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ワールドクエスト

 厳重な警戒態勢下の村に、一時の安息が訪れていた。帰って来ないものと思われていた娘達が帰ってきたのだ。当たり前であろう。


 今、自分は村の広場の端にて放置されている。見張りのエルフに警戒されながら、ゆっくりと闇に沈み行く村を眺めているのだ。現代日本では見る事のできない風景、感慨深いものがある。

 因みに。警戒こそしているが、一応、感謝はされているらしい。あの男勢によってやられた貫徹痕を、木の板で塞いでくれた。左右対称になるように綺麗に掘り出しながらだ。その際、自分の中を見られ、


『これ・・・生き物じゃないな』

『ゴーレムか?』

『いや、ゴーレムにしては魔力が全く感じられない』

『・・・一体、なんなんだろうな』

『兵器である事には、変わりないだろう』


 と、感づかれた。中々感のいい連中ですな・・・。


 エルフ達は、自分と同じ広場で娘達の帰還を祝っていた。室内にいると、敵襲に対し不利という判断からだろうか。それとも単純に狭い建築物しかないのだろうか。

 その集団の中から、一人の人物が自分に向かってくる。足元まで延びた長い銀髪、スレンダーな体つき。賢そうな子だ。相変わらず眠たそうな目をしている。

 両手で小さなコップを持ちながら、こっちに向かってくる。


「・・・よっ」


 よっ。


「・・・しょっと」


 コップを自分の車体に置き、登り出した。・・・何しに来たんだ?


「・・・ふぅ。疲れた」


 そんだけで疲れるのか、運動しろよ。人の事言えないけどさ。

 ・・・本当に何しに来たんだ?


「・・・私達は、8日前にこの村から攫われた」


 おっと。何か始まった。


「始まりの夜、何者かが私達それぞれの家に侵入、私達を誘拐した」


 誘拐か。それも女子のみ、を。ゴブリンにしては賢いな。


「2日目の朝。私達は腹部の痛みで眼を覚ました。ゴブリンに腹部を蹴られたのが原因だった。既に腕は縛られ、逃亡は困難だった。他の子達・・・双子のミナ、リン。緑の髪のハルは不安と痛みから泣き出したが、更なる暴力の前に、騒いだら死、という事を学んだ」


 ・・・やけに知的だな。自分のイメージでは、ゴブリンは見境無く異性を襲うと言う印象があるのだが。


「同日。村の住人は私達が攫われた事に気がつかなかった」


 え。自分の娘がいなくなったのに気がつかないだと?


「私以外、皆早起き。森の散歩を朝の日課としていたから、まだ帰って来ていないだけと判断された。また、一番年長のコリー・・・長い緑の人が付いているから大丈夫と判断された」


 成程な。不幸な事が重なった、という事か。保護者相当の人物が一緒にいるのも、今回は悪い方向に働いたか。

 因みに、君はどうしたんだ?散歩に行くようには見えないが。


「私は常に部屋に篭ってるから、居なくなっている事に一番気が付くのが遅れた」


 ・・・本当に引きこもりか。


「2日目の夕刻。流石に不味いと判断した住人は、捜索を開始する。その際、私達の家周辺にゴブリンの足跡が発見された。長老は、今回の事件をゴブリンが原因と判断した。・・・が、私達はこの時、半ば諦められていた」


 ・・・もしかしなくても、あれか。


「ゴブリンは異種族の雌を孕ませ増殖する。私達は既に諦められていた。それよりも村の防衛を優先した。ゴブリンにしては行動が知的の為、ゴブリンリーダーが現れた可能性を考慮した」


 やはりか。まぁ、仕方ない。集団の上に立つものとしては、当然の判断だろう。少数を犠牲に大多数を生かす。悲しいがこれが現実だ。

 しかし、ゴブリンリーダーか。聞いた事も見た事もないが、何となく想像はつく。


「それでも、もしかしたらがあるかもしれないと、捜索隊を出してくれた。・・・その捜索隊は、私の恩人に穴を開けてくれたけど」


 ほう。あの男勢は捜索隊だったのか。いやまぁ、あの攻撃は仕方ないだろう。自分も納得している。・・・感情と理性は別だがな。怒ってはいるんだぞ。


「あとは知っての通りだと思う。・・・5日間私達は歩き続けて、6日目に貴方と遭遇、2日かけて帰還、の流れ」


 成程ねぇ。中々、壮絶な8日間だな。


「・・・長老は、『ゴブリンの中に、確実に指揮階級が現れた。ゴブリンリーダー以上の・・・最悪、ゴブリンキングが現れたかもしれない』って言っていた。・・・あの、ゴブリンの知的な行動にも、それだったら説明が付くと」


 リーダーの次はキングか。・・・明らかに上位互換だな。名前的に。戦闘力やら支配力やら。ありとあらゆる面でまだ見ぬリーダーを上回るだろうな。


「・・・ゴブリンキング。ゴブリンの中で稀に生まれるゴブリンリーダーが、年月と経験を積み重ねた結果、進化する。当然、能力は全てリーダーを上回る」


 だろうな。・・・これ、何かのイベントか?


「・・・大きな戦いが起きる」



 ” !Warning! !Warning! ”

 プレイヤーによって、ワールドクエスト”ゴブリンキングの大攻勢”が発見されました。



 ・・・これは、やらかした?








 ”ゴブリンキングの大攻勢”

 ゴブリンキングが率いる大攻勢に立ち向かえ!諸君らの働きが、始まりの街の未来を決める!

 ※本ミッションは、発見速度が速ければ速い程有利です。


 達成条件

 ・ゴブリンキングの討伐、及び敵モンスター過半数の討伐


 失敗条件

 ・城壁の陥落、防衛線の崩壊、街内へのモンスター侵攻


 報酬

 ・100000リン

 ・スキル枠×1

 ・称号”始まりの防衛者”

 ・陸上貿易路の再開


  ・敵の攻勢タイミング及び方向は不明(偵察等で調べる事は有効)

  ・討伐数、与ダメージ、防衛ポイント、支援ポイント等の、様々な面で活躍したプレイヤーに特別報酬が支払われる








 ・・・ん?どうやらこのミッション。発見が速ければ速い程いいのか。えーっと?つまり、このミッションは前から始まっていて、それに気が付く速度が速い程良い訳か。


 ・・・これ、自分お手柄じゃないか?始まって・・・10日位だろ?対策時間は相当な長さになる筈だ。

 発見が遅れて準備無しに突然始まるのと、ずっと前から判っているのではまったく違う筈だ。陣地構築や戦闘に必要なポーションや、食料の準備にはそれなりの時間を有する・・・筈。時間には余裕がある方がいいからな。


 ・・・やっぱり自分、お手柄じゃないか!


 さーって、自分も何か準備しないといけないが・・・砲が死んでいる今。自分にできる準備なんてあるのだろうか。というかだ。正直な所、街に帰れる自身が無い。地図もコンパスも無いからなぁ・・・。ミニマップならあるが、この森、エルフの村に近ければ近い程、マップにノイズみたいのが入るんだよな。


「・・・この村にも攻めてくると思う」


 なに?


「キングは通常のゴブリン以上に仲間意識が強いから・・・」


 ・・・自分、ゴブリン全滅させたなぁ。


「これから、防衛体制を整える。それと同時に、人間の街に使いを出さないと」


 うぅむ。自分はどうしようか。戦おうにも武器がない・・・。うん、馬の代わりにはなるかな。

 いや、成長すればどうにかなる・・・か?多分、特定レベルに成れば成長できる・・・筈。その時に損傷も直る。・・・筈、多分、恐らく。うん。


 ・・・今の内に、ステータス、確認しておくか。




 パンツァー 二号戦車F型 lv 14

 状態 旋回装置 大破

    昇降装置 大破

    2cm kwk 30機関砲 大破


 攻撃力 2cm kwk 30機関砲

     7.92mm MG34機関銃


 砲塔装甲 正面30mm

      側面15mm

      背面15mm

      上面10mm

 車体装甲 正面30mm・下部35mm

      側面15mm

      背面15mm

      上面15mm


 速度 40km/h 140ps

 重量 9.50t


称号

・陸戦の王者

・エルフの楯

・ワールドクエスト発見者 new!

・貢献した者 new!


スキル

・目星 5lv up!

・拡大眼 6lv up!

・熱源探知 5lv up!

・音源探知 4lv up!

・マッピング 7lv up!

・風魔法 1lv

・火魔法 1lv

・迷彩 3lv up!

・隠密 3lv up!

・走破 10lv new! ☆上限




 おぉ!中々上がっているぞ!前回確認した時はレベルは8だったから、6レベルか!躍進だな!称号も二つ増えてる、スキルもレベルが・・・なんだこの星。

 ・・・スキルの上限にぶち当たったか?つまり、次の段階へいけるのかも。

 ”走破”をタッチ・・・するイメージを浮べる。手、ないからね。



【走破】 10lv 上限 進化できます

 不整地での進行速度を上昇させ、沈み込み難くする。

 ※進化しますか? はい/いいえ



 お、やはりか。まぁ、悩む事もない。即座に”はい”タッチだ。



【不整地走破】 1lv

 あらゆる不整地を走破し、沈み込み難くする。



 よし。こんなもんか。後は・・・称号を詳しく見れないかな。・・・お、どうやら見れるようだ。どれどれ・・・



【陸戦の王者】

 陸戦の頂点に立つものに送られる称号

 機動力、装填速度が5%上昇


【エルフの楯】

 その身を挺してエルフを守ったものに送られる称号

 友好度上昇 対象:エルフ


【ワールドクエスト発見者】

 その名の通り、世界的イベントを最初に発見したものに送られる称号

 経験値ボーナス+5%


【貢献した者】

 大々的な貢献をもたらした者に送られる称号

 経験値ボーナス+5%



 ・・・沢山あるね。うん。【陸戦の王者】は、自分が戦車だからだろう。【エルフの楯】はあの時守ったからで、あとの二つは単純明快だな。

 うーん。経験値ボーナスは有り難いな。成長し易くなる。上手くいけば、この大破状態から容易く抜け出せるかもしれない。有り難いな。












「・・・見つけるの早過ぎないですか?6番サーバー」

「うん。速い。というかあれなんだよ。戦車じゃねーか」


 ここはとある施設の一部屋。ここに、三人の人物が集まった。皆、手にはコーヒーが入ったコップを持っている。


「記録を見ましたが、初動で森一直線ですね・・・」

「あぁ、成程な・・・」

「あのエルフっ娘、報酬扱いだったんですがねぇ」

「クエスト始まる前に解決しやがったな」

「仕方ないですね・・・」

「仕方ないな」

「仕方ない仕方ない」


「「「・・・はぁ」」」


「うんじゃ、調整しますか」

「このままでは不具合でそうですしね」

「あと、一人プレイモードも如何にかしましょうか」

「では、会議の際の本決定に従うとしましょう」

「「了解」」



 パンツァー 二号戦車F型 lv 14

 状態 旋回装置 大破

    昇降装置 大破

    2cm kwk 30機関砲 大破


 攻撃力 2cm kwk 30機関砲

     7.92mm MG34機関銃


 砲塔装甲 正面30mm

      側面15mm

      背面15mm

      上面10mm

 車体装甲 正面30mm・下部35mm

      側面15mm

      背面15mm

      上面15mm


 速度 40km/h 140ps

 重量 9.50t


称号

・陸戦の王者

・エルフの楯

・ワールドクエスト発見者 new!

・貢献した者 new!


スキル

・目星 5lv up!

・拡大眼 6lv up!

・熱源探知 5lv up!

・音源探知 4lv up!

・マッピング 7lv up!

・風魔法 1lv

・火魔法 1lv

・迷彩 3lv up!

・隠密 3lv up!

・不整地走破 1lv new!

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