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98話「ウィズグリフによって顕現したリーゼ達」

 一同を囲む、このリーゼ達は、ウィズグリフによって顕現した


「召喚ではないわね。リーゼの召喚なんて聞いたことも無いし、マッドサモナーには、もう何かを召喚出来るだけの魔力があるとも思えない。マッドサモナーは、最終手段として、自分の真下に仕込んでいたウィズグリフを、まだ使ってなかったのよ。それにしても、こんなに沢山のリーゼ……」

 サフィーは驚愕した。一体、この数のリーゼをどうやって調達したのか……いや、それよりも、味方はもうボロボロの状態だ。新たに表れたリーゼに、どうやって抵抗しろというのか。


「お、おいサフィー、リーゼって、操縦者無しじゃ動かないよな……?」

「ブリーツ……いえ、恐らくは……」


 無秩序に直立していた周りのリーゼが、いっせいに、一同の方へと向いた。

「わ……! 自動操縦ってやつじゃないの!?」

 ついに動き出したリーゼを見て、ミズキが驚嘆の声を上げた。


「リーゼを魔法によって自動的に操縦する技術は確立されているわ。ただ、それには大量の魔力が必要よ……マッドサモナーが、召喚魔法以外の魔法をどれだけ得意にしているのかは分からないけど、マッドサモナーの魔力量なら、時間をかけて準備すれば可能ではあるわ。こうやって虎の子の手段として使うってことは、いつ使うのかは分からないって事よ。いつ使うかも分からないリーゼの操縦に、人なんて使ってられない。だから、一番現実味のある方法でもあるわね。用意周到なマッドサモナーなら、やりかねないわ。大量の自動操縦のリーゼを、奥の手として隠しておくっていうのは」

「むむむ……操縦者が居ないリーゼなら、俺一人で引き受けたんだがなー」

「あのね、それってそもそも、気にするレベルですらない状態よ!」

 この期に及んで冗談を言うブリーツに、サフィーは激怒した。


「とにかく、迎え撃つのよ。自動だったら、攻撃は単調だから!」

「迎え撃つったってな……これだけのリーゼが単調な攻撃をするんだろ?」

「む……無茶だよね……」

 アークスも、もはやどうしていいのか分からない状態だ。攻撃が単調だとはいえ、一体一体がストーンゴーレムと同等か、それ以上に手強い相手だと考えられる。こんな数のリーゼを、今の消耗した戦力で撃退するのは不可能だ。




 周りのリーゼが一斉に剣を振り上げた。隙間から見えるリーゼの中には、こちらに手の平をかざしている魔法型と思われるリーゼも見える。それを見たミズキが言う。

「来るよ! どうしたら……!」

 その答えは誰にも分からない。打つ手が無いからだ。


「ここで諦めることも出来ないよね……!」

「やるしかないでしょ!」

「ああもう! 終わりだぴょん! どうすることも出来ないぴょん!」

 エミナが、サフィーが、ミーナが、思い思いの言葉で、自分の気持ちを吐き出す。


 剣を持ったリーゼは剣を振り降ろし、魔法を使うリーゼの手には、様々な色の光が現れている。そんな中で突如、一同の前に激しい光が現れた。


「うわあっ!」

「な、何!?」

 ミズキが思わず自分の腕で目を覆い、ドドはわけも分からず気を動転させて、周りをきょろきょろと見回した。


「こ……れは……?」

「え……?」

 サフィー、そしてエミナは、その光景に驚くしかなかった。

 光がようやく収まったかと思ったら周りに現れた光景は、大量のリーゼが瓦礫と化し、朽ち果てた姿が地面に転がっている光景だった。


「うっそー、リーゼが一掃(いっそー)されてるぞこれー!」

「ダジャレはいいから……でも、どうして……」

 こんな時に平常運転で駄洒落を飛ばしているブリーツの神経も疑うが、周りの光景は、もっと不可解だ。周りはすっかり見渡しが良くなっている。ここが平野だということも相まって、かなり遠くの方まで見渡せる。リーゼの総数は……サフィーの見立てでは、一個大隊くらいはあるのではないかと見える。

 そんな数のリーゼを、一瞬にして瓦礫に変える。そんなこと、可能なのだろうか。出来るとしたら、マッドサモナーと同程度の魔法使いで、召喚ではなく、攻撃魔法に秀でた……。


「最後の悪あがきとはみっともないな、ズリシウス」


「魔女!」

「お師匠様!」

 サフィー、そしてミーナは、声を聞くなり、その声のする方を向いた。すると、瓦礫と化したリーゼの隙間から、ポサボサの髪と、ヨレヨレで、しかもボロボロのバトルドレスが姿を覗かせた。


「うおぉぉぉぉ! おおおぉぉぉお前はぁぁぁ……!」

 マッドサモナーもまた、もがき苦しみながら、その姿に驚愕した。そう。魔女の姿だ。


「このやり口、そして結構なパワーの召喚魔法。お前だと思ったよ。ふー……やれやれだな……」

「おおお……?」

 マッドサモナーの叫びが止まった。サフィーは直感的に、魔女がマッドサモナーの体を癒したのだと考えた。

「魔女! マッドサモナーを助けるの!?」

「貴方の要望に応えたまでですよ、騎士殿……プラズマバインド」

「うごぉぉぉぉ!」

 マッドサモナーの体に、稲妻で形作られた枷が纏わりついた。


「さ、今のうちに縄できつーく縛ってくれ。生け捕りにしたいんだろ?」

「う……それは……」

 サフィーがぐぬぬと狼狽える。


「クー、僕も手伝うよ。今度は出来るだけきつく締めよう」

 透明なクーが、また縄を弄りだしたのを見て、ドドが駆け寄っていく。


「こ……これで本当に終わった……ってことだよね?」

「そう……みたいだね」

 ミズキとエミナは呆気に取られて、その場に立ち尽くしている。


「魔女さん!」

 アークスは感極まって叫んだ。魔女が生きていた事、そして敵ではなかったことに対してだ。これまでの状況や、サフィーの話から、魔女はマッドサモナーの手によって殺されたか、マッドサモナーと組んでいるという考え方が濃厚だったので、アークスは半ば諦めていたのだが……こういう結果になって、本当に良かったと思う。


「すまないなアークス。だが、こういう時のために、私はぎりぎりまで姿を現したくなかったんでな……っと!」

 ――ガキン!

 マッドサモナーのダークボルトが魔女の方へと向かっていたが、魔女はファストキャストで作られたライブレイドでそれを軽々と弾いた。

「ぐ……」

「まったく、この期に及んでまだ私に楯突こうなどとはな。すこし回復をし過ぎたみたいだな」


「お師匠様!」

「ミーナ、心配をかけてしまったかな。師匠としてはダメなことだろうな、弟子に心配をかけるというのは。積もる話もあるだろうが、まずは置いておこう。先にもろもろを片付けて、後でゆっくり話をしようじゃないか」


「魔女……騎士団として、感謝するわ」

「サフィーだったか。個人的には感謝してくれないのか?」

「……もちろん、感謝するわ。その方法はどうであれ、騎士団に協力し、おかげでマッドサモナーを捕らえることも出来たし」

「そりゃ、何よりです、騎士様」


「サフィーさん、キツキツに縛り上げたよ。これで地面に血を垂らしたり、さっきみたいに魔法を打ったりは出来ないと思う」

「そう。貴方も協力、ありがとうねドド」

「いえ……僕は大したことしてないよ」

「そんなことないわよ。自信を持ちなさい。……さて、みんな、一旦馬車に戻るわよ! 馬車に戻ったら、戦士と、魔法使い一人はマッドサモナーの見張りを、それ以外の魔法使いは怪我人の治療にあたること!」

次から十話ほどは箸休め。エピローグです。

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