その頃、他の者達は
「何処の誰かは判らないが、お手柄だな」
「あぁ。敵がいつか来る、それが判っただけでかなり有利になれる」
説明の通り、このクエストは見つかるタイミングが速ければ速い程有利なのだろう。始まってまだ1週間ちょっと。これは相当速い筈だ。
「よし、静かに!これより我々の方針を決定する!」
手の平を叩き合わせ、注意を引く。場所は初めてこの世界に来た時の広場だ。勿論だが、俺の仲間じゃない他のプレイヤーもいる。そいつらの注意もついでに引く。
「さて、早速このクエストに対応するとしよう!敵が来るのは判っているが、何時、何処から、どれ位の数で、が判っていない!できるのは戦闘力を高め!物資を備蓄し!調査する事だ!」
ここで一端言葉を切り、辺りを見回す。よし、しっかり注意は引けてるな。他のプレイヤーもこちらを見ている。狙い通りだ。
「戦闘厨共!戦う事しか脳のねー連中!お前らは兎に角戦え!レベルを上げろ!生産組が安全に資源を集めれるようにモンスターを駆逐しろ!」
「おぉ!」
「了解!」
「任せろ!」
「「「おぉおおお!!」」」
仲間が騒ぎ立て、それに大衆が続く。簡単に言えばサクラだ。
「生産厨共!物を作る事にしか頭を回さん連中!お前らは兎に角量産しろ!貴様らの作った物資があれば、戦士は何時までも戦い続ける事が出来る!」
「作るぜ!」
「どんどん作るぜ!」
「品余りで恐慌起こしてやらぁ!!」
「「「おぉおおお!!」」」
うむ。サクラは汚い。だが、これで結束は強くなる。他のプレイヤーとは密接な連携は出来ないだろうが、やる事の方向性はこれで定まっただろう。
「では諸君!己の成すべき事を命一杯にやり遂げろ!解散!」
「「「おぉおおおお!!」」」
「おら戦闘厨共!早速駆逐しに行くぞ!俺に続けぇええ!」
「っしゃぁあ!」
「いくぜぇえ!」
そのまま武器に手をかけながら門への走り出す。俺の後ろには仲間と、あの広場で俺の話を聞いていた連中が付いてきている。よし、狙い通りだ。あとはそのまま戦い、戦い、戦い続けるだけ。簡単な仕事だ。
「うるおぁぁぁあ!!」
「・・・ふん」
でかい芋虫を切り裂く。緑色の体からは、やはり緑色の体液が飛び散る。だが、次の瞬間には白い粒子となり消えていく。
「もう十分か」
芋虫の相手はもう良いだろう。無傷で倒せるようにもなった。次のモンスターに移ろう。・・・猫にするか。
「その前に・・・」
アイテムボックスから布と油、水を取り出す。水をぶっかけ、ありもしない汚れを落とす。・・・幾ら敵を切ろうが、粒子になって消えていくから、汚れは付かないんだがな。水で洗い流した後は、油を布に染み込ませ、薄く塗っていく。・・・うむ。こんなもんで良いだろう。正直、剣の手入れなんて知らないから、正しいかは判らないのだがな。
「ふぅ。これで大丈夫。次に行こう」
この剣は癖のある剣だ。勝手に成長する面白い剣だ。だが、手入れを怠って使い続けると、どんどん使い辛くなる。重くなったり、切れ味が落ちたり。重心の位置が変ったり、持ち手が変形したり、だ。まるで意思があるような、というより、意思があるのだろう。うむ。
シュテッヒ ショートソード lv 9
状態 機嫌がいい
スキル
・切れ味上昇 lv4
・刺突上昇 lv6
「・・・」
口には出さないが、この剣には確実に何かがあるのは確かなようだ。口には出さないが。
意思があるから、手入れを怠ったら機嫌を損ねてしまうのだ。だが、しっかりと手入れをしてやれば機嫌を良くする。可愛い奴だ。
「次の獲物は何処だろうか・・・」
そういえば、何かお知らせの様なものを知らせる音が聞こえた気がするが・・・後で見よう。それより戦闘だ。布と油に持ち金の大半が持っていかれたんだ、稼いで置かないと不味い。服も、初めから身に着けている布の服だからな。
「外套は欲しいな。その下に動きやすい皮鎧・・・か。後、予備の武器が欲しいな。ナイフかダガーがいいだろうか・・・。どうせなら左手用の武器を買うのも良いかもしれない」
うむ。近い将来が楽しみだ。その将来へ向けて足を進めた。
シュテッヒ ショートソード lv 9
状態 機嫌が悪い
スキル
・切れ味上昇 lv4
・刺突上昇 lv6
おっと、機嫌を損ねてしまった。これは暫く戦闘がきつくなるな・・・。
「ワールドクエスト・・・ですか」
これをクリアすればゲームが進むという事でしょう。私ができるのは・・・戦い続けて強くなる事、でしょうね。
「さて、整備終わりました。次に行きましょう」
現在使っているこの槍。今はただ木の棒に短剣を付けた程度のお粗末なものですが、これはとてもいいものです。これは成長し、いずれは伝説級の武器となる。私はとても良い拾い物をしたことになりますね。
槍姫 スピア lv 8
状態 暇
スキル
・切れ味上昇 lv2
・刺突上昇 lv7
うん。この子もいつも通りのようです。では、戦いの場へ行きましょう。この森は何処から敵が来るか判りませんから、奇襲に警戒しましょう。
「ファイア!」
ぐぬぬ、やっと倒せた。芋虫の癖に、火に耐えるなんて。まぁ、倒せたから良いけど。
うーん、あと少しは戦えるかな。MPにも余裕あるし、高かったけど魔力ポーションも買っておいた。まだまだ戦えるね!
「じゃ、次!この森には猫さんがいるって聞いたし、早く会いたい!」
でもまぁ、会ったからって仲良くできる筈がないんだよね・・・。悲しいなぁ。あっ!杖さんの調子はどうだろう。
魔道杖 スタッフ lv 8
状態 平常
スキル
・魔法威力強化 lv5
・魔力節約 lv5
いつもと変らないなー。スキルとレベルは上がるけど、いっつも平常。・・・どうやったら変るんだろう?
「・・・ん?」
何でこんな所に銃が捨てられてるんだろう。辺りを見回す。持ち主らしき人物はいない。というか人がいない。皆街から出て行ったんだよね。物凄い速さで。
・・・この銃、使わせて貰おう。どのお店を回っても、銃なんてなかったから、丁度いい。
リボルバー式か。・・・うん、ちゃんと銃身にライフリングが施されている。しっかりした作りだね。
「これから宜しくね」
さぁ、やっと街から出られる。今までずーっと銃を探し回ってたから、楽しみ。
あっ。
「・・・そういえば、弾薬はどうするんだろう」
・・・お店には売ってなかったから無い。・・・どうにかして、作るしかないかなぁ。
その頃。盾は建物の壁に立て掛けられ放置されていた。
今回はかなり短いです。ちょっと、話が思いつかないんです。
ですがまぁ、心配は要りませんよ?筋は決まってますから。




