1.ケジメとお仕置き
本編126話後です。
「オカン…あんな…。」
「はいはい、リリアちゃんのこと泣かしたら許さへんからね!」
「俺、まだなんも言ってへんけど…?ええの?」
私達はキーヨートを出て、ブレイに帰る船を待つためにキアバに逗留していた。
シリルさんもキーヨートの演目を見に来ていたので、一緒だ
宿にいる間、時間があったので、ニールさんはシリルさんに私達のことを話そうとしていた。
一応、私の母代わりでもあり、自分の母だ。
が、なぜかシリルさんはもう知ってると言わんばかりに答えた。
やっぱりオカン、エスパーだ。
「シリルさん、これからもよろしくお願いします。」
私はぺこりと頭を下げる。
「リリアちゃんが本当に娘になってお母さん嬉しいわー!
もう、シリルさんなんて言わんと、いつでもお母さんって言うてね!」
「はい、お母さん。」
「よくできました!」
シリルさんはニコニコしながら頭を撫でた。
シリルさんに呼び出されてこの場にいたカールさんが、
どういうことだ?といった顔をしているので、
ニールさんが申し訳なさそうに頭を掻きながら小声で説明している。
「あんな…俺、リリアと一緒になるつもりなんや。まだ正式に言った訳やあらへんけど。」
バッチリ聞こえてるけど?
カールさんは少しだけ、びっくりした顔をしたが、すぐ通常に戻った。
「あぁ、身分としては私の妹ということで変わりませんね。」
と言っていた。
「あとな、リリアにちゃんと言っとかなアカンことがあるんやけど。」
ニールさんが私の方を向き、言う。
いつになく、暗くて真剣な顔のニールさん。
「俺な…ホンマはオカンとオトンの子やあらへん。
ホンマのオカンは5歳の時にいなくなってしもて。オトンは顔も知らん。
オカンはクラーケンなのは分かってるんやけど、オトンはクラーケンなのか、
他種族なのかもわからん。今まで黙っててホンマすまん…。」
そうなんだ…実はニールさんも色々あった人なのか。
最初に私を保護したのってそういう過去があったからなのかな。
でも、そんなことは関係ない。私は笑っていう。
「そんなこと言ったら私、人魚だよ?ニールさんこそ本当にいいの?」
「俺はリリアがええ!」
被せ気味にニールさんが答えたら、シリルさんがニールさんの背中をバシンと叩いて言った。
「よう言うた!!それでこそ私の息子や!」
「…オカン…加減して?死ぬかと思ったわ…。」
その様子がおかしくて私は思わず吹き出す。
「親子だなって思って。」
そう言ったら、シリルさんは
「リリアちゃんも私の自慢の娘やで。」
そう言って優しく笑った。
この笑い方やさっきの頭の撫で方、ニールさんと一緒。
例え血は繋がっていなくても、この人達は親子だなと思った。
私もこの人達の家族になれると思うと嬉しかった。
「リリアちゃん、あとでね?
カール、ちょっと色々連絡せんとアカンし、おいで。」
そう言ってカールさんと一緒に部屋を出ていった。
私とニールさんだけが残った。なんとなく無言の時間。
しばらくはニールさんは目を泳がしながら黙っていたが、咳払いをして口を開く。
しっかり私の目を見つめて。
「前から言うとるけど、リリアには俺の側にずっと居てほしい。
だから…俺と…結婚…してほしいんや。」
「私で良ければ。是非。」
テンプレだが、ストレートなプロポーズだった。私の答えもテンプレだったけど。
ニールさんは胸に手を当て息を吐いた。
「ケジメやから言うたけど、やっぱ緊張したわ…。」
今まで散々プロポーズじみたセリフ言ってきてる癖にね。
そう思いながら笑っていると、
「こらっ、笑うな。黙らせたる。」
とイタズラっぽく笑いながら、少し長めにキスされた。
「ぷはっ!苦しいってば!」
「笑うからや。もう少しお仕置きするか?」
そう言って少し深めなキスをする。
「んっ…はぁ、これお仕置きなの?」
「ん、ご褒美か?俺への。」
答えるとキスを続ける。さすがに苦しくなって来て、後ろに少しずつ下がる。
下がってもニールさんも一緒に下がるので唇が離れることはない。
ドン、と壁にぶつかる。もう下がれない。
「逃さへんよ?」
ニールさんは壁に手を付き、キスを続ける。
どんどんキスが深くなる。呼吸の仕方がわからない。
「ん、っん…。」
「…あ、すまん…ガッついてもうた…。」
手をついた体勢でニールさんは項垂れる。
「そんな焦らなくても…。これから2人でいられる時間はたくさんあるんだし。」
「焦ってるんとはちゃうんやけど…まぁそゆことにしといて。
せやな、これからたっぷり時間はあるもんな。覚悟してや?」
そう言って、頬やおでこに短く、たくさんキスをする。
相変わらずキス魔だ。
ノックの音。シリルさんが帰って来たようだ。
返事を返すと部屋に入って来た。
「ニール、ケジメはつけたんか?」
どうやらそのために部屋から出たらしい。オカンにはお見通しだ。
「あぁ…。ちゃんと返事もらったで。俺達…結婚するから。」
そう言って、ニールさんは私の肩を抱く。
「リリアちゃん、このアホのこと宜しくね?
ニール、リリアちゃんのこと、しっかり守るんやで?」
「おう!」
「はい。」
報告が終わるとシリルさんはギロリとニールさんを睨んだ。
「ところでニール、さっきからなんで少し腰が引けとるん?」
「いや、これには色々…えっと…あの……ゴメンナサイ…」
「このアホウが!」
そう言ったシリルさんにボコボコにされていた。
ん?なんかあった?
読んでくださってありがとうございます!