだろう。






今回も読んでくれてありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
風呂を頻繁に使うなら周辺から蒔きがなくなり森林伐採が進み禿山が広がる、たぶん植林してもその成長が進まない だから代わりとなる代替え燃料がひつようになる 大きな油田か石炭鉱床がみつかるといいね
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