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街中を進む

 街をキュラキュラと音を奏でながら、それが往く。それは大きな鉄の塊。言わずもがな、我らが四号戦車である。と言っても、その見た目は異質である。シュルツェンにより輪郭が大きくなり、正面の追加装甲により厳つくなっている。その威圧感は先の比ではない。

 そんな存在が、キュラキュラと暢気な音を奏でながら街道を往く。その様は、恐ろしいというよりシュールである。確かに威圧感は凄まじいのだが、キューポラから上半身を乗り出している、可愛らしい女の子がそれを和らげているのだ。厳つさと可憐さ。それが、何とも言えない雰囲気を作り出していたのだ。


 見ている者は様々だ。NPCであったり、PCであったり。大人であったり、子供であったり。そして男であったり、女であったりだ。NPCの大体は、気味悪がって近寄らない。が、子供とPCは別であり、興味津々といった様子である。


「なにこれー」

「すごーい!」


 と子供は無邪気に近づいてくる。そして、その度に――


『自分は止まらねばならない』

「・・・いい加減面倒になってきた」


 正面に立たれたら、止まる他ない。そのまま轢く訳には行かないし、正面じゃなくても、真横・真後ろはとても危ないので、注意して停止し、離れてもらうか、満足するまで待つのだ。


「ほら、危ないから離れて」

「えー!」

「いやだー!」


 まぁ、大体の子供は反抗する。知ってた。


「あれが、掲示板で騒がれていた戦車、か」

「上の子、やっぱりエルフだよね」

「あぁ。NPCのエルフだ」

「NPCのエルフって初めて見た」

「・・・あの戦車、情報より厳つくね?」


 子供に群がれ、ジャングルジムと化した自分を、PCは観察し、そして会話をしている。まぁ、内容の大体は予想できる。大方、フレンド間の情報交換や、掲示板で自分の事を知っているのだろう。そして、今ここで得た情報が、更に広がるのは確実だな。


『・・・いっその事、乗せて進むか』

「なるほど、良い案」


 目立つ事は別に問題は無い。問題なのは、早く食事にしたいという事だ。自分は戦車故、食べなくても問題は無いが、彼女は食べねば死ぬ。それにお腹が減っているのはとてもいけない状態だ。早く食堂へ連れて行こう。


「そろそろ動く。乗りたかったら乗ってて。嫌なら今すぐ降りて」


 彼女の強めの言葉を聞き、降りる者と乗り続ける者で別れる。降りる者は女の子が多いな。怖いのか、それとも警戒からか。対し残ったのは男の子が多い。男の子は興味の塊、であるな。


『では、発進!』

「発進ー」


 また、戦車がキュラキュラ進みだす。





「ねぇ、ここの近くに食堂はない?」

「食堂ー?」


 インテレッセ嬢が、操縦席真上の天板に座っている男の子に問う。


「ここら辺の食堂って何があったっけ」

「俺は余りこっちに来ないから分からん」

「食堂は知らないけど、サンドイッチが美味しいお店なら知ってる」


 問われた男の子は、一緒に乗っている子達にも聞いた。

 サンドイッチか。ファンタジーお約束、米が無いって奴か。暫くはパンで我慢・・・じゃねえ。米あったとしても食えねーじゃねーか!食べる為にも擬人化は急務か。


「道案内、お願いできる?」

「わかった」


 男の子の道案内に従い、進む。


「おねーさん。これ、何て言うの?」


 唯一、戦車に乗っている女の子が、インテレッセ嬢に問う。


「彼の名前はパンツァー」

「・・・彼?」

「そう、彼」


 ・・・女の子とインテレッセの間に、何とも言えない空気が流れる。女の子からしたら、得体の知れぬ、少なくとも人とは思えない存在に”彼”と称するインテレッセ嬢は異常に見える事だろうな。


「そ、そうなんだ・・・」


 苦笑いを浮かべながら、器用に車上で距離をとる女の子。案の定である。


「・・・?」


 そしてインテレッセ嬢はこれに気づいていない、というより理由がわからないご様子だ。天然入ってるのかな?


「次は右ね」


 言われたとおり、右折する。


「そういえばさー」


 今度は、初めにインテレッセ嬢の質問を受けた男の子が、言葉を発する。


「これ、おねーさんが動かしてるの?」

「違うよ」

「じゃあ、勝手に動いてるんだ!」

「そう」

「すげぇえ!」


 先の女の子とは違い、こちらは興奮した反応を見せる。質問の内容が違うのもあるだろうが、やはり男の子と女の子では、反応が違うなと感じた時間だった。





「ここ!」

「良い香り」


 暫く進むと、それらしき場所に着いた。他の建物と同様、白い木枠の家だ。それの入り口は広く取られており、外からでも店内がよく見え、サンドイッチが入ったショーケースが真っ先に目に入ってくる。うむ、遠目でも美味しそうだ。そしてお洒落なお店だ。

 店の前で停車する。


「これはこれは。珍しいお客さんだ」


 戦車独特の音が気になったのか、店内から店員と思われる男性が、笑みを浮かべながら出てきた。紺色のエプロンが特徴的な、初老の男性だ。


「おじさーん!」

「サンドイッチください」


 子供達は停車すると同時に戦車から降り、男性に向かう。それに遅れて、インテレッセ嬢もキューポラから出る。


「ハハハッ。ちょっと待ってなさい」


 と子供達を宥めた後、丁度、地面に降りたインテレッセ嬢に向き直り


「いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」


 注文を伺った。


「サンドイッチをお願い」

「畏まりました。店内へご案内致します」


 初老の男性を先導に、インテレッセ嬢と子供達は店内へと向かった。





『んで、自分はどうしようか』


 することが無くなった自分であった。

 彼女を待たねばならないから、ここから動く訳にはいかない。ここから動かずに暇を潰すか。・・・掲示板でも見るか。

 見るなら、取り合えず情報収集スレだろうな。十中八九、自分の事も書かれてるだろうし。




【イベント】情報収集スレその7【終了】


1.名無しさん

このスレはTWO世界の情報を集めるスレです。どんな些細な情報でも構いません。

兎に角情報が少なすぎる。この未開の地を生きるには、君の情報が必要だ!


次スレは>>980を踏んだ方にお願いします。


2.名無しさん

スレ立て乙。イベントも乙


3.名無しさん

おつかれさまですたぁああ


4.名無しさん

イベント終わったな


5.名無しさん

死んだわ。呆気なく


6.名無しさん

突撃した組と残った組で分かれてたな


7.名無しさん

全体的に見ると、突撃した組には、物凄い戦果を挙げてるのがいるな。ただし、直ぐ殺されてまったく戦果が無いのもいる。

対し残った組は、飛び抜けた奴はいないが全員が戦果を得てる。


8.名無しさん

残った組だが、そこそこの戦果が手に入って満足


9.名無しさん

生産組も相当戦果挙げてるのがいるらしい。まだ正式発表されてないからわからないけど


10.名無しさん

あーポーションとかか。安くて大量にあったな


11.生産代表

うちから1000個程納品したぞ。味は保障しないが。


12.名無しさん

あの糞不味い代わりに安くて回復量の高いポーションか!


13.名無しさん

やりますねぇ!


14.名無しさん

安くて回復量も良いポーションだった。味が糞だが。


15.生産代表

糞糞うせーよ!うちも頑張って改善しようと試みてるんだぞ!


16.名無しさん

んで、ご感想は?


17.生産代表

もう飲みたくない


18.名無しさん

 知 っ て た







34.名無しさん

戦果が高かったり、貢献したPCは戦勝パーティに招待されるようですね


35.名無しさん

突撃組の剣と槍と盾の三人は確実だな


36.名無しさん

あの化け物三人組か・・・


37.名無しさん

確か、ゴブリンキングと思われる存在と互角にやり合ってたんだよな


38.名無しさん

あれにワンパンされたんですがそれは


39.名無しさん

三人がかりとはいえ、あれと互角ってぱねぇ!


40.名無しさん

あの三人組以外にもヤバイのいたよな


41.名無しさん

二刀流のとか?


42.名無しさん

なにそれ


43.名無しさん

片方の剣が短い二刀流だったけどな


44.名無しさん

何それカッコ良い


45.名無しさん

じーさんも強かったな。魔法の使い方とか


46.名無しさん

あー確かに。派手じゃないけど強かったな。地味なんだけどさ


47.名無しさん

魔法っ娘と銃っ娘も忘れないでください!


48.名無しさん

それを言うならヒーラーの娘もだぞ!


49.七四散

お前ら、それよりも重要なのがいるだろうに・・・


50.名無しさん

あぁん!?お前天使馬鹿にしてんのか?


51.名無しさん

魔法っ娘がナンバーワン


52.名無しさん

いいや銃っ娘だ。あのクールな視線が一番だ


53.七四散

おなごの話など今は良い!戦車を忘れんな!


54.名無しさん

そういえばそうだった


55.名無しさん

あれなんなんだろうね真面目に


56.名無しさん

残った組なんだけど、城壁から見てたが凄い活躍だったぜ。多分討伐数はあの戦車が一番だ。1000は殺してる


57.名無しさん

文字通り桁がちがーう!


58.名無しさん

今回の戦で活躍したPCは大体が百単位での討伐数だが、戦車は千単位か・・・


59.名無しさん

戦車つえぇええ


60.名無しさん

あれエルフっ娘乗ってたよね


61.七四散

乗ってたぞ。この目で見たから確かだ。因みに美少女だった。


62.名無しさん

その話kwsk


63.名無しさん

エルフって言ってもなぁ・・・街のエルフは中身がPCだからなぁ。

となると、その戦車は誰かの持ち物という事か?


64.七四散

喜べ。NPCアイコンだったぞ


65.名無しさん

ガタッ


66.名無しさん

NPCエルフですと!


67.名無しさん

人工じゃない!?


68.名無しさん

これは希少価値ですわぁ・・・


69.名無しさん

エルフスキーの格好の餌


70.エルフスキー

エルフの話と聞いて


71.エルフスキー2

上に同じく


72.エルフスキー3

kwsk


73.腐った女エルフ

エルフの村についてkwsk


74.裁判長

ギルティ


75.名無しさん

反応早すぎぃ!








125.名無しさん

話題の戦車の新情報!街中あるいてるぞ!


126.名無しさん

Ω ΩΩ〈ナ、ナンダッテー!!


127.七四散

こちらも補足した。見た目が変わってるな


128.名無しさん

ストーカーかな?


129.裁判長

犯罪者と聞いて歩いてきました


130.マスゴミ

裁判長の後を追いかけてきました


131.名無しさん

直ぐ近くにストーカーいるじゃねーか!


132.エルフスキー2

んで、エルフっ娘はいるのか?


133.名無しさん

いますねー。戦車のハッチ?から上半身を出してる


134.七四散

今は子供達が群がってるな。PCは寄ってないが


135.エルフスキー

よし待ってろすぐ向かう


136.裁判長

ギルティ


137.マスゴミ

エルフが拘束されたとの報告がきました


138.名無しさん

はっや!?


139.名無しさん

mjd?


140.治安部隊

こちら治安部隊、対象を拘束しました

あの方の食事終了後、頃合を見て引き合わせます


141.名無しさん


142.名無しさん

対応早すぎないww


143.名無しさん

というかエルフスキー特定されてんのかww


144.名無しさん

仲良いなこいつら


145.裁判長

今、エルフっ娘は食事中です。終わってからにしましょう


146.七四散

中々に美味しそうな香りのするお店だな


147.裁判長

後で食べに行きますか


148.七四散

そろそろ昼頃ですしね


149.名無しさん

おうそのお店俺にも紹介しろや


150.名無しさん

俺にも紹介してくれや


151.エルフスキー3

エルフっ娘が訪れたお店・・・ガタッ


152.マスゴミ

思ったのですが、このスレ、ストーカー多くないですか?


153.裁判員

 今 更






 なんだこのスレ・・・。というか、見られてるのか、現在進行形で。

 砲塔を回さず、周辺を観察して見る。・・・うむ、いるな、確かに。・・・ちょっと悪戯してみるか。フフフ。



お久しぶりです。長い間更新できなくて申し訳ありませんでした。

夏休み、楽しかったです。PC破損さえなければ、もっと楽しい夏休みでした。ちくせう


これからまた、ゆっくり更新していきますね。



19日目昼

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