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第6話 コミュ力おばけ

皆様のおかけでジャンル別日刊ランキングに入ることが出来ました……本当にありがとうございます。

これからも頑張らせていただきますので、ぜひ拙作を暇つぶしがてらにでもお読み頂けると幸いです。


ではどうぞ。


 「楽しくない」

 

 ぶっちゃけた事を、ライトはついに口から漏らした。

 それは、ライトが辻ヒーラー活動を始めて一週間と四日がたった日だった。

 

 そう、辻ヒーラープレイはまさに需要と供給に見合いつつ、自分の願った条件も叶える我ながら恐ろしいほどに完璧な作戦だった。

 が、ここにきて致命的な欠点が浮き彫りになった。

 

 そう、この作業――すっごいつまらないのである。

 むしろ何が楽しくて戦闘するわけでもなく街の外に出てプレイヤーを探してヒールをかけるというライン工みたいな事をやっているのだ。馬鹿じゃないのか。

 

 一度冷め出すと止まらないのは昔からの性分で、ライトは段々ともうこれ一ヶ月停止してもいいから作り直したほうがいいんじゃね? と思い始めるくらいには現状に辟易とした思いを感じ始めていた。

 

 こうなるともう惰性でしかなく、やる気もないのにダラダラと同じことただこなす。

 モチベーションの高さがあの頃とは雲泥の差だった。

 

 「どうしよっかなぁ」

 

 女性集団に連れて行かれてから妙に馴染んでしまった喫茶店で一人、行儀悪くアイスティーにぶくぶく空気を送り込んで悩んでいると、

 

 「ちょっとここ、いいかな」

 

 そんな言葉と共に、目の前の空席が人影で埋まった。

 

 「ぁ――」

 

 いいかなって! 答えいう前に座ってんじゃねーよボーケ! 死ね!

 という悪態の意味を込めた睨み(のつもりではあるが眉が下がっているため怯えているようにしか見えない)を利かせ――る事は、そのプレイヤーの顔を見た瞬間に失敗した。

 

 そこに居たのは、同じ性別だというのに見惚れてしまうほど整った顔立ちのイケメンだったのだから。

 

 ま、眩しい……! 何だこのイケメンオーラ! 

 

 「あれ、もしかして誰かと待ち合わせとかだったかな?」

 「ゃ、そゆわけじゃ……なぃ、ですけど……」

 「そっか。なら良かった。君も一人なのかな? 実は僕も一人でね。一人で座るのも何だと思って声掛けさせてもらったんだ。いやーよかったよ。是非宜しく。あ、僕の名前はエミリオって言うんだ」

 「お、おぉ……」

 

 なんだこのリア充という単語が服を着て歩いてるばりにコミュニケーション力が高いイケメンは……。

 嫉妬することさえ忘れる怒涛の勢いに、ライトは思わずのけぞった。

 後光が……! イケメン特有の常時発動型のバフが見える……!

 

 「君の名前は?」

 「ぇ、ぁ、や、その……ら、ライトって言います」

 「へぇ。ライト君か。いい名前だね」

 

 きっとここでウンコ太郎と名乗ってもこう返したのではと思えるほど爽やかな笑顔でイケメン――エミリオはそう言う。

 

 「ライト君はFLO初めて結構立つのかな?」

 「ぁ、や、まだ一週間と少しとかで……」

 「へぇ! そうなのか。それは偶然だね。僕もちょうどそれくらいでさ。実はこれまでゲームとかはあんまりして来なかったから……」

 

 流石のコミュ力と言うべきか、どのステータスよりもきっと最低値であろうライトのコミュ力を物ともしないエミリオのトーク力に、ライトはいつの間にか会話に引き込まれ、気づいた時には一時間もぶっ続けで話してしまうくらいには心を開いていた。

 

 「ホントびっくりしたよ……。急に目の前に現れるんだから。それも超イケメンがだぜ? 話してみればこれ以上ないくらい良い奴だし、嫉妬する気も失せたわ」

 「はは。そうおだてないでよライト君。そんな大した人間じゃないんだから」

 「お前が大したやつじゃなければ俺の価値ってプランクトンにも満たないことになるから大した奴って評価を甘んじて受け入れてくれ……頼む……」

 「そこまで自分の評価突き抜けてる君も割と大した奴だと思うよ……本当に」

 

 二人揃ってサンドイッチを頼み、それを完食する頃には既に現実世界では夕方になっており、FLOでも空の端が赤く染まる程度には日が暮れてきていた。

 

 「今日はありがとうライト君。おかげで楽しかったよ」

 「そういうことさらっというからお前はイケメンなんだよ。……その、エミリオ」

 「ん? なにかな」

 「……ありがとな。楽しかった」


 ライトが気持ちのままにその思いを伝えると、エミリオはきょとんと目を丸くさせ、少し経ってからクスクスと様になる笑い声を漏らした。

 

 「ふ、ふふ。ライト君――いや、ライトって人たらしの才能あるかもね」

 「ねーよ。そんなんあったら今頃こんなゲームやる暇もないくらい充実した生活送ってたわ。俺がたらせるのは不平不満と愚痴だけだ。なお部屋にひとりぼっちの時に限る」

 「そうかなー? まぁ本人がそう言うならそれでいいけどさ。じゃあ僕は戻るけど、ライトは?」

 「俺は――もう少し、ここにいるかな」

 

 本人には言えないが、本当はもう少し味わっていたかったのだ。こんなふうに会話できる日々と言うのを。

 とても楽しかった。だからこそ、今はとても空虚な気持ちで胸がいっぱいだった。

 

 「それじゃあ」

 「ああ」

 

 エミリオがコンソールを操作してログアウトボタンを押そうとしたその瞬間。

 

 「あ、そうだ忘れてた。ねぇライト。明日からパーティー組んで一緒に冒険しようよ」

 「あぁ、了解」

 「うん、ありがとう。じゃあね」

 「おう」

 

 そう言い残して、エミリオの体が無数のポリゴン片となって空へと立ち昇って行く。

 

 「はぁ……」

 

 行ってしまった。 

 これで明日からはまたぼっち生活に元通り。

 学校に行って、帰って、FLOを開いて、エミリオとパーティーを組んで……。

 

 「ん?」

 

 あれ? そういえばさっきなんか変なやり取りがあったような。

 

 ピロン!

 そう思った矢先、ライトの耳にシステム音が届いた。メニューを開いてみれば、メールの欄に新規の着信を表すビックリマークが。

 

 何だ、運営からの通知か。

 既読にするために開いみると。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ※非フレンドプレイヤーからのメールです。

 

 Message:明日から宜しくね!

 from:エミリオ

 

 明日のパーティーは17時にまたここで集合ってことで問題なかったらお願いするよ。

 遅刻しないでよ?

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 ちょうどそのメッセージが開かれているのと同じ時間。アグルの街中で、奇声を上げるプレイヤーが出たと少しだけ話題を呼んだ。

 

 一体誰のことなのか、ライトには分からない。

 全くもって、分からなかった。

 

そろそろゲーム要素出していきますのでもう少々お付き合いくださいませ。


ご覧いただき誠にありがとうございます!

もし宜しければ拙作にご感想、ご評価、ブックマークをよろしくお願いいたします!

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