TSした俺が女幼馴染に授乳する話
「たくみ、母乳出るって本当?」
千夏が、授業終了後に俺の席にやってきて、開口一番にそう言った。
さっきの保健体育の授業は俺にとってハードな時間だった。数千人に一人の割合で発生するTS病についての授業だったからだ。そして、俺はそのTS病を患い、男から女になった者だ。
後天的に女になった人は、もともと女だった人とは少し違う点がある。そのうちの一つが、出産経験がなくても母乳が出る場合があるという点だ。
「いや……俺がそういう体質だとは限らないだろ?」
そんなふうにごまかすが、実際のところ俺は母乳が出たことがある。だが、それを周りに喧伝したことはないし、他の人に知ってほしいとも思わない。ちょっと前までは男だったのに、母乳が出るなんておかしいじゃないか……という気持ちが強い。
「確かに出ないかもしれないけど、試してみなきゃわかんないじゃん?」
身を乗り出して言う彼女は、どこか目を輝かせていた。そんなに俺が母乳が出るかどうか気になるのか?
正直、自分にとってはどうでもいいし、コイツなら信用してもいいという感覚があった。なにしろ、幼稚園からの付き合いなのだ。俺が傷つくことはしない……と思いたい。
それに、好奇心かもしれないが、千夏が俺について知りたいと思ってくれていることは悪いことだとは思わなかった。
「はぁ……わかったよ。わかったから」
そう言って俺は席を立ち、女子トイレへと向かう。後ろには千夏が付いてきていた。
もはや慣れ親しんだはずだが、いまだにここに入るのは気が引ける……
個室に入り、鍵をかける。
(中略 ノクターンノベルズに移動させました)
俺の胸から離れて、満足げな表情を浮かべる千夏。10年以上の付き合いがあるこいつだが、その表情を見て、今までに経験したことがない感情を感じたのはおそらく気のせいだ。
「もういいだろ。あと3分で授業が始まるぞ」
開放された俺は、腕時計を指差しながら乳房をしまった。さすがにこいつでも、鍵の閉まっていないトイレでは吸ってこないだろうと思い、鍵を開ける。
「しょうがないなぁ。でもまた今度、吸わせてね」
俺の横にいる彼女が、すごく楽しそうに、ワクワクしているようにそう言う。
「あぁ……気が向いたらな……」
別にこれは、母乳を吸われているときのなんとも言えない幸福な気持ちのためじゃない。友達の頼みを断るのは悪いという、そういう気分からだ。
そう心のなかで言い訳をしながら、二人で教室に戻った。