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装備を揃える

 冒険者ギルドはその名の通り、冒険者をサポートする為のギルドです。依頼の仲介や、採取した素材等の売買、ポーションや閃光弾のような補助アイテムの販売等を行っております。加入する事で、それらを利用する事が可能になります。


 ギルドに加入すると、初めはFのクラスが与えられます。クラスは上からS、A、B、C、D、Fで、分けられ、上へ行くほど特典やより難易度の高い依頼を請ける事が可能になります。特典としては冒険者ギルドと連携している他施設の無料使用チケット等が当たります。クラスは、依頼の達成数などで昇進します。頑張って、依頼を達成してくださいね?

 依頼を受ける際の注意事項として、依頼に失敗した場合が挙げられます。失敗数が成功数を15割上回りますと、クラスが降格してしまいます。また、Fランク時で降格処分を受けた場合は除籍となり、再度加入するには料金が発生します。ご注意ください。


 依頼に関してですが、クエストボードから内容が書かれた木板を選び、受付で受注の流れです。内容は、依頼主、依頼内容、報酬ですが、一部のものは契約金の項目があります。依頼主、もしくはギルドが重要だと判断したものに設けられ、それ相応の資金を保有している実力者しか、受注できないようにしてあります。その分、報酬は高額になります。

 また、依頼の報酬から1割、ギルドの運営費として天引きされております。この天引きされた資金は、ギルド職員や施設、サービス等に使用されております。

 ギルドの施設やサービスについてですが、加入して1ヶ月の準備期間が設けられ、その期間中はギルドが7割を負担します。ですが、その期間の後は、ギルドは7割負担から、依頼の達成数に応じて負担します。達成数が多い方ほど、ギルドが負担する為、使用料金が安くなる訳です。その為、依頼の達成数が少ない方ほど、自己負担額が大きくなります。ご注意ください。

 そして、準備期間から3ヶ月間に一定数の任務を達成しなかった場合、降格もしくは除籍となります。くれぐれもご注意ください。






「想像以上にしっかりしてましたね」

「あぁ、掲示板もその話題が多かった」


 現在、俺達は冒険者ギルドを後にし、それぞれの装備を揃える為に武器屋、防具屋へと足を運んでいる。


 冒険者ギルドで説明を聞いた後、インベントリを圧迫している大量の素材を売り払った。初期の所持金が1000リンを、シュテッヒの手入れの為に揃えた布や油で80リンに減った。それが、今回の収入6640リンで、合計金額6720リン。100リンのポーションを10個購入して、残り5720リン。この資金を元手に、装備をそろえよう。


 街の人だかりを避けながら、蜻蛉と目的の場所へ向かう。


「税金の概念があるようです。ゲームと思って舐めてましたが、中々整っているようですね」

「街の中央から広がる大通りがある時点で、舐められないがな」


 今歩いているこの交通網もしっかりしている。糞尿が何処にも見当たらないから下水もあるのだろう。ファンタジーで中世な見た目にしては、整備が行き届いているな。


「まずは防具から行きますか」

「そうだな、いつまでも初期装備じゃあ話にならん」


 盾が描かれた看板の大きなお店。そのお店の扉へ手をかけた。


「蜻蛉はどんな防具にするんだ?」

「そうですねー、動きやすい装備が良いですから、皮装備、でしょうか」

「考えている事は大体似ているな」


 俺の戦闘方法は剣による近距離戦。体は軽い方が良い。


「ただまぁ、肩は頑丈にしたいな」

「攻撃を受け止める為ですか?」

「あぁ。盾代わりだ」


 左肩に装備出来る防御用の何かがあればいいのだがな。小さい盾でも構わないのだが。


「いらっしゃい!何をお求めだ?」


 中に入ると、大量の防具と共に、店主と思われる大男が出迎えてくれた。190はある巨体で、その体はとても鍛えられている。ボディービルダーと言われてもおかしくない体系だった。


「動きやすい、軽い装備が欲しいのだが」

「それだったら皮だな。もしくは少し重いが鎖帷子だ」

「両方とも見せてくれるか?」

「勿論だ。少し待っていてくれ」


 そう言うと、店主はすぐに店の奥へと隠れてしまった。暫く店内の防具を眺めていると、両の手に手袋を持った店主が出てきた。


「こっちは鎖帷子、こっちは皮でできている」

「これが」


 鉄を輪っか状にして編むようにして作られた鎖帷子の手袋と、皮を鞣して作られた皮の手袋だった。


「鎖帷子は皮より防御力が高いが、重くて刺突系の攻撃に弱い。皮は防御力こそ鎖帷子に劣るが、その分軽くてより動きやすい」

「・・・部分的に素材を変える事はできないのか?」

「勿論できる。だがそれだとオーダーメイドになる。時間がかかるがいいか?」

「いや・・・」


 近くゴブリンの戦闘が確実な現在、防具が初期状態のままなのは死活状態だ。間に合うか判らないオーダーメイドより、今直ぐ使えるものを使った方がいいだろう。


「蜻蛉、俺は今すぐ使えるのを買う事にする。お前はどうする?」

「私もオーダーメイドは止めておきます。間に合わないかもしれませんので」


 やはり、同じ結論に至るか。


「・・・お前らも、ゴブリンと戦うつもりか?」

「あぁ、勿論だ」

「・・・本当なのかもしれんなぁ」

「ん?どういうことだ?」


 本当かもしれない?どういう事だ。ゴブリンの事を疑っているのか?


「近頃、お前達のような冒険者が『ゴブリンが来る』と騒いでいるから。初めは嘘かと思ったが・・・」


 どうやらNPCはゴブリンが本当に攻めてくるか半信半疑だったようだ。まぁ仕方ない。ワールドクエストのお知らせなんて、NPCに聞こえる筈がないからな。


「ゴブリンは確実に来るぞ」

「私達、実際に戦いましたから」

「なに!?それは本当か!?」

「あぁ。だから、防具を揃えている所だ」


 初期装備じゃ、流石に分が悪いからな。


「そうか・・・よし、俺にできる事は防具を売るだけだ。それで、何を買う?」

「皮装備一式を2つ・・・で、いいよな?蜻蛉」

「構いません」

「皮一式だな?上から帽子、ジャケット、グローブ、パンツ、ブーツだ。一応、色に幾つか種類がある。それとはまた別にコートなんかもあるが、どうする?」

「色だと?」

「コートですか」


 ・・・。色にコートか。


「どうする蜻蛉。コートを買うのは確実だろう?」

「えぇ、カッコいいですからね。問題は色です」


 そうなんだ。色なんだよ。コートはロマンだ。だから確定だが、問題は色なのだ。どうせならこれもカッコいいものにしたい。


「統一するなんてどうでしょう。統一感は見ている者に勇ましく見えます」

「良い考えだ!賛成しよう。して、色はどうする?俺は黒がいいと思う。皮だからな、赤や青、緑とかの派手な色より黒のような地味な色がいいだろう」

「地味な色大好きです!黒にしましょう!」


 よし決まった。色は全て黒で統一する。


「・・・コート込み、色は黒で良いんだな?」

「あぁ。問題ない」

「お願いします」

「判った。体の寸法と調節をするから、ついてきてくれ」


 店の奥へ向かう店主。その後に続いた。






「フハハハッ!黒一色に笠!ミスマッチだな!」

「やめてださい!私も自覚してるんですから!」


 笠と黒いロングコートを羽織る蜻蛉の姿は、どこか違和感のあるものだった。これが笠じゃなくてシルクハットとかならマシになっていたと思うんだがな。


「自覚しているなら帽子を被れば良いじゃないか」

「嫌です。この笠はロールプレイの一環でもありますから」

「ロールできてるのか?」

「言わないでください・・・」


 まぁ、本人が楽しそうだし何も言うまい。


「そういう貴方も、帽子は被らないじゃないですか」

「うっ、それを言われると弱いな・・・」


 あの帽子、帽子というかヘルメットのようだった。性能は皮相応の防御力なのだろうが、防具というだけあって頭にしっかりと固定される。それが嫌なのだ。締め付けられているような感じがする。ジャケットやパンツはそうでもないんだが・・・。


「それに、結局肩の防具は買わなかったんですね」

「あー、装備に夢中で忘れてしまったんだ」


 初めての防具だからな。夢中になっても仕方ないだろう。うん。


「それにしても、あの防具屋は中々に客の出入りが良かったですね」

「ゴブリンの事があるからな、防具を揃えたい連中が買いに来ているんだろう」

「えぇ、儲かってるんでしょうねー」

「・・・そういえば、店の外に盾があったな」

「あー、あの鉄製のタワーシールドですね?長方形の」

「そうだ。あれは飾りなのだろうか。あのまま放置してたら錆びてしまいそうだ」

「錆びる前に誰かが持って行きそうですがね」

「あんな重量物、運べる人間は限られてくるぞ・・・」

「そういえばそうでしたね」


 あんなに大きな盾、使うのはタンク位だろう。・・・俺と蜻蛉だけでは近い将来、必ず限界が見える筈だ。タンクや魔法職、あとできたら弓の様な遠距離攻撃ができる仲間が欲しいな。






 この後、防具屋の後、武器屋にも寄って装備を購入した。ダガーを俺と蜻蛉でそれぞれ1本。ナイフ10本を俺が個人的に購入した。ダガーは予備の武器で、ナイフは更にその予備として購入した。というのは建前で、カッコいいから購入した。仕込みナイフとかロマンだ。


「防具屋で1200リン、ダガーで200リン、ナイフ10本1000リン。ポーション10個で1000リン。合計3400リン。残り金額は2320リン成り」

「そんなにお金使ったのにまだ残ってるんですか・・・」

「ん?お前は残ってないのか?」

「当たり前ですよ!そんなにモンスター倒してませんでしたから!」

「そ、そうなのか」

「こっちは所持金1340リンなんですよ!?有事の際の為にこれ以上使えないんですよ!」


 確かに、ポーションが切れたりした時の為にある程度は残しておかないといけないからな。

 もう少しお金に余裕が欲しいな。いずれオーダーメイドの武器を作りたいのだ。その為にはお金と材料が必要だ。


「・・・蜻蛉、お金、集めに行くか」

「奇遇ですね、私もお金がほしいと思ってた所ですよっ」

「取り合えず、ギルドに向かって手頃な依頼を受けるとしようか」

「判りました」


 俺達は再度ギルドへ足を進めた。

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