2人と2つの戦い
初めて、”人型”の戦闘シーン書いた。
うん。
ナニコレ難シ過ギ。モウ書キタクナイレス・・・。
「・・・ふんっ」
飛んでくる石を避け、シュテッヒの腹で弾く。続けて両手から右手に持ち替え、一気に木の根元へ駆け寄り、その幹を蹴り上げて上へ飛ぶ。空いた左手で枝を確りと掴み、体を引き上げ更に上昇。勢いそのまま、右手のシュテッヒを下から上へ振り上げた。
「キギャッ!?」
・スローイングモンキー
2~4匹で行動する猿のモンスター。木の上から石や木の実、木片等の、あらゆる投げれる物を投げつけてくる。その腕力は投げる事は勿論、木の上を素早く移動する事にも発揮される。
体を切り裂かれた猿が、血を撒き散らしながら地へ落ちていく。深追いはしない。どうせあの傷では、再度木を登る事はできない。
落ちていくのを横目に確認しながら、掴んでいた左を離し、右足で木を蹴り飛ばす。
「っと、やはりな」
俺が先程までぶら下がっていたそこを、石が剛速球で通り過ぎていった。あれに当たっては唯ではすまないからな。
「そっちはどうだ?」
「問題・・・ありませんよっ」
後ろから猿の悲鳴が聞こえた。手を貸す必要は無いな。手っ取り早く終わらすか。
シュテッヒを脇構え(右足を引き体を右斜めに向け刀を右脇に取り、剣先を後ろに下げた構え方)で持ち、まだ猿が居ると思われる木と、先程切り落とした猿とが、一直線に並ぶように旋回する。一直線になると同時に、突っ込む。地でもがき苦しむと擦れ違う瞬間、脇構えで構えていたシュテッヒを振り上げる。肉を裂く感覚を確りと感じた。
そのまま走り続け、振り上げたシュテッヒを左手だけの脇構えをする。塗り返すように、木を蹴り上げ上へ飛ぶ。そして右手で枝を掴み、体を持ち上げシュテッヒを振り上げた。
「ギギギャッ!」
またしても、猿が木から落ちた。まだ後ろでは戦闘が続いている。流れ玉に当たっては敵わんから、さっさと片をつける事にする。木から降り、シュテッヒを猿の首へ振り下ろした。息絶えた猿が、白い粒子と成って消えていった。
「こっちは終わった。手は要るか?」
「要りません。後少しで終わります・・・はい、終わりました」
俺と同じ様に、木を蹴り上げて飛んだ蜻蛉が、短く持った槍で猿の胸を突き刺していた。
蜻蛉の持っている槍は、森でも戦える程度の長さしかない。大体2m程度だ。4mやら6mやらを余裕で越える”槍”というカテゴリでこの長さは、とても短いと言っていいだろう。それでも、2mは俺のシュテッヒより長いから、森のような狭い場所では扱い難い筈だ。それなの、何不自由なく戦えているように見える。凄いプレイヤースキルだ。
「上手いものだ。そんな小さい場所にピンポイントで当てるとは」
「それは貴方もでしょう。石を避けながら肉薄できるなんて、驚きです」
蜻蛉はさも難しい事の様に言うが、あの程度なら誰でも出来るようになるさ。それより、空中という踏ん張りが利かない状態で、猿の胸を違わず刺せるあの実力・・・相当な実力者だな。初期装備でも戦えるのは、プレイヤースキルが理由か。
視界の端に浮かぶHPバーを確認する。体力は8割といった所。ちょっと食らったな。あの石の一撃は中々に重かったから、このダメージも納得だ。防具の性能もあるだろうし、もう食らいたくない。だが・・・
「また何かが来るな」
「えぇ。次は・・・猪でしょうか」
「だろうな・・・」
バキバキッと、森の奥から何かがかなりの速度で向かってくる。これは確実に猪だな。今まで戦ってきたモンスターで、あんなに煩いの猪しかいなかった。
あれは戦い易いのだが、火力が物凄く高い。油断すれば一発でかいのを貰う事になる。
それにしても・・・
「なぁ・・・」
「どうしました?」
「エンカウント率、高くないか?」
「・・・貴方も思っていましたか」
そう、やけにエンカウント率(敵と遭遇)が高い気がするのだ。さっきから連戦に連戦を重ねている。猿・・・スローイングモンキーとの戦闘は、これで連続3回目だ。いい加減飽きてきた所だったから、猪の到来は丁度良い気分転換になりそうだ。
「なんで高いんだろうな」
「さぁ?私にはわかりません。ですが、一つだけ、分かる事がありますよ」
「ん?なんだそれは」
何か気付いた事でもあるのだろうか。もったいぶった話し方だから、それなりに良い情報なのだろうか。
「それは、一杯戦えるって事ですよ」
「・・・は?」
槍を構え、笠を深く被り直す蜻蛉。いや、情報ってそんだけかよ。・・・いや、そんだけじゃないな。とっても大事な情報だ。
「あぁ。確かに、一杯戦えるな!」
一杯戦える。それは、とても良い事だな!俺もシュテッヒを構え、迫り来るその音源に警戒する。
「お出ましですよ!」
「おう!」
目の前の木々を折りながら、それはそれは大きな猪が現れた。2m程の、茶色い毛皮と、白く大きくそして鋭い牙が特徴のその猪が、俺達の敵だ。
・ラミングボア
その巨体と、自慢の牙を武器に進路上の障害を蹂躪する。その一撃は、ビッグベアーすら吹き飛ばされる程の威力を秘めている。
その皮は装甲と呼べるほどの硬さを持っており、並大抵の攻撃では歯が立たない。
「フゴォオオオ!!」
「戦い方は知ってるかっ!?」
「勿論っ!」
この言を合図に、ほぼ同時に左右に散開、俺は右に避ける!
コイツとの戦い方は至極単純っ、兎に角側面に回りこみ、唯一装甲化されていない”目”を潰す!
「ふんっ」
早速一撃を入れる。赤く光るシュテッヒを真っ直ぐ引き、そして突き出す。鋭い刺突が、左の眼球へ突き刺――さらなかった。
「ちぃい!」
瞼を閉じたか!ノーダメ・・・いや!瞼が焦げている!繰り返せば貫通する筈だ。
「ブガォオオオ!!」
くっ、タゲがこっちに向いたか!目に刺さったんだから当然だな!
「攻撃頼む!」
「わかった!」
打てば響く!確りと理解してくれたようだ!今までソロだったから、連携できるか心配だったのだが、どうやら杞憂だったようだな!おっと、ラミングボアが首を反対側に振った――
「残念だったな!」
こんな大きな予備動作、当たる筈がないぞ。反対側に負って勢いを付け、俺に向かってその牙を突き出してきた。勿論食らう訳がない。シュテッヒの腹で受け止め、その衝撃を利用して後ろへ飛ぶ。飛ばされた先にある木へ着地し、直ぐ横方向へ飛びのく。
「危ないな」
先程着地した木に、猪が突進した!さすがラミングボア!名前通り体当たりの威力は相当だな!
「木が真っ二つに折れやがった」
突進によって木は折れた。が、その勢いはそれでは収まらず、更にその先にある木を折っていく。計3本の木を折ると、猪が制動をかけた。凄いな、自分で制動しないと止まらない程の力か!
「大丈夫ですか?」
「ふんっ、あの程度に当たる訳がないだろう」
あんな露骨な予備動作から繰り出される突進程度、余裕を持って避けれる。避けれないと生き残れないからな。
「実は、コイツは一回しか倒してない」
「おや?奇遇ですね。私もです。」
蜻蛉もか。この猪、皮が物凄く硬くて刃が中々通らない。倒そうにも、一撃食らえば一撃必殺レベルの攻撃が繰り出されるし、弱点である背面は、素早く反転され隠れる。その為、倒すのが面倒で、初戦以外は両目を潰して逃げていた。どうしようもないからな。だが、今回は別だ。
「今回は独りじゃない、二人だ。手早く片付けるぞ」
「それも奇遇ですね。私も同じ事を考えてました・・・よっ」
振り返り、突進してくるラミングボアを二手に別れて避ける。始めの塗り直しだな。
「片目を潰す!お前は弱点を頼むぞ!」
「わかりました!」
この猪は、両目を潰されると錯乱状態になり、その場で暴れ出す。そうなればもう近づく事は不可能になる。だから、あえて片目だけ潰す。それで、戦闘能力を低下させつつ、錯乱状態に成らないようにする。ついでにタゲ取りもできるって考えだ。
「狙うは勿論・・・」
仄かに赤いシュテッヒを構え、再度左の目へ攻撃を試みる。タイミングは相手が突撃する瞬間。相手の突進の力で、自らの目を潰させる。
現状、相手は目に一撃を入れた俺しか、眼中にないようだ。お陰で蜻蛉が自由に動ける。死角である背面に回り込む様に動く蜻蛉。その狙いは、”比較的”皮が薄いお尻や腹だろう。直ぐ攻撃できるだろうが、まだ攻撃しないのは、俺が目を潰すのを待っているんだろう。速めに片付けないとな!
「ブモォオオオ!!」
咆哮と同時に、突進してくるラミングボア!
「お前の視界!貰い受ける!」
「プギャギィイイイイ!?」
赤く発光するシュテッヒは、硬いその皮を切り裂き、焼き切り、突破した。その刃は、角膜を裂き、瞳孔を突き破り、水晶体を焼きながらガラス体を蒸発させ、視神経を抉り取った。
「確かに頂いたぞ!」
これで奴の左側の視界は死んだ。後は死角に入り続け、弱点へ攻撃し続ければ良い。
「次は、私の番ですね!」
目を抉られた痛みに、突進を止め暴れるラミングボアへ向けて、槍を真っ直ぐ突き刺す蜻蛉。その穂は、猪の右後ろ足の、腿へと深く突き刺さる。機動力を削ぐ訳か。
「ブギャァアアア!?」
「これは痛そうだな・・・っと!」
すぐさま俺も攻撃へ加勢する。俺も狙うのは左後ろ足の脛。確実に戦闘力を奪い、そして確実に仕留める。
切り終わったら直ぐ離脱。蜻蛉も槍を引き抜き後ろへ飛びのく。その槍、よく折れなかったな。中々の耐久力だ。
「ギャアアアアアア!!」
悲鳴を上げながら、その場で暴れるラミングボア。不意打ちでやられては敵わん。落ち着くまで待つ。
「蜻蛉、お前の槍では心臓までは貫けるか?」
「ふふっ、この長さでは難しいですが、出来ない訳ではありませんよ」
「どういう事だ?」
「一回、それで仕留めてますので」
「なるほど、心強いな」
猪を刺殺する場合、先端の尖った槍や鉄筋を使って、喉から一気に心臓まで刺す・・・らしい。俺は猟師じゃないから詳しくはわからん。
で、蜻蛉はこの方法で一回仕留めてるのか。なら心配は要らないな。猪の突進の力を利用して突き刺すのだが、成功してるから大丈夫なんだろう。突き飛ばされたらそれまでだ。
「じゃあ、それで頼むぞ」
「わかりましたが、貴方は?」
「首を掻っ切る」
「できるんですか?」
「できた」
「それは心強いですね」
少し前の俺の言を返してくる。余裕なようだな。さて、ラミングボアの首を掻っ切る、と宣言したは良いが、やはりそれなりに時間がかかる。皮が厚いから、切り裂けるまで攻撃を当て続けないといけないのだ。一応、一回は成功している。それに今回は、シュテッヒの火属性がある。前回よりは簡単な筈だ。
「ブモォオオオ!!」
猪が、怒りの篭った眼で此方を睨む。休憩は終わりだ。
「行くぞ」
「はい」
ラミングボアが真っ直ぐ突っ込んで来る。俺も走る。
「残った右目をやる。一撃で決めろ」
「わかりました!」
おれも一撃で決めねばならない。”斬る”から”刺す”へ変える。切っ先を突き出す為、手元へ引き絞り突撃する。
下側から突き出される牙。それを体を捻り避ける。そして直ぐ、引き絞ったシュテッヒを突き刺す。
「グギャガアア!?」
「ぐぅっ」
目へ突き刺す事には成功したが、そのまま撥ねられてしまった。その衝撃で跳ね飛ばされる。
「がぁ!」
そのまま空を飛び、木に叩きつけられる。体力バーが減少する・・・が、死に至りはしない!そしてシュテッヒも手放してはいない。跳ね飛ばされる時に一緒に抜けたようだ。
素早く立ち上がり、ラミングボアへ駆け出す。まだ戦いは終わっていない。
「グギャァァア!?」
ラミングボアは眼を奪われた痛みと、視界を失った混乱によって行き足を止める。が、その勢いは一瞬で止める事は当然出来ない。そのままゆっくり減速しながら進み続け――
「そこぉおお!」
蜻蛉が正確に喉元へ、その短い槍を突き入れた。深々と突き刺さる槍と、それでも止まらないラミングボア。そのままズルズルと、蜻蛉とラミングベアが進み・・・
血が溢れた。
突き刺さった槍の根元から、大量の血が溢れ出した。その血を浴びた蜻蛉が、赤く汚れていく。
「!?!?!?」
「うわっ!?」
喉を射抜かれたラミングボアが、声無き咆哮を発する。首を上へ突き上げ、暴れ出す。蜻蛉がその衝撃で跳ね飛ばされ、木へその身を打ち付ける。その手に槍は無い。その槍は、今だ尚ラミングボアへ突き刺さっている。
首を振り上げ、邪魔者・・・蜻蛉を振り払おうとしたのだろう。それは実に効果的な行動だった。だが、同時にそれは、死を早める行動だった。
「隙だらけだぞ」
上へ突き上げられたラミングボアの首。当然、俺から見たら喉元が見える。そして、振れば当たる距離まで駆け寄っている。
やる事は唯一つ。赤く光るシュテッヒを、その無防備な顎下を突き破り、脳天へ突き刺す。
脳と心臓。この二つを突き刺されたラミングボアは、一瞬、ビクンッと震えた後、ゆっくりとその巨体を白い粒子へ変えていった。
肉の焦げる臭いが、鼻に残っていた。
「俺達の勝ちだ」
彼”等”の、レベルが上がった。
皆さん!トクメイです!
申し訳ありません、土日投稿できませんでした!
言い訳をしますと、日曜日に資格試験がありまして、それの対策に土曜、本番と疲れで日曜を消費してしまいました。
・・・と、言い訳してますが、実は家に帰って友人と戦略ゲーを月曜日の1時まで続けてまして・・・時間自体は余っていたのです!一応、途中まで書いていましたが!
と、いう訳で、今回は全面的に自分が悪いですハイ。てへぺろ
一応、活動報告にて報告はしていますので「あれ?更新してない?」と思いましたら、活動報告をご覧になってください(見る人は殆どいないんですけどね。ハメルンのPV20程でしたし




