突撃突撃また突撃
今回はグロいぞ、気をつけろ!
「取り合えず、私達が先遣として出ます。ここで待っていて貰いたい」
その言葉を言い残し、三人は行ってしまった。まぁ、理由は判る。自分煩いからな。
特に従わない理由も無いので、指示された通り大人しくする。エンジンを停止させると、それと同時にスキルの効果で騒音が静まっていく。これでよく聞こえる筈だ。
「・・・かなり居る、数え切れない・・・。足音と・・・喋る声?が常に聞こえる。最低でも20は居ると思う」
お、多いな。しかも、最低が20か。もっと居るのは確実か。・・・うむ、恐らく、規模が確認でき次第帰還か。まぁ、三人と一両では無理だろうな。この子は魔法を使えるようだが、戦闘能力は未知数だし。
「・・・あっ」
どうした?何か聞こえたか?
「・・・不味い。今すぐ逃げられるようにして」
了解。エンジンに火を入れる。さっきまで起動していたエンジンは直ぐに起動し、高速で回転し出す。スキルで抑え切れず、音が漏れ出す。
しかし、一体何があったんだ?
「木の枝の折れる音が聞こえた。それと同時に群が静かになった。恐らく、感づかれた」
・・・枝が折れる音だぁあ?まさかあいつ等、踏んだのか?いやまさかな。彼らはエルフだ。森の歩き方については種族レベルで優れている。我々とは比べ物にならない。そんな連中がこんな非常時にそんな残念なミスをするとは思えん。
「走って戻ってきてる。群の方も騒がしくなった」
・・・仕方ないな。失敗しない生き物など存在しない。腹を括ろう。
使える手段はラムと上を向いたままの機銃か。基本はラムだな。ただ、自分の装甲をゴブリン程度が貫けるのだろうか。木で塞がれている部分は弱いだろうが、それ以外は鉄板だからな。もしかしたら、無双できるかもしれない。魔法が無かったらの話だがな。
前方から人影が三つ走ってくる。先行していた男勢だ。
「すみませんやらかしました!」
「逃げるんだよー!」
「やってしまったぜ!」
よし、自分が囮になるとしよう。その間に彼らには逃げて貰おう。この情報を確りと持ち帰って貰うのだ。その為に、ここで時間を稼ぐ。
「ちょ、早く逃げますよ!奴ら50はいました!勝てっこないです!」
「・・・こっちに向かって走ってくる。かなり多い」
「まずいぞ!俺達ではどうしようもない!」
「多勢に無勢だ、数の差で負けている!」
「早く逃げるぞ!動けって!」
嫌だ。自分はここに残るぞ!それよりお前らが早く逃げろ。逃げる時間がなくなるぞ。
「・・・早く貴方達は逃げて」
「なっ、判ってるのか!?直ぐ敵は来るぞ!?」
「この子、ここで囮になるつもり・・・だと思う」
お。
「貴方達に情報を持ち帰って貰わなきゃいけないから、囮に?」
「そ、そりゃあそうだが、この鉄の箱がゴブリン共に勝てるという見込みは無いぞ!」
「そうです!それに、これの速度ならもっと速く帰れますよ!」
「この子の硬さは私が保証する。ラッシュボアの体当たりを耐えたから」
「ラッシュボアぁあ!?」
「あれの体当たりを耐えたのか!?」
ラッシュボア?あぁ、あのデカイ猪の名前だったか。あれの体当たりのお陰で履帯が千切れた覚えがある。中々の威力だった。何度も食らいたくは無いが、耐えれない程の威力ではなかったな。
「だから大丈夫、早く行って」
「君はどうする!こいつは良くても君は無理だろう!」
「私が逃げても足手纏いになるだけ。だからこの子の中にいとく」
判ってるじゃないか。戦闘中は中に入って貰うつもりだったのだが、自らの意思で入って貰えるのなら話は早い。ハッチで押し込めるつもりだったが、その必要は無くなったな。
「さ、逃げて。直ぐそこまで来てる」
「・・・判った」
「おい!本当に良いのか!」
「仕方ないだろ!ここに残っても無駄死にするのと、情報を持ち帰る、どっちがいい!どっちが村の為になる!」
「ぐっ・・・持ち帰る、だ」
「ならば逃げるぞ!ここは任せた!」
「ちくしょう!生き残れよ!必ず戻ってくる!」
逃げ往く三人。それでいい。さて、そろそろだな。前方の森から何かが接近してくるのが見える。多い、20は居るか?
「・・・頑張って」
おうとも。車内に入ったのを確認して、ハッチを閉める。さぁ、現状の確認だ。場所は森、木が生い茂っており機動戦には向かない。敵は小回りの効く小型の人型。地形的には我が方不利か。防御面にこそ自信はあるが、攻撃面ではラムのみだ。攻撃方法を見切られたら、ラムが当たらなくなる筈だ。闘牛の様に体当たり直前で避けられるだろう。
見えてきた。確かに、ゴブリンだ。初めて轢いたゴブリンと同じ見た目をしている。ただ、今回は数が尋常じゃないな。
よしまず一撃目だ。エンジンの出力を一気に上げ、見え始めた敵集団に突っ込む。エンジンが唸り声を上げ黒煙が噴出し、重い車体を押し出す。
「あわわっ」
突如鳴り響いた轟音に驚き動揺するゴブリン達。先頭のゴブリンの表情が歪む。驚きだろうか、それとも恐怖だろうか。それは判らない。だが、無意味だ。
「ひっ!何かぶつかった!?」
総重量9.50tの鉄の塊がゴブリン達へぶつかる。吹っ飛び、後続に叩き付けられるが、そこへ追撃が襲い掛かる。ぶつかったにも拘らず全く勢いが衰えない二号戦車が、ゴブリン達を薙ぎ倒す。肉の潰れる感触が、骨が折れる感触が、履帯を通じて伝わる。鮮血が飛び散り装甲を血が鮮やかに彩るが、それも直ぐに白い粒子となって消えていく。そのまま進み続け、木にぶつかり停車する。
「あうっ・・・痛い」
ふむ、大体10匹は殺ったか。だが、レベルアップにはまだ足りない様子。
右の履帯を時計回りに回転させる事で、車体を時計回りに旋回させる。表皮の抉れた木を、ゴブリン達が恐怖の表情で見る。フハハハハ!怯えろ!竦め!恐怖に駆られて死んでゆけ!
旋回を終え、再度突撃の体勢を取る。そして突っ込む。
「ま、また!?」
突っ込んで来る自分に驚いて逃げ出すゴブリン。だがしかし、逃げる方向を間違えたな!避けるなら横方向に避けるんだな!進行方向と同じ方向に逃げていくゴブリンを、追いかける形で轢いていく。白い粒子が自分を包むように消えてゆくが、まだレベルアップには足りない。次だ、次の集団を狙う。
「こ、今度は何!?」
方向転換の為に旋回を開始していると、後ろのゴブリン達が剣や槍で攻撃してきた。だが残念、その程度では効かない。欠け、折れ、虚しく無力化される武器達。絶望に歪むゴブリン。敵ながら哀れだっ!?なんだこの炎は!?
視界が炎に包まれる。なんだ!?火炎瓶か!?不味い不味いとても不味い。二号戦車はガソリンエンジンだ。そしてガソリンは-40℃の時点で燃焼に必要な量の可燃性蒸気を発生させる。つまり-40℃の時点で燃焼できる条件を整えてるのだ。そこに火の粉でも落ちようものなら即燃焼だ!そして二号戦車のエンジン部は密閉されてない!排熱排気用の隙間から簡単に車内に入り込める。本当に不味いぞ!
・・・と思っていたが、杞憂で済んだようだ。炎は直ぐに消え、表面が黒く汚れた程度に収まった。
・・・恐らく、あれが魔法なのだろう。初めて見たぞ。火球とか、そんな感じの魔法だろうか。引火しなくて良かったが、魔術師は早々に退場願わなくては。辺りを見回す。すると2発目が飛んできた。飛んできた方角から大体の位置を割り出す。正面から火球を受け止めつつ、その方向へ突っ込む。視界が一瞬真っ赤に染まるが、それは直ぐに晴れる。木々の向こう側に何匹かのゴブリンがいる。その中に、ローブに身を包んだゴブリンを発見。十中八九このゴブリンが魔術師だろう。進路を少し修正し、正面から轢く。周りのゴブリンを吹き飛ばしつつ、魔術師を轢き殺す。まだレベルは上がらない。ぐぬぬ、やはりある程度レベルが上がると必要経験値の量も増えるか。まぁいい。敵は大量にいる。
魔術師ゴブリンを轢き、そのまま護衛と思われるゴブリンをついでで轢き殺す。あ、1匹横に避けやがった。不味い、見極められたか?取り合えず、旋回して突撃態勢を整える。向き直り、次の集団を定め、突撃する。が、何匹か逃した。くそ、学習したか。これ以上の無双は無理、だな。
取り合えず、もう一度突撃だ。
何度も突撃したが、戦果は0だ。学習したゴブリンは、自分の突撃に合わせて横方向に回避する事を学んだようだ。
レベルはまだ上がらない。だが目的はレベルアップではない。時間稼ぎである。撃破できるならそれでいいのだが、それも難しい。時々火球が飛んで来る事から、まだ魔術師が確実に潜んでいる。今はまだ引火してないからいいが、場合によってはエンジンがやられる可能性がある。攻撃面で死んでいる今、足までやられる訳には行かない。
攻撃しようにも対策されて戦果は望めない。戦い続ければ足を持っていかれるかもしれない。目的は敵勢力の撃破じゃないしレベルアップでもない。つまり、ここで戦い続ける理由は無い。・・・退き時か?退くなら撒く必要があるが、自分の速度なら不可能では無い。・・・よし、退くか。逃走ついでに最後の突撃だ。何度も突進を続けた結果、バラバラになっているゴブリンの内1匹に狙いを付け、突撃する。勿論ゴブリンは横に避ける。が、本来の目的は逃走だ。そのまま反対側へ突き抜け逃走だ!
問題は、逃げる方向に村があるか、だ。後、戦闘で中は凄い揺れた筈。大丈夫だろうか。
パンツァー 二号戦車F型 lv 14
状態 旋回装置 大破
昇降装置 大破
2cm kwk 30機関砲 大破
攻撃力 2cm kwk 30機関砲
7.92mm MG34機関銃
砲塔装甲 正面30mm
側面15mm
背面15mm
上面10mm
車体装甲 正面30mm・下部35mm
側面15mm
背面15mm
上面15mm
速度 40km/h 140ps
重量 9.50t
称号
・陸戦の王者
・エルフの楯
・ワールドクエスト発見者
・貢献した者
スキル
・目星 5lv
・拡大眼 6lv
・熱源探知 5lv
・音源探知 4lv
・マッピング 7lv
・風魔法 1lv
・火魔法 1lv
・迷彩 4lv up!
・隠密 4lv up!
・不整地走破 2lv up!




