表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第1話

相川光はバスから窓の外の景色を眺めていた。山陰の冬は東京の それよりも寒く感じられた。バスの中もどこか寒々と見える。バスのエンジンの音だけがバスに響き、窓の外も枯れ木しか見えなかった。


光は努力をしない男だった。何となく勉強して何となく遊んできた男だった。都内でも有名な大学への推薦入学が決まり、何をするわけでもない秋を過ごしてきた。そんな生活の中、ある問いが光の中に生まれた。


「このままでいいのだろうか。僕は何のために生きているのだろうか」


この問いはどんどん大きくなり、とうとう何の予定もない冬休みが始まった。自分を探したい、という思いは抑えられなくなっていった。ついに、光は自らの住む街から遠くへ旅に出ることを決意した。


光は山陰に来ていた。年末の山陰は東京よりもはるかに人が少なかった。誰もいない。光は誰もいないところで自分を見つけることができるのだろうかと考えた。この旅は失敗ではないかと、ため息をついた。そんなことを考えているうちにバスが停車した。


「終点、倉野駅に到着です」


光はバスを降りた。駅前で唯一営業している売店で納豆巻きと緑茶を買い、寂れた駅に入った。そして三〇分待って電車に乗った。電車もバスと同様にガラガラだった。光がボックス席に座って出発を待ちながら納豆巻きを食べていると


「おいしそうじゃん。一個ちょうだいよ」


と声をかけてくる男がいた。光と同い年か少し年上に見える男は図々しく光の正面の席に座って話を始めた。一人旅?高校生なの?と光にたずねるその男は、いかにも明るく元気な青年という感じで光とは正反対の性格に見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ