第2話 コミュ症には毒な出会い
前回からそうでしたが、掲示板は色々省いて描写してます。本来であればこんな綺麗にまとまってるはずはないのですが、都合上こんな形になりました。リアリティーに欠けて申し訳ありません。
では、どうぞ。
【風呂】FLO初心者雑談板【入りたい】 part9
・ここは雑談板です。
・好きな話題で盛り上がりましょう。
・マナーのない発言や、暴言などは通告対象になるので気を付けましょう!
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652:ダーク
あ~、戦闘キッツい。誰か助けて
653:カロリー
安心しろ。お前だけじゃない(笑顔を浮かべながら白目)
654:大佐
まじでこんなきっついとは思わなかったよな。精神的に弱い奴だと即座にダメになるくらいには恐怖あるし。なんでレーティングついてるのかと思ったらそういうことか、と理解した。
655:菜々
>>654 ピチピチの24歳でも余裕でトラウマになるからレーティングの意味がないわよ
656:ダーク
>>655 ピチピチかどうかはおいといてほんそれ
657:菜々
ダークね。名前覚えたわよ
658:ダーク
ヒェッ
659:大佐
掲示板一同。愛すべき馬鹿に、敬礼!(`・ω・´)ゞ
660:たけのこ
(`・ω・´)ゞ
661:カロリー
(`・ω・´)ゞ
662:柚子コショウ
おまいらw
ま、658がどうなったかは後々聞くとして最近ちょっと面白い話があるんやで。
663:くるる
面白くなかったらお前FLOでも屈指の謎スキルと言われる反復横跳び取れよ
664:たけのこ
面白くなかったらお前俺に焼きそばパン買ってこいよ
665:柚子コショウ
>>663.664 やめれw
この前道のど真ん中で死んだ顔つきのまま反復横跳びするプレイヤー見た時は流石に吹き出したけどw
んで話は戻すけど、最近アグルすぐ側のグルーカ公道の話なんだけど、変なプレイヤーが出てるって話
666:くるる
反復横跳びの時点ですでに面白い。
変なプレイヤーって……もうPKが横行しはじめたの?
667:カロリー
あ、それ知ってる。あれでしょ?
辻ヒールの。
668:柚子コショウ
せやせや。PKって言うよりむしろ逆に、辻ヒールをしてるプレイヤーがいるって話
669:くるる
へー、知らんかった。でも辻ヒールプレイヤーなんて普通にいるんでない? そんな話に上がるほど?
700:柚子コショウ
いや。その通りだよ。でも最初言った通り変なプレイヤーでさ、辻ヒールするのはいいんだけど、めっちゃ逃げるんだよね。
701:ダーク
えぇ……。
702:大佐
現時点でも話せた人も顔見た奴も一人もいないってのも相まって変なプレミアみたいのがついちゃってさ。
そのプレイヤーにヒール掛けてもらえたらレアドロップ率が上がるというジンクスまで出始める事態に。
703:くるる
本人が狙ってこれをやってるなら凄いな(笑)
704:柚子コショウ
そうだとしたら流石に名乗り出てるんでない? あれは狙ってる感じよりも素って感じがするんだよなぁ
705:菜々
704>という事はあったことあるの?
706:カロリー
どんなんだったその辻ヒールさん
707:柚子コショウ
それこそ昨日ヒールしてもらいました。
>>706どんなかぁ……うーん。
708:ダーク
そんな覚えづらいのか
709:柚子コショウ
いや、そういう訳じゃないんだけど……むしろ凄い特徴が似てるというか、伝えやすいのがあるけど言っていいのかどうなのかと言う良心の呵責の問題というか。
710:菜々
? 要領を得ないけど、とりあえず本人も悪気があるわけでもないんだし良いんじゃない?
いーえ。いーえ。
711:くるる
いーえ。いーえ。
712:大佐
いーえ。いーえ。
713:柚子コショウ
こういう時は仲いいなあんたら!
あぁもうあとから絶対責めるなよ!? 絶対だぞ!
……あの、なんというか。ヒールを使うだけあって魔術に補正のかかるローブを着てるんですよ。それも相まって顔が見えないというのもあるんですけど、最初に配布されるローブって真っ黒じゃないですか?
714:ダーク
はい
715:カロリー
はい
716:柚子コショウ
それでその、逃げるだけあってAGIに結構ステータス割り振ってるのか脚が速いんですよね。……こう、カサカサっと。
717:菜々
……あっ。
718:大佐
あっ。
719:柚子コショウ
それで俺がヒールしてもらった時、俺にヒールかけたせいか辻ヒールさんにヘイトが移っちゃって、グレイウルフにふっ飛ばされたんですよ。それはもう盛大に。
でもすぐにケロッとして起き上がってたから、即座に自分にヒールを掛けて何でも無かったんだろうけど……なんというか、生命力強いなーと。
720:たけのこ
…………。
721:柚子コショウ
特徴をまとめると、
1.真っ黒い物が全身を覆っている。
2.脚が早く、カサカサ動く感じ。
3.生命力が強い。
もう、いいだろ? ここまで言えばいいだろ!?
722:ダーク
もういい。もう休め……。
723:菜々
悪乗りした私も悪かったなーと後悔をはじめてるなう。
724:大佐
おれはなにもみていない
725:くるる
まぁ取り敢えず、次あった時に【G】って呼んでみればいいんだよな?
726:柚子コショウ
やめたげてよぉ!!!
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「うわぁああああ!! し、しんじゃうかもぉおおお!」
「ヒール!!」
「――ってあれ。あ、君ありが――ってえぇ!? なんで逃げるの!? ってはやっ! あ、わ、わぁああ!」
辻って。
「くっ、こいつらしぶといな! お前ら体力大丈夫かよ」
「や、やばいです!」
「俺も!」「こっちも!」「私も!」
「ヒールヒールヒールヒールヒール!!」
「お、おおぉ? あ、ありがとう! 良ければあんたも戦闘に、ってえぇ!? 逃げんの!?」
辻って辻って辻りまくって。
そんな辻ヒーラーとしてVRMMO生活を初めて早くも一週間が経ち、ホクホク顔でライトは自分のステータス画面を見つめていた。
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Name:ライト Sex:男
Job:冒険者
[新人天上人]
Lv:15
STR:42
DEX:21
AGI:104
VIT:76
MID:121
LUK:3
Skill:聖属性魔術:Lv3[ヒール.キュア.ブレッシング]
SP:2
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「ぐふふ……」
半分まで来た。たったの一週間で目標地点の折り返しに到着してしまったのだ。
もちろんレベルが上がるたびに必要経験値も上昇するためヒールでしか経験値の得られないライトはこれからかなり苦しい思いをするだろうが、それでも既に半分まで来てしまったのだ。
これは勝ったと言っていいのでは……?
またぐふぐふ笑いながら街を出て、辻ヒーラー活動を始める。
最近ではある程度ルーティーンと化したルートをなぞる様に歩いていると、早速目先に見えたのは相当苦戦してると思われる一団をライトは発見した。
さぁでは辻ヒーラーを始めようと意気込み近づこうとしたところで、足が止める。
いや、止めざるを得なかった。
何故ならば、視線の先のパーティーは見る限り全員女の子だったからだ。
予め言っておくと、このゲームは性別を変えることはできない。現実の性別のままこちらに反映される仕組みだ。勿論顔や体型はエディット出来るため、男に似せた女を作ることやその逆も可能ではあるが、かなーり時間のかかる作業だし、骨格からいじらなければいけないエディットは、プロの造形師並みの腕前がないとどこか不気味な見た目になる為やる人なんてまず居ない筈だ。
つまり90%以上の確率で目の前の女子集団はリアルの性別そのままであるというわけで……。
ライトは脳内でシュミレートしてみた。
『ヒール!(どやぁ)』
『え、キモ(笑)』
『何この典型的なキモオタwチョーイキってんですけどwww』
『つーか勝手にヒールとかセクハラぢゃーん。運営にいっちゃおー!』
こうなる! 頭の中にヘリウムガスしか詰まってなさそうな言葉で責められるに決まってる!!
「やめよう。よし、何も見なかった」
当たり前だ。一人二人ならいざしれず何パーティー全員が女の子とかいう俺にとって地獄みたいな環境作り上げてるんだ。
しかも見てみろ。全員とても美人な見た目をしてる。とても人間的カーストの高そうなオーラだ。あぁいう集団は常に色んな男をとっかえひっかえの酒池肉林を築いてるに決まってる。
ライトは100%の偏見を持ってして断じた。
ということで無理。どう頑張ってもあの輪に入れる気がしない。
背を向けて別のパーティーを探そうとしたその瞬間だった。
「あっ、ちょっとそこの魔法使いっぽい人ー! 助けてー!」
「ひいぃいいいいいい!!?」
思わず叫んだ。絶叫した。
やべぇ。自分からフラグ立てちゃったの? と後悔しながら『とても嫌です』という雰囲気全開にライトは声がした方向を見た。
案の定、さっきのPTだった。
その中で、声を掛けてきたであろう弓使いの赤髪の女性がこちらを見てから少し目を見開き、驚いたように言った。
「あなた、もしかして噂のっ、辻ヒーラーさん?」
噂? 辻ヒーラープレイはしてるけど、噂になった覚え無い。
何言ってんだこのビッチっぽい人。
「ぃゃ……お、おお、俺は……ちが……」
とりあえず勘違いならばさっさとお暇しようと思い、ライトは否定しようと手をワシャワシャ動かしながら説明しようとするも、あっちはあっちでグレイウルフとの戦闘であまり聞こえている様子はない。
「あーもう! 何言ってるかわかんない! とりあえず助けて!」
「は、はひぃ!!!」
結局折れた。まぁ当たり前だよね。
急いでライトは近寄り、効果範囲内にたどり着いた瞬間魔術の詠唱を始めた。
「ヒールヒールヒールヒール。ブレッシングブレッシングブレッシングブレッシング」
四人それぞれに回復とバフを施し、戦闘にも余裕ができたのか安定した動きを始めたのを見計らって、逃げるように踵を返し――。
「あれ? どこにいくのかな?」
「ひっ!?」
た所で、後ろから現れた別の女の子に逃げ場を防がれライトは立ち尽くした。
五人目、いらっしゃったんですね……。
呆然とするライトの後ろでは、最後のグレイウルフがポリゴンに帰る音が虚しく響いていた
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