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誘惑する狼  作者: ミノル
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怯えた依頼。

 「夫が、優しすぎて、怖いんです」


 気弱な女の呟きを思い出していた。そんな俺の回想の邪魔をするように、車の中でポップな音楽が掛けられた。懐かしいアイドルの随分昔に流行った曲だが、俺の助手のお気に入りの音楽だ。


 狼がきたぞ…狼がきたぞ♪キャ~キャ~♪


「マサコ、お前、ほんとにそれ好きだよなぁ」

「いい曲だろ?ノリが良いんだよ」


 マサコは黒髪で少しクセッ毛のボリュームのあるロングヘアを後ろで括っている、ポニーテールっていうのかなぁ?こいつの目はちょっと色素が薄くて満月みたいな変わった色をしている。女子にあるまじき三白眼だけど俺は嫌いじゃない。


 こいつは化粧っけがあんまり無いんだが、若いんだし、もうちょっとお洒落すればいいのにと常々思っている。ちょいちょい化粧くらいしろよと言うと、煩いと言われる。唇だけは俺があげた真っ赤な口紅を付けて、浮きに浮いてるが、これで文句ないだろと言わんばかりだ。


 服装は白いカッターシャツ、黒いスーツスカート、黒いピンヒール。最近までこういう靴は履いたこと無くて、よく踵をぶち折ってる。


 マサコの服装の中で一番好きな所は、薄手の黒いストッキングで、引き締まった脚を包んでいる。そこだけは、なんとも色っぽい。マサコは高校の頃に短距離走者だったもんだから、ガッチガチの筋肉質なんで、俺の性癖は相当特殊なんだと思う。そこを褒めるとマサコには変態と罵られる。マサコの口の悪さは折り紙つきだ。


「おぃ、アイツ出て来たぞ!」


 運転席に座って、双眼鏡を覗いてたマサコが嬉々として俺を小突く。


「やっとかぁ~長かったよなぁ」


 助手席に座ってた俺は、待ちくたびれた感じでスマホのカメラを構えた。車の中から写真を撮る。正直、最近のスマホカメラは普通の下手なカメラより性能がいい。


 なんだ、一人か…。時計を見ると夕方の6時20分頃に入って8時10分頃に出てきた、2時間もしてたのかよと呆れる。


 ラブホテルの出口から中肉中背の髪を短く刈った、背の低い男が出てきた、入るときと同じく、大きな旅行用のスーツケースを持って出て来た。一仕事終えたような、なんとも清清しい顔をしている。


 全くいい気なもんだぜ。


「なんで、あいつ一人なんだ…?」


 マサコが訝しげに眉を潜ませた。


「時間差で出ようって腹じゃねえか?」


 浮気カップルだと、よくあることだ。


 俺とマサコは浮気調査で一人の男を追ってる。


 宮旗みやはた 信二しんじ49歳。会社員。


 探偵業なんてものは大半の依頼はこれだ。


 数日前に奥さんが事務所に訪れ、夫の素行を調査して欲しいと悲痛な感じで頼んできた。真新しい銀行の名前が印字された、茶色い封筒に入った新品の現金を渡された。うちの興信所は前払い制で、封筒の中身はモロモロコミで14万。


 こういう依頼は珍しくない、というか大体コレか迷い猫探しだ。

 

 しかし、こういった依頼をしてくる奥さんは、どちらかというとプライドを拗らせたタイプや、メンヘラを拗らせたタイプが多いんだが、この奥さんは、そのどちらにも当てはまらない感じがする。


 薄化粧で、地味な感じで、長年着てるんだろう薄い紫の女性らしい、ゆったりとしたカットソーと、黒いロングスカートを着ていた。病的に細すぎるほど細く、生贄に捧げられる鹿のような、全てを諦めきったような、疲れた表情の女だ。最後に怯えたように呟いた言葉が妙に心に残っている。


 「夫が、優しすぎて、怖いんです」

結城ゆうき 飛鳥あすか

23歳。O型の獅子座

8月5日生まれ

茶髪フワフワ系イケメン。


島津しまづ マサコ

18歳。A型の乙女座

9月10日生まれ

黒髪ポニーテール。言動が男のように荒っぽい。


宮旗みやはた 洋子ようこ

夫の浮気調査をする妻

夫を愛しているが、優しすぎて恐怖を感じている。

大人しく鹿のような女。


宮旗みやはた 信二しんじ

浮気調査される夫

神経質そうな男。

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