村にて
「よし、止まれ。お前ら!降ろすぞ!」
指示に従い、停車する。それと同時に、周りのエルフ達が後ろの荷車から丸太を降ろしていく。先端を鋭く尖らした、まるで杭のような丸太である。それを縦に突き刺していき、簡易的な防壁とする。その先では、土に円匙・・・あの、東日本か西日本かで呼び名がスコップになったりシャベルになったりするあれを突き刺している。堀でも掘っているのだろう。敵が来たら、あの中に落とす訳だ。そんでもって熱々の油やら熱湯やらを流す。うむ、一網打尽だな。
「降ろしたなー?もういいぞ、戻ってくれ」
了解。前進する。ただ、引っ張っている荷車に負担が掛からないよう、円を描くように機動する。よし、大丈夫だな。では、次の資材を受け取りに行こう。
今、自分は資材運びをしている。理由は単純明快。暇だからだ。ただただあそこで石像ならぬ鉄像になっているのは、自分の趣味ではないのでな。という訳で、今まで引っ張ってきた荷車の近くで、ロープで結び付けてくれるのを待っていたのだ。・・・横っ腹に穴さえ開かなければ戦力になるんだがな!本当に!どこぞの誰かが攻撃さえしなければ良かったんだがな!
過ぎた事を考えていても仕方ない。村の住人エルフは判って貰えなかったが、ここまで護衛していた彼女なら判るだろうとずっと待っていた。案の定、通りかかった双子が理解してくれた。そしてしっかり結んでくれた。
という訳で、今まで引っ張ってきた荷車を引きながら資材置き場へ向かった次第である。うむ、陣地構築には重機がいるだろう。直接的な構築はできなくとも、構築に必要な資材を運ぶ事はできる。気分はさながら工兵である。
資材を積んでは運び、降ろして貰う。降ろし終われば、また戻り資材を受け取る。それのサイクルである。単純作業の繰り返しだ。だがまぁ、鉄像になっているよりかは遥かにマシである。動けるというのはこんなにも楽しかったのかと再度実感した。動けるってすばらすぃ!
そんなこんなで運び続けていると、どうやら休憩時間となったようだ。皆が作業を止め、配給係が運んでくる食べ物を受け取っては口に含んでいる。因みに、その食べ物を運んでいるのは自分だったりする。次の資材を運ぶぞーっと、思っていたらエプロンで身を包んだ女性に手招きされてだな。付いていったら、出来立てホヤホヤの食事が、大きな鍋に入っていた訳だ。そして自分はそれを運ぶ為に呼ばれた訳だ。因みにメニューはスープとパンのようだ。よく見えなかったので具体的な内容は判らないが、男勢の見事な食いっぷりと表情からして、相当美味しかったのだろう。羨ましい限りだ。
食事運びを終えれば、作業は終わりだ。休憩時間が終わるまで待つのみだ。その間、自分もそこ等をウロウロしているとしよう。
そうだな、陣地構築がどれ程進んでいるかを見て回るとしようか。どうやら、この村は中心部の巨木を中心に円形に広がっている様子。その村を包み込むように防壁を作っているようだ。まぁ、仕方ないか。敵が何処から来るか判らないから、全体を守らねばならないのだからな。来る方角さえ判っていれば、一方方向のみに作業員を集中できるのだが。まぁ、キングと呼ばれる位だ、回り込む程度の知恵はあるだろう。どちらにしろ、包み込むように防壁を作る必要がある。仕方ないな。
村、防壁、堀、の順で構築されているな。・・・ほう、この堀は凄いな。地面に傾斜を設け、堀に滑るような構造になっている。素晴らしいな。そして、後続に押された前衛は堀の中へ落ちていくと。そして落ちた前衛は後衛に踏み潰されて足場になる。勿論前衛は死ぬ。
そして防壁から堀方向にも傾斜が設けられている。これは逆に進み難くする為だろう。この傾斜部に油を注げば・・・エグイ事になるな。熱々の油で肌は焼け、進もうにも足元は滑る。遅滞戦術にはもってこいだな。
防壁自体はこれといって特徴はないな。何処にでもありそうな防壁である。まぁ、特殊な構造を施して耐久力が落ちたり、作業効率が落ちる訳にも行かない。妥当な判断だろう。
さて、粗方見終わったし、そろそろ時間だ。仕事に戻るとしよう。・・・働く、とはこんな事なのだろうか。将来、自分もこのように汗水流しながら働くのだろう。・・・いまの自分は汗水というよりオイルと排気だけども。
あれから5日程たった。自分の初INから10日程だろうか。村の防衛設備の構築は最終段階へと向かった。速すぎるが、村の規模もそれ程ではないという事と、作業自体がそれ程難しいものではないのがあるだろう。それ以外としては、エルフの練度・・・作業効率が素晴らしいというのもあるだろう。
あとは敵の来襲まで待てばいいのだが・・・
「全然来ませんね」
「うむ・・・」
村長と補佐と思われる人物が、自分の隣でそう話す。
そう、来襲の予兆が全く見れないのだ。まぁ、クエスト発見のタイミングが相当速かったようだし、それが原因だろう。・・・つまり、相当な時間が余ったのだ。暇なのである。言ってしまえば。
村のエルフ達は、訓練やらに物資生産に精を出している。来る事が明確に判明しているのだ。それを理解しているから、対策をしているのだろう。戦士は集団での訓練を毎日続け、生産職は戦闘特需の量産に明け暮れる。職人は作り終わった防壁を崩して作り直すとかいう良い意味で阿呆な事をしている。
皆、各々で対策をしているのだ。・・・自分も、何かしらの対策をせねばならんな。
ふむ、何があるだろうか。物資を運ぼうにも、もう要らぬと言われたし、訓練しようにも武装が吹っ飛んでいるから何もできない。生産なんてもってのほかだ。うーん。何かできること・・・何かできる・・・事。あ、あるじゃないか!すっかり忘れていたぞ!うむ、自分はそういえばプレイヤーだったな。いつの間にか己がプレイヤーである事を忘れる程に馴染んでしまったようだ。ゲーム内のこの10日間、すっかり現実を忘れていた。
さて、NPCには出来ない、プレイヤーの特権を使うとしよう。それは、掲示板の利用である!いやぁ、初めてだからな、緊張する・・・。
【発見者よ】情報収集スレその6【褒めて遣わす】
1.名無しさん
このスレはTWO世界の情報を集めるスレです。どんな些細な情報でも構いません。
兎に角情報が少なすぎる。この未開の地を生きるには、君の情報が必要だ!
次スレは>>980を踏んだ方にお願いします。
2.名無しさん
スレ立て乙だが偉そうだなおい
3.名無しさん
偉いからな!(攻略組感
4.名無しさん
発見者はその攻略組に居なかったんだよなぁ
5.名無しさん
つまりは攻略組より進んでいるという・・・
6.名無しさん
やめろ!攻略組の面子が!
7.名無しさん
攻略しない攻略組に存在価値など・・・
8.名無しさん
あれ?それもう攻略組じゃなくね?
666.裁判長
さて、そろそろ情報が集まってくる頃じゃないかな
667.名無しさん
よりによってそのコテハンでその番号を踏むのかww
668.名無しさん
情報、書いていいかな?
669.裁判長
どんとこい
670.名無しさん
情報来た!これで勝つる!
671.名無しさん
や っ た ぜ
672.名無しさん
森の奥深くにてエルフと遭遇。その際ゴブリンを殲滅した。このゴブリンが、ゴブリンキングとやらの配下だったようだ。
673.エルフスキー
ガタッ!
674.エルフスキー2
ガタガタッ!
675.エルフスキー3
ドンガラガッシャーン!
676.裁判長
ギルティ
678.エルフスキー
ちょwwまだ何もしてないww
679.裁判長
等と供述しており
680.エルフスキー3
それお前のセリフじゃないだろww
681.名無しさん
まぁまぁ、そんな話より情報だ。な?
682.裁判長
そうだな、すまぬ。お詫びと言っちゃなんだがこの三人を起訴するとしよう
683.エルフスキー2
な ぜ に
684.名無しさん
どうやら、ゴブリンキングとやらは仲間意識が強いらしく、その配下のゴブリンを殲滅してしまった為、エルフの村にて防衛線を構築中なり。始まりの街に侵攻する前に、エルフの村に侵攻すると思われる。
685.名無しさん
エルフの村!
686.名無しさん
という事はやはり、NPCのエルフ・・・?
687.報告者
判り難いから名前を変更。
うむ、天然物のエルフ達だぞ?お約束通り、美形ばかりだった。
688.腐った女エルフ
美男も居ましたか!?
689.報告者
いたぞ
690.腐った女エルフ
,.へ
___ ム i
「 ヒ_i〉 ゝ 〈
ト ノ iニ(()
i { ____ | ヽ
i i /__, , ‐-\ i }
| i /(●) ( ● )\ {、 λ
ト-┤. / (__人__) \ ,ノ  ̄ ,!
i ゝ、_ | ´ ̄` | ,. '´ハ ,!
. ヽ、 `` 、,__\ /" \ ヽ/
\ノ ノ ハ ̄r/:::r―--―/::7 ノ /
ヽ. ヽ::〈; . '::. :' |::/ / ,. "
`ー 、 \ヽ::. ;:::|/ r'"
691.裁判長
ギルティ
692.エルフスキー1
ま た こ の 展 開 か
というかAAww
693.名無しさん
して、そのエルフの村の位置は?森と言っていたし、西か?
694.報告者
恐らくそうだ。元々は北西へ進んでいたんだが、途中で迷ってしまったんだ。だが、恐らく西だと思う。後で調べてみるとする。
695.名無しさん
成程、此方から増援を送るから、待っていてくれ
696.報告者
送ってくれるのは有り難いが、困難を覚悟してくれ。どうやら途中の森は迷路のようで、迷うのは確実だ。また方向感覚も狂う。頑張ってくれ。
697.名無しさん
お、おう。頑張ってみるわ
まぁ、こんなもんかな。上手くできたかは判らんが、一応内容を伝える事はできただろう。
さて、またする事が無くなった。掲示板に情報を乗せ、村の作業も終えた。レベルアップという手も有るが、一人で森へ出向いて帰れる自信がない。やはり誘導係は必須だろう。・・・だがまぁ、近くだったら大丈夫だろう。うん。奥まで行かなければ迷わない・・・筈だ。
じゃあ、直ぐにでも行くとしよう。準備するものなんて元からないからな。
「何処に行くの?」
なっ。誰だ?
何だ、君か、知的そうな子よ。・・・君の名前、本当に何なんだろうね。知りたいが、口が利けないからなぁ。文字通り。
受け答えできないので、ゆっくり森へ進む事で答える。判ってくれるだろうか?
「・・・帰るの?」
いやそうじゃない。停車する。
「違う?じゃあ・・・なんだろう」
流石に判らないかなぁ?どうしようか・・・。
「・・・よし」
お?どうした?いきなり近づいてきて・・・あぁ、成程、自分と一緒に来る訳か。なら途中で理解できるかもしれないな。
よし、車内へ案内しよう。キューポラのハッチを開く。
「・・・お邪魔します」
うむ、遠慮せずに入ってくれ。外は危ないからな。
車内は例の攻撃で広くなっているし、元は身長の大きいドイツ人用に設計されている。女子一人は十分に受け入れる事ができるだろう。座席は吹き飛ばされてなかったしな。
開けっ放しのキューポラハッチから外に顔をだす知的少女。うむ、準備は万全だな?さて、出発するとしよう。
エンジンが回転し出し、人一人分重くなった二号戦車を押し出した。
・・・そういえば、戦車乗りは総じてヘルメットやガードを付けている。戦車は不正地・・・つまり、凸凹で起伏の激しい土地を走る。その為、車内は物凄い振動と揺れに襲われる。そしてそれに揺られて搭乗員は壁やら機材やらに体をぶつけまくるのだ。慣れたら大丈夫だが、初めは無理だ。・・・怪我、しないといいのだが。




