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第3話 え? なんで?

前回の第2話を、早速第3話と書いてるガバを発見。初日から酷いですね……。


この小説に関しましては、一日一回は更新できたらなーと思っています。

では、どうぞ。


※29/9/5 ルーの一人称を『ウチ』→『ボク』に変更。

「始めまして。リリーって言います」

「私はハルです」

「ボクはルーって呼んでねー」

「……シャル」

「あたしは奈々でいいわよ。噂の辻ヒーラーさん」


 そんなこんなで、美少女達のPTを(半強制的に)助けたらなぜか街の喫茶店でお茶することになりました。

 

 なるほど、わからん。

 

 「あっ、ええと、はぁ……?」

 

 ライトは思考停止状態に陥りながらもなんて返したらいいかもわからずに、そんな曖昧な返事を返した。

 

 「その、ごめんなさい。どうしてもあなたに興味があるって聞かない人がいて」

 

 リリーと名乗った金髪の美少女が上目遣いにそう謝ってきた。わざとやってんのかこの女。勘違いしそうになるからやめろ。是非やめろ。

 

 「いいじゃない別に。辻ヒーラーさんもこんな可愛い女の子囲まれてお得よね?」

 

 奈々という名前のビッチ系美女の言葉に、お得じゃねーよ現在進行形で精神おろし金でおろしてる最中だバーカ。お前いつかしりとりで最後の文字が全部【ほ】で回ってくる地獄を味あわせてやるからな。

 

 と、勿論口には出せる訳がない罵倒を心の中でつぶやいた。

 

 というか。

 ずっと気になっていた事を、勇気を振り絞ってライトは聞いた。

 

 「あ、あの、さっきから噂とか何なんですか……?」

 

 そう尻すぼみになりながら聞くと、その問が意外だったのかきょとんとした顔で女性陣は顔を見合わせた。

 

 「あー。本気で知らなかったのね」

 「素であれってなかなか大物だねー」

 「あ、あの。すいません。本当に、うちのメンバーが不躾で」

 

 本当だよ。という本音は毎度のごとく仕舞い込み、ライトは自分そっちのけで始められた会話をよくよく聞いてみた。

 

 その結果。

 

 「……どういうことなの」

 

 目立たない為にやっていたはずのプレイだというのに、何故か変にこじれて若干知名度が出ていた。

 

 確かに有名プレイヤーとか憧れるよ? でもこんな形じゃない。断じて違う。

 

 「と言うかあなたはどうしてそんなプレイスタイルを? 普通にしていればこんな話には……」

 

 ハルという名前の和風美人系の女の子にそう言われ、全くそのとおりだと思う。思うが、

 

 「お、俺はその、せ、戦闘はしたくなくて……。で、でもモンスターとかは見たくて……」

 「はぁ。であれば普通にPTを組んでヒーラーをやればよいのでは? ヒーラーは現時点で頭数が足りていませんし、引く手数多ですよ?」

 「……コミュ症なんで……人と会話したくないんです……」

 『あー』

 

 全員が納得の声を上げた。

 うっさいわ。

 

 「それでそんなプレイスタイルに……ぷっ」

 

 ビッチが吹き出してた。

 

 「な、なんすか」

 

 確かに一般的なプレイスタイルとは自分でも思えないが、かと言って馬鹿にされる覚えもない。


 ライトは激怒した。かのビチ暴虐の女を論破せねばならぬと決意した。

 

 「あ、ごめんなさい。悪気はないのよ。ほんと人それぞれ何だなって。あなたのプレイスタイルも、私はありだと思うわよ。見てて楽しいしね」

 「う……」

 

 そう言われると弱いライト。ちょっとビッチは言いすぎだよね。というか普通に美人さんじゃんとか思い直すくらいにはチョロかった。軽いな、決意。

 

 「という訳で、私から一つ提案がありまーす。――ちょうど私達のパーティーにいないヒーラーを、ここで確保しちゃわない?」

 「あ、賛成賛成ー」

 「ちょっと!? 奈々さんも、ルーちゃんもそんな勝手に! あ、いやあなたが悪いわけじゃないですからね!? 嫌とかそういうのではないですからね!?」

 「だいじょうぶです」

 

 なんでそんな話題になったかは分からないけど貴方が俺の事が嫌なのはわかっているので、気にしないでください。

 ライトは涙を流さぬように上を見ながら即答した。

 っべー。っべーな。空が青いぜ。

 尚、喫茶店の天井の色は白だった。

 

 「まぁしかし、建設的ではありますね。先ほどの戦いもヒーラーがいるだけであれほど楽だとは思いませんでしたし」

 「そうでしょ? ほら、それに彼だったらそういうの(・・・・・)もなさそうだし、ていうか絶対無いだろうし。最高じゃない?」

 「そ、そんなのわからないじゃないですか!」

 「へぇ、じゃあ聞いてみましょうか? ねぇ、辻ヒーラー君」

 

 奈々がライトに向かって声を掛けた。その所作はまるで自分が綺麗なことをよくわかっているかのような、いや、実際にわかっている人間でなければできない人の目を引く物だった。現に思わずどきりと鼓動を弾ませてしまいながらも、相手の思惑通りライトの視線は奈々に釘付けだった。

 

 そして、ピンク色の柔らかそうな唇が動く。

 

 「私と付き合いたいと思う?」

 「あ、いえ全然」

 

 即答だった。そもそも100%当たらないけどこの宝くじ挑戦してみる? と聞かれてやるバカはいないだろう。ライトからしてみればそれと同じである。

 

 「な、なにかしら。間をおかずのノータイム返答はそれはそれでくるものがあるわね……!」

 「やーいやーい。奈々振られてやんのー」

 「……ぷぷっ」

 「ルー、シャル。あんたら覚えておきなさいよ。具体的には明日」


 随分と仲がいいのか、5人はそんなやり取りを交えながら談笑を続けていた。

 美少女達が微笑みを浮かべながら語り合っている姿は、それだけで良い物がある。スクショをとったら盗撮対策のためにも音が出るのを事前に知っているライトは知っていたことに対して安堵を覚えつつ心のフォルダーに今の光景を収めた。

 

 「まぁ言いたいことはあるけど、これならリリーも文句ないでしょ? あんたが心配するようなことにはならないって」

 「……本当に、奈々さんはいつもそうなんですから。仕方ないですねぇ、もう」

 

 朗らかな雰囲気を楽しみながら、5人が談笑しているのを尻目にライトは穏やかな気持ちで空になったコップを置いて席を立った。

 

 「そ、その話がまとまったようでその、何よりです。そ、それじゃあ……えっと、俺はこの辺で」

 「えぇ、そうね」

 「ご迷惑おかけしてすみませんでした」

 「またねー」

 「……乙」

 「お気をつけて」

 

 一通り、やり取りを終えて一礼してからお店を出る。

 

 ふー。風が心地いいぜ。

 

 …………。

 

 『っておかしいでしょ!?』

 「うわぁ!?」

 

 肩をぐわっと捕まれ、ぐりんと強制的に振り向かれた先にあったのは先程の彼女たちの顔。

 

 な、なんで……?

 理解できないライトがきょどきょとしていると一歩前に奈々が進み出た。

 

 「なんでさっきの会話からあんた普通に外出たの!? おかしいわよね!? あまりに自然すぎて見送りかけたわよ!!」

 「えっと……まだ駆け出しなのでツボとか買うお金はないんですけど……」

 「どういう会話の飛躍!? あんた本当にさっきの話聞いてた!?」

 「え? ヒーラーを見つけるって話です、よね……?」

 

 この人はどんだけ俺を馬鹿にするつもりだろう。そんな数十秒前のことを忘れるわけがなかろうに。

 ライトは段々イライラしてくるのを抑えつつ会話を続ける。

 

 「そうよ! んで今そのヒーラーを探してるの!」

 「? はぁ、そうですか……頑張ってください。じゃ」

 『待って待って待って待って!!』

 

 全員からストップコールが入る。なんやねん。

 

 「どういうこと!? 下手な乙女ゲーの最難易度攻略キャラのほうがよっぽど楽なんだけど!? なんなのこの難攻不落感!」

 「……あ、あのちょっと街中でそういう乙ゲーとか個人の趣向にまつわる話を大声でされるのはマナー的にも……」

 「あんた実は私を煽ってんのよね!? そうなのよね!?」

 「?」

 『うわぁ……』

 

 全員からすっごい半眼で見られた。全く理解できない。

 

 「奈々さん。ここは私にまかせてください」

 

 そう言って次に前に進みでたのはリリー。彼女はどこか決意を灯したような瞳でライトを見つめた。

 

 「くっ、悪いわねリリー。どうやら私には無理みたい。任せたわ」

 「はい。……あの、辻ヒーラーさん」

 「は、はい」

 

 なんでだろう。何故、天下の往来で美少女が気恥ずかしげに頬を染めながら、それをどこか緊張した面持ちで眺める女子四人にも見詰められるという罰ゲームに発展したのか、ライトには本気で分からなかった。

 

 「あの、先ほどのヒーラーの話なんですが」

 「は、はい」

 「その、私達のPTに入ってほしいヒーラーというのは、あなたの事なのです。如何でしょうか?」

 「ぁ、絶対嫌です。死んでも無理です」

 「」

 『そしてこの後に及んでバッサリ行った!?』

 

 笑顔で固まるリリーさんと、それをやべーよコイツ、という目で見てくる四人の目に逆にこっちが驚きながら視線を返した。

 

 「何言ってるんですかこちとら小学生の集団の圧にさえ負けて道路の脇を歩くコミュ症の鏡ですよ。貴方達みたいな美少女の集団と一緒になったら周りからの視線で死ぬ。確実に死ぬ」

 「ちょ、ちょっとサラッと褒めるのはやめてほしいですがなかなか凄いことを胸張って言いますね……」

 「ここまで来るとちょっとした風格あるよね。その道のプロ的な」

 「……ぼっちキング?」


シャルと名乗った女の子のストレートな言葉に、思わずライトは膝を付く。


 「あ、崩れ落ちた」

 

 ううう、うるせえ!

 俺だって本当は友達欲しいよ!

 でもできないからしょうがないじゃん! 最近一人遊びのクオリティーだけ上がってることに気付いててもやめられないんだよ!

 

 ライトが地面を叩きながら涙を流していると、ふと手が差し伸べられる。

 

 優しい微笑みを浮かべたリリーだった。

 

 「辻ヒーラーさん。いいんですよ。それでもいいんです。人間はいつだって変われますから。だってほら、すでに貴方はもう一人じゃないでしょう?」

 「リ、リリーさん……」

 「ですから手始めに、私達のPTで」

 「あ、いや、ですからそれは無理です。絶対に」

 「」

 『あぁもう見てられない!』

 「?」

 『そこで不思議そうな顔をするな!』

 

 全員に一斉に怒られた。なんで?

 

 ともかく、そこで『もうやです。おうちかえる』しか言わなくなったリリーを四人が慰めながら宿屋へととぼとぼ消えていく。

 

 なんでかは未だにわからないが、原因が自分にあることだけはわかったライトは、フォローのつもりで「大丈夫ですか? PTの件は無理ですけど、その、出来る限りのことは手伝いますから元気出して下さい。PTの件は無理ですけど」と言ったら泣きながら走って行ってしまった。

 

 元気でたのかなーとライトがリリーの走り去る方向をぼんやり見ていると、それを見ていた奈々が、

 「最後の最後で見事にトドメ刺したわね……」という何かを恐れるように震えた声で呟いたのが、やけに耳に残る一日だった。



ご覧頂き誠にありがとうございました。

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