接触者
悪戯といっても、度の過ぎたものではない。やり過ぎて、悪い方向に勘違いされるのは面倒だからな。ちょっとびびったり、不安にさせれば勝ちだ。
遠くから此方を見ている者達のうち・・・そうだな、後ろの建物の影に隠れているのにするか。
砲塔を旋回させる。車体はそのままに、グルリと砲塔を回すだけで、そこそこ迫力がある・・・と思う。だってねぇ?四号戦車って、砲塔旋回用の補助エンジンを搭載しているが、それでも遅い。ゆっくり回る砲塔に迫力があるかといわれると・・・まぁ、少ないんじゃないかな?威圧感が出るとは思うが。
砲塔の旋回を終えた。そして、目標の人物へ照準を合わせる。これは攻撃の為ではない。照準機で目標をよく見る為だ。ついでに観察眼も発動させ、対象の情報収集を図る。
自分の後ろにいたその人物は、中肉中背の男性だった。だが・・・なんだその服装は。そのローブと帽子は、インバネスコートとシルクハットだろう?なんだ、探偵のつもりか?その服装は。鹿撃ち帽じゃないところにも拘りが伺える。
そのまるで探偵のような風貌の男は、向けられた砲身にそれはそれは驚いた表情を浮かべる。その表情を見ながら、車体の旋回も始める。砲身が向けられた事、車体も旋回させた事で、見つかったと理解したのだろう。その男性は、物陰から出てきて、こちらへ向かってきた。
ほう、中々に度胸があるというか・・・悪戯になってないねこれ。
まぁいいか。旋回を終える。本当なら、こちらから近づこうと思っていたのだが、相手が近づいているので、その場で待つ事にする。
少しして、その男性が自分の前に辿り着き、
「うーむ。やはり大きい」
彼我のサイズ差に感嘆した。
「私は情報屋といいます。以後、お見知りおきを」
男性はシルクハットを取り会釈しながら、名乗った。見た目と直結する名前だな。大変覚え易い。
「尾行について謝罪します。申し訳ありません」
そこまで気にしていないが、謝罪を受け入れる。ただ、その意を伝える事が出来ないのが残念である。会話が出来ないというのは辛い。
「一つお願いがあります。ヘッドホンを使っても構いませんか?」
お?
「恐らく、それで会話をしているのでしょう?問題ないのでしたら、その砲を上下してください」
こちらとしても会話したい所である。断る理由もないので、砲身を昇降させる。
「有難う御座います。では、失礼します」
一つ断りを入れた後、情報屋は車体に足を乗せた。インテレッセ嬢とは違い、やはり男性は素早く登る。直ぐにキューポラの所まで登り詰めた。
「ん?ヘッドホンは車内ですか?」
そういえばそうだったな。キューポラハッチを開放し、車内へ案内する。
「おぉ、ハッチが開いた。車内に・・・あったあった」
ヘッドホンは車内にある車長席に置いてある。それを発見した情報屋は、それを手に持って車外へ出てくる。砲塔に腰掛け、ヘッドホンを装着する。尖った耳が一瞬だけ見えたが、ヘッドホンによって隠された。
「あーあー。聞こえますか?」
『聞こえる』
「おぉ!本当に自立しているのですね!」
『そりゃあそうだ。自分はプレイヤーだからな』
プレイヤーなのだから、自立していて当然だ。
「いやはや、謎の戦車の正体がプレイヤーとは・・・」
『謎の戦車ねぇ』
「かなり有名ですよ。噂も一杯あります。例えば・・・
『この世界のエルフは戦車を保有している!』
とか
『戦車の開発に成功したプレイヤーがいるのでは?』
ですかねぇ。」
『中々に愉快な噂話だ』
「噂で良かったと、今思っていますがね」
エルフが戦車、は兎も角、戦車開発に成功、は確かに笑えない冗談かもしれない。でもまぁ、無理だろうね。少なくとも今は。エンジンは兎も角、変速機は高度な加工技術を要求されるからな。
・・・この世界の魔法的なスキルで、何とかしてしまいそうだがな。
『それで、そちらの目的は何だ?尾行したり、こうやって会話を試みたりと、やはり目的があるのだろう?』
「勿論ですとも。色々聞きたい事だったり、調べたい事だったりがありますから」
『答えられない事、答えたく無い事は無理だからな?』
「構いません。正直な所、あなたがプレイヤーだという事実でも十分ですので」
確かに。自分がプレイヤーだという事実は、他プレイヤーに大きな影響を与えるだろう。戦車という即戦力を求めて、勧誘も出てくるだろうな。
「では、質疑応答といきましょう!」
『お嬢様が帰ってくるまで、だからな?』
「お嬢様・・・?あぁ、なるほど。わかりました」
インテレッセ嬢が帰ってきたら、館に戻らないといけないからな。
「初めの質問です。あなたの名前はなんですか?」
『パンツァーだ』
「パンツァーさんですね。2番目の質問です。パンツァーさんは、ワールドクエストの際、エルフの村についての情報を提供した、”報告者”であっていますか?」
『・・・そうだ、自分が”報告者”だ』
驚いた。この質問がくるとは思わなかった。鋭い、というかなんというか。遅かれ早かれ、特定されるとは思っていたが、ここまで早いとは。ちょっと動揺して、返答が遅れてしまった。
「やはりパンツァーさんでしたかー。という事は、エルフの村についてもご存知ですよね?」
『無論知っている』
「3つ目です。場所について教えてください」
・・・どうやら、他のプレイヤーはまだエルフの村に到達できていないようだ。だが、残念ながら教える訳にはいかない。
『申し訳ないが、位置などをを公開する事はできない。それは、自分ではなくお嬢様が決める事なのでな』
そう。これはインテレッセ嬢が決める事。掲示板で少なくない情報を既に上げてしまったから時間の問題だけどね・・・。やってしまったと今更ながら後悔だ。
「んー。確かにそうですね。エルフが閉鎖的な種族の可能性もありますし」
『そういう事だ』
そういう事にしておこう。
「4つ目です。パンツァーさんの身体についてです。それは種族の影響ですか?」
これに関しては公開しても構わないだろう。
『これは”付喪神”という種族によるものだ』
「”付喪神”ですか。なるほど、そういう事ですか」
おや、付喪神についての情報は既に回っているのか?
「付喪神、確かにそれっぽい種族ですねー」
どうやらまだ出回っているわけではないのか。だがしかし、付喪神はそこまで希少な種族ではない。自分を発端に、他の付喪神プレイヤーも発見されることだろう。
『他にはなにがある?』
「そうですね・・・では――」
「どちらさま?」
おっと、時間かな?
「おや。もしかして、彼女がエルフのお嬢様?」
『そうだ』
「おぉ!これはこれは!」
興奮した声を上げながら、ヘッドホンを外し、物凄い勢いでインテレッセ嬢へ近寄る。
「協定違反だ」
そこへ、如何にもニンジャ、な格好をした二人組が現れた。
『は?』
「え?」
「あ”」
な、何者だ、この者達は!雰囲気的に、敵ではないと思うが警戒するに越した事はない。即戦闘に入れるよう、実弾を装填しておく。
自分が準備している最中も、状況は進む。忍姿の二人組は、一瞬の内に情報屋へ肉薄し、熟練の動きで拘束する。
「ちょ」
「あの方とは、パーティにて接触すると協定にて決まっていた筈だ」
「えっ、あ!これはですね偶然でして」
「あぁ分かっているとも。偶然、あの方が店内に入っている最中に戦車へ近づいたのだと、な」
「あっ。これは言い逃れできませんね」
忍姿の一人の言葉に、納得した情報屋は抵抗を止め、大人しくなった。
「失礼した。続きはパーティにて」
とだけ言い残すと、忍姿と情報屋は去っていった。
「一体、なんだったんだ」
『同感だ』
ヘッドホンを装着したインテレッセ嬢に同意した。
165.裁判長
誰だ!抜け駆けしたのは!
166.名無しさん
どうした?
167.裁判員
エルフの少女に、抜け駆けして接触を図ったプレイヤーがいたのですよ
168.治安部隊
無論拘束した
169.名無しさん
こっわ!?こいつらこっわ!?
170.裁判長
んで、誰だった?協定で、あの方との接触はパーティでと決まっていた筈だ
171.治安部隊
エルフスキーですねぇ
172.名無しさん
ま た か
173.名無しさん
そこまでするのか・・・
174.名無しさん
というか、よくもまぁこんな短時間に現地に向かえたな
175.裁判長
うん、知ってた。パーティまで待てと言って置いてくれ
176.エルフスキー
そんな殺生な!
177.七四散
そんな事より、戦車について得た情報を吐け
178.名無しさん
なに!戦車についての情報だって!?
179.名無しさん
ハリー!ハリー!ハリー!
180.エルフスキー
あー、少しだけど、聞き出せたよ
181.七四散
聞き出せた?
182.名無しさん
どういうこと?
183.エルフスキー
あれ、プレイヤーだった。付喪神っていう種族だって
最近PCの調子がやばいですハイ。HDDが異音を出す、起動しなかったり時間がかかったりする、HOI4やWTを起動するとPCがシャットダウンする、などの異常が見られます。
HOI4の異常なシャットダウンやWTの起動しないなど、色々調べて見ましたが成果なしです。
残る可能性はハードの寿命ですが、軍資金がない為、GPUや電源ユニットの交換は絶望的という。
幸運な事に、使われていない新品のHDDが1つあるので、データを移そうと思います。
もし、長期的に更新が止まった場合、自分のPCが死んだという事ですね。
19日目昼




