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Panzer vor!

 これより、13のゴブリンを討伐する。不安材料たるこれらを討伐すれば、完全にゴブリンの脅威は去った、と見て良いだろう。そうなれば、自分もより自由に動ける様になる。喜んで参加する次第だ。


 しかし、問題は当然の様に存在する。


「・・・速い」


 どうやらゴブリン13体は、此方の動きを察すると、すぐさま逃げ出す。それなりに知性があるようで、此方の動きに合わせて逃げ回るのだ。そして、此方が止まれば村の監視の為に戻ってくる。


 手段を変えた。あの探知魔法を使えるのは彼女だけだった為、自分と彼女が討伐隊に同行していたから、連中にばれた。主に戦車の騒音が原因だった。自分が討伐隊から離れ、そして安全の為に彼女も討伐隊から離れる。機動力と隠密性に優れた、エルフの戦士のみでの構成で打って出た。

 が、結果は同じだった。彼女の指示を元に、反応がある場所へ向かったが、発見が困難だった。2体は倒せたが、それ以外は無理だったのだ。連中、しっかり自然に溶け込んでおり、エルフの耳、鼻、目を持ってしても発見は出来なかった。2体、倒された事により更に徹底したようで、これ以上の捜索は困難と判断された。


「どうしたものか・・・」


 斥候というものは、或いは草に伏し隠れ、或いは水に飛び入る。そして、とある歌の一節にある通り、連中は万死を恐れない。見つけるのは困難だろう。


「このゴブリン、体中に泥を塗って臭いを消してる。他もそうだろう」

「元の体色が緑なのが更に見つけ難くしてるな」

「面倒極まりないな」


 エルフの戦士達が、何故か粒子にならないゴブリンの死体を調べながら言う。彼等の言葉通り、連中はそれなりに上手らしい。どうしてくれようか。・・・森を焼けば全ては解決するんだけどなぁ。無理なんですけどねハイ。

 考えとしては、数を利用して追い込むべきだろう。煩くて存在感の有り余る自分が囮になれば、どうにかできるだろう。


「・・・どうにかして、罠に嵌めるか」


 彼女にどうやら考えがあるらしい。


「何か考えがあるのですか?」

「彼を使ってゴブリンを炙り出す」

「成程。では、我々はその出てきた連中を叩けば良い訳ですな」

「そう」


 大体考えている事は同じだったようだ。

 じゃあ、思い立ったが吉日。さっさとやろう。


 回転速度を増す。ギアを変え、より大きな騒音を生み出す。


「よし、俺達も動くぞ」

「・・・御武運を」


 ガガッっと、一瞬の金属音の後、変速機が安定する。高速回転が低速へ、そして高トルクへと変化する。そのトルクは、重い四号の車体を前へと押し出した。


「あの大きい攻撃、上にやって」


 jawohl。砲に仰角をかけ、砲弾を装填する。弾種は徹甲弾。榴弾だといずれ着弾した時に爆発するからな。

 装填完了、発射。乾いた破裂音と共に、7.5cmの徹甲弾が撃ち出される。


「これでゴブリンの注意は確実に此方に向いた・・・あとは動くだけ」


 では、前進しよう。敵を炙り出すのだ。






 暫くして、ゴブリン11体の討伐に成功した。自分がやった事は、ただただ森の中をテキトーにフラフラしていただけだった。テキトー・・・いい加減って言ったほうが良いだろうか。兎に角、そこら辺を移動していただけだ。


「全部刈り尽くしました」

「・・・うん、周りにゴブリンはもう居ない」


 探知魔法を使い、辺りを調べた彼女が発する。どうやら本当に終わったようだ。エルフ達もこれで不安で夜も眠れないという状態を脱することができた。そして自分も、エルフ達の場所から安心して離れる事が出来る、だろう。


「では、帰還しましょうか」

「・・・わかった」


 とりあえず帰ろう。考えるのは後からでもできるからな。「帰ろう。帰れば、また来られるからな」、という木村昌福少将の名言もある。それに従うとしよう。





「そろそろ、街へ送った使いが帰ってくる頃じゃな」


 時刻は夕刻。村に戻り、村長の宅で休憩を取っていた。正確には、家の前で休憩していた。ほー、そろそろか。今日はゲーム開始から16日目、使いがでたのがゲーム開始から4日目・・・だったかな?となると、12日も前の事か!12日もかかってる・・・いや待て、彼女等5人がゴブリンに囚われていた時、5日間かけて移動していた。その距離を、自分は2日と少しで走破している。単純計算で、1日で彼女等の2日分を進んだ計算になる。自分が速すぎるだけなんだ。

 こう考えると、この遅さも判らなくもないな。彼女等と出会った場所も、戦車の最高速度で猿から逃げて、偶然行き着いた場所だ。結構な速度で街から離れているだろう。それに、入って帰ってくる+で報告とかの処理もしないといけないからねぇ・・・。


「・・・多分、ゴブリンは街への攻撃を目的にしていると思う」

「私もそう思うのぉ。先のゴブリンが送り込んだ戦力、ゴブリンにしては少なかったからの」


 彼女と長老が言を交わす。村長じゃなくて、長老ね。村長は村の管理者で、長老は一番年寄りで知識人のようだ。


「長老。恐らく街からは援軍を求められる筈です。どうしましょうか」

「応えても良いじゃないか?この村はついで、だろうしのう」

「・・・潰すつもりなら、初めから大戦力をぶつけてくる筈。でもじゃなかった」

「村の占領が目的じゃないのなら、もうこの村には来ない」

「・・・戦力の無駄だから?」

「そういう事じゃ」


 村長の問いに、彼女と長老が答える。成程、自分も賛成できる内容だな。攻めて来ないなら、守らなくても良い。守りに力を入れる必要がなくなったから、その余力で街へ援軍・・・うむ、理に適っている。


「問題は条件ですね」

「そうじゃの」

「・・・そういうのは、そっちに任せる」

「判りました」

「釣れぬのぉ。お主も知識なら持っているだろうに」

「政は苦手なの」

「フォッフォッフォ」


 どうやら彼女は駆け引きが苦手なようだ。


「我々の目的は、本部と始まりの街との中継地点を担う事。それの協力を条件にしましょう」

「それだけじゃ足りぬ。維持費や設備費等も盛り込め」

「わ、判りました」

「・・・やっぱり政は無理」


 なにやら聞き捨てならない単語が聞こえたぞ。本部?中継地点?どういう事だ?ここにいるエルフが全てではないのか?・・・謎が一つ増えたな。ゲーム要素、って奴か。

 それにしても、その中継地点の為にとはいえ、色々とたかる積もりのようだ。凄い肝っ玉だよ。まぁ、本人がやる訳じゃないから、かな?


「・・・で、増援はどういう編成にする?」

「そうでしたね。それを考えないと、取らぬ狸の皮算用になります」

「なに?既に決まっていたのではなかったのか?」

「決めてない」

「決めてませんね」

「ほー、簡単なことじゃろうに」


 おや、長老は既にあると勘違いしていたみたいだ。という事は、何か考えがあったのだろうか。・・・なーんとなく、予測は出来るけど。


「なに、このデカブツ一つだけで十分じゃ」

「えっ」

「・・・」


 ・・・まぁ、そうなりますよねぇ。


「あの攻撃力、あの防御力。申し分ない。これ一つで十分じゃ」

「で、ですがそれでは我々の援軍とは言えないのでは?」

「だったらエルフの同行者が居ればいいのだ」

「・・・私か」

「そういう事だ。お主とこれには悪いが、ワシ等の為に動いてもらうぞ」


 ふん、中々に姑息な事を考えるジジイだ。だが、まぁいいだろう。手柄の横取りみたいな行為だが、喋れない今の自分ではどうしようもない。実力行使なんて以ての外、だからな。


「村長、これにお守りをあげてやれ」

「お守りですか。しかし、あれは」

「ワシ等の村を守ったのだぞ?十分その資格はある。それに、今からワシ等はこれを利用するのだ。対価は用意すべきだろう」

「・・・そうですね、判りました」


 どうやら、対価が用意されるらしい。価値はわからんが、それで買われる事にしよう。それに、話を聞くに、それなりの実力を提示して手に入る資格らしい。ゲーム的に考えたらそれなりの価値がある代物だろう、十分期待できる。


「・・・準備してくる。明日、ここで」


 それだけ言い残し、彼女はこの場を去った。

 明日には直ぐ出発という事か。思い立ったが吉日って事だな。了解した。







 お早う諸君。良く眠れただろうか。私は良く眠れたぞ。さて、今日から我々は始まりの街へ向け出発する。これより作戦内容を確認する。

 本作戦の目的は、ゴブリンの始まりの街への侵攻の阻止にある。これを第一に考える。位置の関係上、我々はゴブリンの背面へ攻撃が可能だ。これを利用しない手はない。ゴブリンが始まりの街へ攻勢し、暫くしてから我々も動く。ゴブリンの注意を始まりの街へ完全に向けさせるのだ。そして、その時に背後からの一撃だ。上手く行けば、相手の指揮系統を麻痺できるだろう。

 さぁ諸君。歌を歌おう。約束された勝利の為に。必ずの帰還の為に。



 スキル”放送”を使用します。曲名を検索してください

                            』



 軍歌”Wir kommen wieder”を放送します。以下の項目を設定してください。


 ・何番まで流すか

 ・リピート

                                』



 設定が完了しました。再生ボタンを押して下さい。

 効果 士気向上

                        』


 ・・・などと、適当な茶番を脳内で行いつつ、朝を迎える。17日目の早朝だ。

 彼女の準備は既に出来ている。未だに名前が判らないのは気になるが、恐らく、偶然いう機会が無いのだろう。そうとしか考えられない。貯めすぎにも程があるけども。


「・・・準備できた」


 ゴブリン討伐の時に着ていた、長袖長ズボンに外套、木と皮の飛行帽モドキだ。戦車乗りの服装とはとても言いがたいが、他に比べたら十分ましだ。それに、揺れる車内での怪我を防止できる服装だ。最適な選択と言えるだろう。


「魔力、魔力ポーション共に良し・・・携帯食料も大丈夫・・・よし」


 相棒が、車体に足を掛け、砲塔へと登る。こちらもキューポラのハッチを開ける事で応える。


「よいしょ・・・っと」


 彼女がキューポラから車内へ入り、車長席へと身を沈めた。よーし。準備完了だ。


「頑張ってね!」

『いってらっしゃーい!』

「無事の帰還を祈っております」


 双子のミナとリン、元気っ娘のハル、美人なコリーが見送りしてくれる。


「いっちょでかいのを見せ付けて来い!」

「お前なら心配はない!」

「頑張れよー!デカブツー!」


 他にも、共に戦った戦友や、一緒に作業をした職人達が声をかけてくれる。フフッ、これは気合を入れなければならないな。


「・・・しゅっぱーつ」


 彼女の声を合図に、前進する。エンジンが唸り、履帯の金属音が響く。



 Wir kommen wieder (戻ってくる)



 丁度、曲もサビに入った。



 Wir kommen wieder (我らは戻ってくる)



 そうだ、我らは戻ってくる。



 Wir kommen sieggekrönt nach Haus! (我等は勝利を胸に我が家へ戻る!)



 必ず勝ち、ここへ戻ってこよう!



 Denn eines Tages (なぜならこの日は)



 何故なら



 ja eines Tages (そうこの日こそ)



 そうこれからの戦いこそ



 Ist auch der letzte Krieg mal aus (戦争がやっと終わるのだから)



 戦いに終止符を打てるのだから



 Dann seh'n die Madchen (そして町中の)



 そしてエルフの村の、始まりの街の、



 In all den Städtchen (あの娘らは)



 我々が守った人々が



 Verliebt und stolz zum Fenster raus (窓から身を乗り出し我々を迎え入れる)



 我々に歓声と感謝の気持ちを持って迎え入れてくれる事だろう!

 さぁ、出発だ。必ず勝ち、必ず戻る為に。






 Wir kommen wieder (我らは戻ってくる)






 Wir kommen wieder (戻ってくる!)






 Wir kommen sieggekrönt nach Haus! (我らは勝利を胸に我が家へ戻る!)






 パンツァー 四号戦車D型 lv 16

 状態 車外装備品紛失


 攻撃力 7.5cm kwk 38 L24 戦車砲

     7.92mm MG34機関銃×2(同軸機銃・車載機銃


 砲塔装甲 正面30mm

      側面20mm

      背面20mm

      上面10mm

 車体装甲 正面30mm

      側面20mm

      背面20mm

      上面12mm


 速度 40km/h 300ps

 重量 20.00t


称号

・陸戦の王者

・エルフの楯

・ワールドクエスト発見者

・貢献した者

・新型受領


スキル

・目星 6lv

・拡大眼 6lv

・熱源探知 7lv

・音源探知 5lv

・マッピング 8lv

・風魔法 2lv

・放送 2lv up!

・迷彩 3lv

・隠密 5lv up!

・不整地走破 3lv up!


控え

・火魔法 1lv


さて、そろそろ我らが戦車が動き出しますよ!

※今回から、時系列把握の為に小説内での時間経過を後書きに記載します。


16日目~16日目夜

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