亜人のいる世界其ノ壱
続きです。
相変わらず文章稚拙です。
コメントなど書いていただければ励みになります。
1
......呼吸が荒い。
自分で聞こえる程の吐息がこぼれる。
心臓を握られているような胸の苦しさを感じながら、もう一度前を見て目を見開く。
「大丈夫か?お前?顔色悪いぞ。」
そんな献身的な言葉をかけてくれる人物が悪者なはずがない。
それは分かっている。
しかし、その容姿は異質と表現するしかないだろう。
目の前にいる人物からは、異臭が漂い、粘液質の唾液を分泌しているその大きな口と、そこから低い音を立てながら垂れるその長い舌、虚ろな目と深緑の鱗に覆われ体長2mはあるその体つき。
これを俺はトカゲという名前で、見た事のある見た目をしていた。
「はっ......お、お前......な、なんだよ?に、人間じゃ......ないのか?」
ただ、その対象から感じるのは恐怖以外の何物でもない。
俺は後ずさりをしようとしたが、なにかにつまずいて後ろへ倒れ込んだ。
トカゲ男はにじり寄ってくる。
「ほお?お前は、俺の事が何に見える?人間か?それともそれ以外のなにかか?」
そんな俺のことはお構い無しに、問いかけてくる。
「まあ、おおよそお前が見ている俺の姿は大体予想がつく。しかし、お前も人のことは言えないだろ?」
「は?お、俺は人間だ。」
奴の言っていることが理解出来なかった。
しかし、その疑問はトカゲ男が懐から取り出した手鏡を見たことですぐに解消した。
「これじゃあ、どっちが人間なのやら。」
鏡には、何も映らなかった。
俺という存在が。
2
少し、遡ろう。
俺は朝に目が覚めた。
そして、気分が悪かったので、外の景色でも見て気分転換をしようとカーテンを開けたのだ。
しかし、そこは見慣れた景色ではなく、石造りのレンガで構成された家々が立ち並び、道行く人々は、皆、コスプレでもしているような格好をしていた。
そう、言うなれば、異国の古い時代の景色、わかりやすく言えばRPGに出てくるような街だった。
「な、なんだこれ?」
最初俺は何かの祭りだと感じたのだが、俺が15年生きてきた中でこの街にはそんな祭りは存在しないはずなのだ。
とりあえず俺は、事態を把握するためにも着替えて外に出ることにした。
しかし、この時に俺は気づくべきだったのだ。
家の中も少なからず多少の変化があったことに。
一応いつもの制服に着替えたのだが、外がこんな状態だし、もしかしたら今日は学校休みかもしれない。
わーいやったあ。
と、無理矢理ポジティブな思考へと繋げる。
だって朝起きたら知らない場所にいた。
何の罰ゲームだ。
しかし、文句を考えながらも実は最初の方で可能性の一つとして、この状況の答えが浮かび上がっていた。
「もしかして、これは異世界召喚というやつか。」
異世界召喚。
それは、アニメやゲーム、ライトノベルなどで数多く描かれてきて、もはや一般常識として、定着してきた現象である。
パターンとしては、異世界が危機的状況に置かれていて、その窮地を打破するために、別世界から勇者を召喚するというのがオーソドックスである。
しかし、俺の現在地は自宅であり、目の前にローブを着た男もいなければ、巫女服風の衣装を身にまとった美少女の姿も見えない。
猫っぽい外見をした妖精か精霊でもせめていてくれれば良かったのだが、ここには魔法陣の形跡すら存在しなかった。
「あれー?ちょっと召喚士さん?なんか失敗してません?」
こうなれば自分だけに聞こえる不可解、奇天烈、摩訶不思議な声でも期待したが、せいぜい雀の鳴き声くらいしか聞こえない。
「とにかく、なにか情報が必要だ。」
この出来事の関係者の協力は期待できそうにもないので、俺は、とりあえず召喚士(美少女希望)を探すことにした。
え?最初と目的が違うって?何を言う、美少女を探すということ以外に一体どんな大事な事があるというのだ。
靴を履き、玄関を出て鍵をかけた。
「行ってきます。」
誰に言うというわけでもないが、すっかり習慣となった挨拶を言って、外へ歩き出した。
しかし、それはたったの3秒でその歩みは止まった。
「なんだ?アレ?」
そこには大きな塔がそびえていた。