亜人のいる世界其ノ参
結構間空いてしまいました。
すいませんでした。
1
暗かった世界に光が差した。
目を開けると真っ白な物が一番最初に映った。
その少女は白を基調とした服を身にまとい、肌も白くて、何より雪の様な真っ白な髪が印象的だった。
白、とても明るくどことなく存在が儚げであり、掴んでいないとすぐに消えてしまいそうなそんな印象を受けた。
「おはよう、初めまして。」
少女はそう、一言言った。
2
「......誰?」
「あーそっか。自己紹介しないと。」
少女は背を向け数歩歩いたあと180度回転して、こちらに向き直った。
「私の名前はアイ。よろしくね。」
「え、いや、その.......」
ここは名前では無く貴方がどういったご要件で私を殴ったのでしょうかというのを知りたかったのですが。
心のなかでそう思ったが、人と、それも異性を相手に喋るという行為については経験値不足なので、それが言葉として口から出ることは無かった。
「えーと、ここは好きな食べ物とか、趣味とか言った方が良かったかな?」
唐突に自分の自己紹介の改善点について聞いてきた。
「まあ.......いいんじゃない?」
なんと言っていいかわからず適当な感想を述べた。
「やっぱり、年齢を先に言った方が重要な情報ってことでより信頼を持ってもらえるのかな?」
......いや、知らねえよ。
年齢最初に言うとかアイドルかよ。
俺に聞かないで欲しい。
「まあ、年齢とかはあんまり女の子が言うもんじゃないから言わなくていいんじゃない?」
「そっかあ。やっぱり、年齢を言うってのはちょっと恥ずかしいよね。なるほど。」
しばらく黙り込み、何かを考えていたようだがその数十秒後。
「よし、とりあいず私の中で反省点とかまとまったからもっかいやってみる。」
どうやら自分の自己紹介がお気に召さなかったようだ。
すると、アイは歩き出して、角のすぐ隣まで行った。
そして拳を握り、こちらへ近ずいてきた。
「いや、そっからやり直すんかい!」
そこのシーンは是非ともカットして欲しいものだ。
「じゃあ、ここは省略して話しかけたとこからにするね。」
「いや、やり直さないでよろしい。自己紹介の下りはもういいよ。名前は分かったからなんで俺を殴ったのか教えて。」
「殴るなんて物騒な言葉使いね。私はちょっと叩いた程度なんだけど。」
まるで殴ると叩くを一緒にしないでよとでも言いたげなセリフを吐いてきた。
「いやいや、あれは叩くのというレベルの威力じゃないし、そもそも拳を握り締めた時点で既に殴るフォームだ!」
「どうせやるんだったらしっかりやり通すべきだと思って喝を入れる感じなイメージですっかりへこんでた君が元気出るかと思って。」
「殴られて元気出るとかまるで俺がドMみたいじゃないか!誤解招く言い方を訂正しなさい!」
「現にこんなに大声で突っ込める程元気になったんだから良かったんじゃない?」
「それは.......」
反論を言いかけたがその言葉を飲み込んだ。
さっきから殴られてから突然の出来事ですっかり忘れていたのだがなんと自分の腕と足が戻っていたのだ。
俺はその感覚を懐かしむかのように戻ってきた体のパーツに触れた。
「腕と、足も戻ってる。さっき消えたはずなのに。」
「だから、私が助けてあげたの。」
助けた?こいつはただ殴って来ただけである。
それと俺の体のパーツが戻ったこととなんの関係があるのか分からず首をひねった。
「君、この世界の人じゃないでしょ。」
「何故それを?!」
もしや、こいつが俺を召喚した人物とやらなのだろうか。
それならば最初からスタート位置にいてそこで説明でもしてくれたらこんな混乱する事は無かったのだろう。
それは召喚士として致命的なミスではないのだろうか。
しかし、憶測で物事を言うのはあまり良くない。
割と合ってるつもりで言ってみたものが外れると結構恥ずかしいものだ。
なのでここは口を噤むことにした。
「えっと、一度に全部話すと混乱してら私も話が上手くまとまらないだろうから順序だてて説明するけど、ここで立ち話してるのもアレだし、とりあいず休める場所知ってるからそこまで移動しながら話すね。」
と、アイはそう言って歩き出した。
初対面でなおかつ暴行に及んできた人物に対してそんなホイホイとついて行っていいものなのか。
しかし、本音を言うと結構顔可愛いじゃないか。
よく考えれば女子と喋った事などいつぶりであろうか。
無論小学生の頃などは男女特にそんな違いなど気にもせず、無邪気に戯れていたものの、時間とは残酷なもので、中学になった頃には思春期到来真っ盛りな自分と全くモテない悲しき宿命により、ほとんど異性とは会話らしい会話をした事がない。
是非とも来世は美少女か、イケメンで性格よしのチート能力を持って生まれてきたいものである。
つまり、美少女のお誘いなのであらば、断りたくない。
しかし、状況が状況だ。
デート詐欺たるものも存在するご時世、あまり関わっては危険なのではないだろうか。
しかし、彼女はそんな悪人には見えない。
何となく、1人にすると消えてしまいそうで、一緒ににいてあげないとダメなんじゃないか。
そんな儚げで守ってあげたくなる様な存在。
一人にしちゃ、ダメだ。
「......シュウだ。」
「え?」
「俺の名前だよ。まだ名前、言ってなかっただろ。」
俺は自分の名前を口にした。
すると、アイは笑って答えた。
「シュウくんか、宜しくね。」
「あ、うん......よろしく。」
何となく気恥ずかしくなって目線を逸らした。
すると、アイはこちらに手を伸ばしてきた。
「なに?」
「ん、握手。」
な、握手だと。
会ったばかりの女の子と握手という形であれ、手を繋ぐという行為をするのは少し恥ずかしい。
「仲良くしようって時はこうするんでしょ。」
「いや、今手汗凄いし.......」
「私、誰かとこうやって握手するのが夢だったの。」
「夢小さ!?」
アイは早くしてよと言いたげに更に手を伸ばした。
俺も降参して、アイの手を取った。
「改めてよろしくね、シュウ。」
「何で急に君付けやめたの?!」
「え?握手したからこれでお互いの距離は縮まったからそう呼んだほうがいいでしょ。」
何だこの少しズレた感じは。
多少の羞恥心というのがこいつにはないというのか。
「まあ、いいやこれでアイの夢が叶ってくれるなら俺の手位いくらでもくれてしてやるよ。」
すると、アイの顔がぱっと明るくなった。
「ホントに?ありがとう!シュウはいい人だね。」
「いい人?それはもっと俺みたいな人じゃなくて、もっと気の利く人に取っておいた方がいいぞ。」
「でも、私お友達が出来て凄く嬉しいよ。」
友達。
そういえば俺には友達と呼べる人などいたのだろうか。
別にボッチという訳では無い。
ただ友達はあまり作らない主義であった。
詳しいことについては今語るのはよそう。
「そうだな。アイは俺の友達だ。」
寄り道が多くなってしまった気がしたが、再び俺、否、俺達は単調な道を歩み始めたのであった。