第一話 異形の恋人その2
「さて、俺の顔は広いぜ。何せ、外国のゲーム仲間がたくさんいるしな!」
「あ、ああ、そうらしいね」
ンなことは周知のことである。
マサル叔父さんは、とある世界規模のネトゲのトップランカーである――とそんなわけで顔の広さも世界規模らしい。
が、しかし、考えてみるとリアルでは一切、面識のない連中ばかりだと思う。
その前にマサル叔父さんのリア友っていたっけ?
「さて、数日前のことなんだが、アメリカ人のゲーム仲間から妙な話を聞いたんだ。そんなゲーム仲間が住んでいるミスカトニック大学付属図書館とかいう図書館に厳重に保管されていたトンでもない本が流失したってね」
「ん、ミスカトニック大学付属図書館? マサチューセッツ州のアーカムという町にある大学みたいだな。そんなミスカトニック大学の校内にある図書館らしいな。んで、どんなトンでもない本が流失したんだ?」
「よくわからんが最凶最悪の魔導書という話だ。名前はアルアジフだったかなぁ……」
「最凶最悪の魔導書アルアフジねぇ。ハハハ、まるでアニメやゲームに出てくるものみたいだな」
フーン、最凶最悪の魔導書アルアジフねぇ。そんな本が流失したらしいけど、どこがトンでもないものなんだろう? 俺にはさっぱりだ。
つーか、マサル叔父さんはお人好しだ。面識のないゲーム仲間のアメリカ人の言うことを鵜呑みにしているっぽいしね。
まったく、魔導書なんてものはフィクションの産物だ。なんだかんだと、ゲームやアニメに出てくるものだろうに……。
「ゲーム仲間の話には、まだ続きがあるんだ」
「続きがある?」
「ああ、件のアルアジフだが密かに日本に持ち込まれているって話だ。その際、音黒乃魅魂と題名偽装が行われたらしい」
「そ、そうなんだ」
「ちなみにアルアジフの写本の名前はネクロノミコン。ギリシャ語版、ラテン語版など、言語の違うものが何冊もあるらしい」
「つまり本当を写本であるネクロノミコンに偽装し、オマケに音黒乃魅魂と漢字表記にすることで偽装を二重にしたわけね」
「まあ、そうなるな。しかし、アルアジフをミスカトニック大学付属図書館から流失させたものの思惑までは、ゲーム仲間も知らないって言っていたぜ」
最凶の魔道書アルアジフを保管されていたミスカトニック大学付属から流失させたものの思惑までは、マサル叔父さんのゲーム仲間も知らないようだが、流失させたものは恐らくは巷を騒がせるための愉快犯的なんじゃないかと思う。
なんだかんだと、オカルトな話題は人を惹き付けるものだしな。
「ウフフ、何はともあれ、その本のおかげで君に再び巡り会えたわけだしね。ボクにとっては、まさに堯幸ってヤツなのだわ☆」
「う、うお、なんだ! なんだ、お前は~ッ!」
「ちょ、いつの間に⁉️ むう、頭に山羊のような角が生えた女のコが、いつの間に俺の部屋に!」
な、なん……だと⁉️ 頭に山羊のような角が生えている奇妙な女のコの姿が、いつの間にか俺の部屋の中に!
むう、小柄だがスタイル抜群で容姿端麗な俺と同世代の赤毛の女のコだ。それに今はまだまだ季節が冬だというのに、真夏のビーチを連想させる黒いビキニ姿だ!
そ、その前に、どこから入り込んだぁ、こいつ!
「ボクの名前はアルカルネ。夢魔界という異世界からの来訪者であると同時に、アオイくんとは前世からの付き合いがある間柄ってわけだ。ああ、前世の君からアカネと呼ばれていたから、そう呼んで欲しいな☆」
「前世の俺……だと⁉️ むう、あの男も前世がどうとか言っていたな」
「あ、言い忘れていたよ。ボクは君は前世の君の恋人だったということを☆」
「な、なんだってー!」
「こ、このっ! いつの間にか彼女なんてつくったんだ! 羨ましいぜ、このぉ!」
頭に山羊のような角を持つ奇妙な女のコことアルカルネと俺の関係は、前世からの繋がりがある恋人だと⁉️
むう、物言いから考えて、前世の俺の友であったと自称していたあの黒ずくめのアメリカ人ことレオナルド・ナイの仲間なのでは⁉️